愚なる(?!)母の散文詩
著者:岡本 かの子 読み手:藤崎 巧子 時間:6分30秒
わたしは今、お化粧をせつせとして居ます。
けふは恋人のためにではありません。
あたしの息子太郎のためにです。
わたしの太郎は十四になりました。
そして、自分の女性に対する美の認識についてそろそろ云々するやうになりました。
太郎の為にも、わたしはお化粧をしなくてはなりません。太郎が、いまにいくら美しい恋人を持つとしても、マヽが汚なくては悲観するでせう。さういふ日の来ない先から、わたしはせつせとお化粧します。けふは恋人の為にではありません。太郎の為に未来のずつと未来までも、美くしいマヽであり度いお仕度の為にせつせとお化粧のお稽古です・・・