新興国のゲーム市場に詳しい、メディアクリエイトさんに﹁世界のゲーム市場の近況﹂を聞いてきました。アラブの課金王が出てきているらしい…。
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※株式会社メディアクリエイト チーフアナリスト 佐藤翔さん <目次> ・1、﹁アラブ人﹂がゲームにお金をつかいはじめている。 ・2、﹁格安Android﹂の勢いがすごい。 ・3、﹁通信が頻繁に必要なゲーム﹂は好まれない。 ・4、新興国で﹁スマホゲームのアーケード版﹂が登場。 ・5、中東に﹁女性起業家﹂が増えている理由。 ・6、﹁東ヨーロッパ発のゲーム﹂がひそかにヒットしてる。 ・7、﹁ナイジェリア映画﹂は先進国の事情からはじまった。 ・8、ゲームや音楽の﹁違法コピー問題﹂
そして﹁アラブは娯楽が少ない﹂というのも理由で。だって、宗教の関係でお酒さえ飲めないんですから。夜にバーのような盛り場も開いていないわけですね。すると、お金も使えないしヒマなんです。
国でいうと、飲酒などに一番厳しいのはサウジアラビアですね、宗教警察が町をパトロールしているくらいですし。逆に、レバノンやヨルダンあたりは、比較的ゆるい国です。
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※実物をさわってみたが、思ったよりもサクサク動く。
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※ネコを育てる﹁たまごっち型﹂のゲーム。アメリカの売上げランキングで100位以内に入っていた時期も。![irokotv_nigeria](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2015/06/irokotv_nigeria.jpg)
※﹁iROKOtv﹂で多くのナイジェリアを視聴することができる。
取材協力‥株式会社メディアクリエイト
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※株式会社メディアクリエイト チーフアナリスト 佐藤翔さん <目次> ・1、﹁アラブ人﹂がゲームにお金をつかいはじめている。 ・2、﹁格安Android﹂の勢いがすごい。 ・3、﹁通信が頻繁に必要なゲーム﹂は好まれない。 ・4、新興国で﹁スマホゲームのアーケード版﹂が登場。 ・5、中東に﹁女性起業家﹂が増えている理由。 ・6、﹁東ヨーロッパ発のゲーム﹂がひそかにヒットしてる。 ・7、﹁ナイジェリア映画﹂は先進国の事情からはじまった。 ・8、ゲームや音楽の﹁違法コピー問題﹂
1、﹁アラブ人﹂がゲームにお金をつかいはじめている。
﹁日本人はモバイルゲームに世界一課金する﹂というのは有名ですが、最近は海外で課金する国ってでてきていますか?
佐藤‥ 最近﹁アラブ﹂の人たちがモバイルゲームに、本気でお金と時間をかけるようになってきていると感じます。 やっぱりアラブの国々って、すごいお金持ちなんですよ。UAE、サウジ、クウェートとか。石油産業がものすごく強いので、たとえば﹁家族に公務員がいる﹂というだけで、裕福に暮らせてしまう。 例えば、この前﹁クラッシュ・オブ・クラン﹂で、トップ5にアラブ系ユーザーのクランが、3つもランクインしていました。![clacla_ranking_arab](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2015/06/clacla_ranking_arab.jpg)
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娯楽がないから、みんなスマホでゲームやるようになっていると。
佐藤‥ そうですね、アラブ諸国での手頃な娯楽って﹁車﹂﹁テレビ﹂﹁ゲーム﹂の3つなんですね。 とくにサウジの人たちはね、車が大好きなんですよ。そして、サウジ人の乱暴運転っぷりは﹁サウジドリフト﹂と呼ばれていて、グローバルでも有名ですね。 サウジって﹁道が広い﹂っていうレベルじゃなくて、周りが砂漠ですからね。 あと気の毒なのが、アラブってサッカーがすごく人気なんですけど、いざサッカーやろうとすると、外がめちゃくちゃ暑すぎてサッカー出来ないということもあって。 それで結局、﹁テレビしか見るものなかった﹂という状況だったんですけど、そういう人たちがスマホゲームにわっと流れているのが今なんだと思います。 ﹁アラブのゲーム市場﹂は先進国に比べるとまだまだですが、ユーザー単位ではものすごく課金している人が増えてきている。おそらく、もう3〜4年するともっと勢いが出てくると感じますね。![manga_soccer_arab](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2015/06/manga_soccer_arab.png)
アラブ地域での﹁コンテンツの消費のされ方﹂に特徴ってありますか?
佐藤‥ アラブ地域って﹁情報の伝達﹂がめちゃくちゃ早いんです。なぜならアラブ諸国は、西から東までアラビア語ですからね。話し言葉はちがうのですけど、書き言葉は一緒なんです。 例えば﹁東南アジア﹂って、国ごとに言語が違うので、流行の広がり方にも違いが出てくるのですけど、アラブではFacebookやメッセージアプリで情報が一気に拡散していく。 ちなみに、メッセージアプリはすごく人気ですね。やっぱりアラブでは﹁男女の出会い﹂が少ないので、その反動もあって﹁手軽な出会い系﹂みたいな感覚でつかわれています。2、﹁格安Android﹂の勢いがすごい。
﹁新興国で使われているスマホ﹂はやっぱりAndroidが強いですか?
佐藤‥ そうですね、アラブや東南アジアなどの新興国では、スマホはほとんどAndroidです。お金持ちはiPhoneを使う人もいますけど、とくに格安Androidの勢いがすごい。 これはインドネシアの﹁Advan﹂というメーカーのAndroidスマホで、7,000円くらいで買いました。もっと安いスマホもあります。﹁OPPO﹂という中国メーカーも東南アジアで勢いがありますね。![advan_android_smartphone](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2015/06/advan_android_smartphone.jpg)
※実物をさわってみたが、思ったよりもサクサク動く。
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3、﹁通信が頻繁に必要なゲーム﹂は好まれない。
日本のアプリやゲームが﹁新興国で苦労していること﹂ってなんですか?
佐藤‥ 新興国において、日本のモバイルゲームが苦労するポイントは、﹁通信﹂﹁決済﹂﹁販促﹂の3つだと感じます。 特に﹁通信﹂の感覚は大きく違っていて。新興国のユーザーは﹁ネットは有料﹂という感覚が強いんです。なぜなら、例えばプリペイドカードをお店で買って、その都度チャージしているからですね。 なので、日本のソーシャルゲームのような﹁通信が頻繁に必要なゲーム﹂を遊ぶには、無料Wi-Fiのあるカフェ等にいかないと厳しいし、そもそもWi-Fiが繋がらないことも多いんです。 そうなると、やっぱり遊ばれにくいですよね。逆に﹁キャンディクラッシュ﹂みたいに、﹁1回ダウンロードすると、長く遊べるコンテンツ﹂は好まれる傾向にあります。﹁通信環境﹂が違うだけで、ユーザーが遊ぶコンテンツも変わるんですね。
佐藤‥ そうですね、通信環境が変わるとユーザーの行動も変わります。あと似たような話でいうと、新興国では、最近﹁ネットカフェ﹂に来る人が減っているんですよ。 もともとネットカフェって﹁求人をネットで探したい﹂﹁友だちにメールを送りたい﹂などの目的で使っていた人も多かったのですが、もうそのへんはスマホで出来ちゃうじゃないですか。 なので、いま東南アジア︵都市部︶の﹁ネットカフェ﹂は、どんどん専門化している。例えば﹁PCのオンラインゲームを遊ぶ人向けのネットカフェ﹂みたいにですね。4、新興国で﹁スマホゲームのアーケード版﹂が登場。
中東あたりでは、最近おもしろい動きはありますか?
佐藤‥ 最近おもしろいなと思ったのが、﹁モバイルゲームのアーケード版﹂が出て来ていること。これは中東アフリカナンバー1の、ゲームセンターのオペレーションをしている会社の方に聞いたのですが。 そこの会社では、例えば﹁フルーツニンジャ﹂﹁キャンディクラッシュ﹂﹁フラッピーバードっぽいゲーム﹂など、スマホで人気が出たゲームコンテンツを、アーケード化したものを輸入しているんですね。 アフリカの後進国では通信も遅くて、決済の環境も整っていないため、アーケードでのゲームビジネスのほうが成立しやすいのだと思います。 もちろん遊んでいるのは、観光客や一部のお金持ちの人たちです。![app_arcadegame](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2015/06/app_arcadegame.png)
﹁アーケードゲーム﹂って他の国でも普及しているんですか?
佐藤‥ 東南アジアでは、最近﹁メダルゲーム﹂に似た仕組みの、中国製のアーケードゲームが普及しているようですね。 僕もベトナム・シンガポール・フィリピンあたりにいったとき見かけました。ショッピングモール内のゲーセンだけでなく、なぜかさびれた路地裏に、ぽつんと置いている店があったり。 例えばこの﹁海王﹂は、魚を銃で撃ってポイントをためる﹁デジタルのメダルゲーム﹂みたいな感じですね。合法的なお店では、ポイントを実物の﹁ぬいぐるみ﹂などに交換してくれます。 メダルゲームだと色々と規制があるのですが、デジタルであれば端末だけ置いておけばいいので、﹁店側の導入のしやすさ﹂という点で人気が出ているのかもしれません。![vetnam_medalgame](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2015/06/vetnam_medalgame.jpg)
5、中東に﹁女性起業家﹂が増えている理由。
中東のほうで流行っている﹁アプリやサービスのジャンル﹂ってありますか?
佐藤‥ 中東発でひとつおもしろいジャンルは﹁クラウドシッピング﹂です。これは友だちが外国に旅行にいったときに、ついでに﹁自分の欲しいもの﹂を買ってきてもらうサービスです。 基本はFacebookを通じて友だちにお願いします。新興国って家族や友人のつながりで動く﹁コネ文化﹂が強いので、こういうサービスは成功しそうです。 あと中東って女性のIT起業家が多いのも特徴ですね。起業時に﹁共同創業者﹂として女性が入るケースが38%もあるそうで。 これも中東独自の理由で﹁女性が外で働くことを認めない﹂という家庭も多いから。ITなら在宅で起業できるじゃないですか。僕の知人︵ヨルダン人女性︶も、ファッションアプリをつくっていました。6、﹁東ヨーロッパ発のゲーム﹂がひそかにヒットしてる。
﹁意外にヒットコンテンツが出てる地域﹂ってありますか?
佐藤‥ 最近﹁東ヨーロッパ発のゲーム﹂に勢いがあります。アメリカで人気の﹁My Talking Tom﹂は、元々スロベニアにあった会社︵CEOもスロベニア人︶がつくっています。 他にも、ウクライナのFPS﹁S.T.A.L.K.E.R﹂、最近だとポーランドの﹁ウィッチャー3﹂なども東欧発でヒットしたゲームです。 それで﹁なぜ東欧発のゲームが盛り上がっているか?﹂というと、歴史的な背景に関係しています。 もともと東欧では、共産主義の時代︵ソ連の時代︶に﹁技術や工学への教育﹂に予算をつぎ込んでいました。要するに﹁エンジニアを育てないと、工場も新しい武器もつくれない﹂からですね。 それで昔にたくさんつくられた﹁工科大学﹂の人材が、最近ITやゲームに流れてきている。東欧の工科大学をでた優秀な人が、クリエイティブなゲームをつくりはじめているわけです。![mytalkingtom_ss](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2015/06/mytalkingtom_ss.jpg)
※ネコを育てる﹁たまごっち型﹂のゲーム。アメリカの売上げランキングで100位以内に入っていた時期も。
7、﹁ナイジェリア映画﹂は先進国の事情からはじまった。
アフリカのほうで﹁おもしろいコンテンツや文化﹂は何かありますか?
佐藤‥ ナイジェリアで﹁ノリウッド映画﹂という、低予算のアフリカ映画が、ものすごい数つくられているんですね。それで、この文化が実は﹁先進国の流通事情﹂から始まっているのはおもしろいですね。 むかし、先進国で﹁VHS︵ビデオ︶からCDやDVDに一気に変わった時期﹂があったじゃないですか。そのときに﹁VHS﹂が余ってしまって、先進国からアフリカに流れてきたんです。 そこでナイジェリアの流通業者が﹁この余ったVHSに、コンテンツをのせて売ってしまおう﹂ということで、流通が主導で広がっていったのが﹁ノリウッド映画﹂の文化らしいんですね。 ﹁ノリウッド映画﹂は﹁iROKOtv﹂などのサイトで有料で見ることができます。僕がみたやつは﹁黒魔術がでてくるホームドラマ﹂で、やはりすごく低予算でつくられている感じがしました。![irokotv_nigeria](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2015/06/irokotv_nigeria.jpg)
※﹁iROKOtv﹂で多くのナイジェリアを視聴することができる。
8、ゲームや音楽の﹁違法コピー問題﹂
新興国にコンテンツが広がる時﹁これは課題だな﹂と思うことってありますか?
佐藤‥ やっぱり新興国の﹁海賊版・違法コピー問題﹂って深刻だと感じます。これはモバイル時代においても解決できていないんです。 よく新興国の町中をあるいていると、﹁iOS GAME﹂みたいな怪しい看板のお店がでていて。この手のお店は、インドネシア・フィリピン・タイあたりでは、全部見かけましたね。 そこでは例えば、数百円払って一時間くらいスマホを預けておくと、違法コピーした︵本来有料の︶アプリを100個くらい入れてくれるらしいです。 どう考えても違法なんですけど、こういうのが多すぎて取り締まれないんですよ。マーケット上には数字が表れていなくても、こういうところでお金を払って遊んでいる人がたくさんいる。 ※最近はごく普通の無料アプリ︵Facebook,LINE等︶を入れてくれるサービスもあるらしい。︵通信が有料のため︶アプリでもそういう﹁闇商売﹂があるんですね。
佐藤‥ そうですね。ただ、こういうビジネスって昔からあるんですよね。音楽がそうでしたから。ネット上で違法ダウンロードした音楽を、CDなどに入れてレストランとかに売っていたわけです。 もうね、そういうお店がたくさんありすぎて、﹁違法データの卸業者﹂もいるくらいなんですよ。 あと興味深いのは、そういう﹁違法コピー﹂の流れはなかなか止められないので、﹁違法コンテンツのネットワーク﹂に上手に乗っかる人も出てきています。 例えば、とあるナイジェリアの音楽家は、﹁違法コピーCD﹂をつくっている業者にかけあって、﹁私の曲をぜひ使って下さい﹂と、自分の曲を入れてもらっている。 それで、自分の歌をいろんなひとに聞いてもらって、知名度を上げていく。﹁じゃあ、どうやって稼ぐのか?﹂というとライブで稼ぐんですよ。 ナイジェリアでは企業などが開くパーティが盛んなので、パーティに﹁有名ミュージシャン﹂としてゲストで呼んでもらうことで、それなりに良いギャラをもらうわけですね。 ﹁有料でCDを売る﹂のではなくて、﹁無料で音楽を配って、ファンを増やしてライブで稼ぐ﹂というモデルに切り替える人が出てきているのは、興味深いことですね。![manga_nigeria_music](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2015/06/manga_nigeria_music.png)