ばかな汽車
著者:豊島 与志雄 読み手:齋藤 こまり 時間:9分10秒
――長いあいだ汽車の機関手をしていた人が、次のような話をきかせました。――
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汽車の機関手をしていますと、面白いことや、あぶないことや、つらいことや、それはずいぶんいろんなことがありますが、そのうちでかわった話というのは――
そうですね……もうずっと昔のことです。汽車をうんてんして、ある山奥を、夜中に走っていました。機関車の前の方の小窓からのぞきますと、右手はふかくしげった山のふもとで、左手には小さな谷川がながれていまして、二本のレールがあおじろくまっすぐにつづいています。その上を、汽車は速力をまして走っています・・・