大阪人と科学精神
著者:中谷 宇吉郎 読み手:成 文佳 時間:4分32秒
今のことはよく知らないが、一昔前のいわゆる大阪商人は朝、人に会うと﹁おはようございます﹂の代りに﹁もうかりまっか﹂と言ったそうである。それには﹁いやあきまへんで﹂という受言葉がある。
東京の実業家の中には、この例をひいて大阪商人を軽べつする人がある。しかし私は、そういう大阪人をひどく尊敬している。というのは、われわれの仲間のうちで、朝、人に会った時に、最初に﹁実験は巧く行っていますか﹂と聞く人は、滅多にないからである。
戦争前の話であるが、日本の繊維工業が、ランカシャーを打倒した陰には、女工哀史もあるが、そればかりではない・・・