きのこ擬人化ゲーム﹁きのこれ﹂のお話を伺いました、ソシャゲ戦国時代に夢半ば破れたアプリの話。
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※ポッピンゲームズジャパン株式会社 CEO 辻村尚志さん︵右︶、栗原広樹さん︵左︶![kinokore_play](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2016/02/kinokore_play.gif)
※正式名称は﹁きのここれくしょん~きのこたけのこ百年戦争~﹂![kinokore_eringi](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2016/02/kinokore_eringi.png)
※キャライラストは70種類︵キノ娘、タケノ娘︶、ボイスも各キャラ10〜20作成した。
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※課金ポイントは500円の﹁ガチャ︵キャラが獲得できる︶﹂と、500円の﹁大工︵施設を時短で立てられる︶﹂だった︵課金のみのため、広告収益はなし︶
— きのこれR公式 (@kinokore_staff) June 30, 2015
※﹁サービス終了時﹂のツイート
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※ポッピンゲームズジャパン株式会社 CEO 辻村尚志さん︵右︶、栗原広樹さん︵左︶
﹁きのこれ﹂が出来るまで。
そもそも栗原さんは、どうして24歳で起業したんでしょうか?
栗原‥ 前に勤めていた会社が倒産してしまって。それで、元同僚と3人で﹁ゲームアプリをつくろう﹂と、2014年4月に立ち上げたのがCmixという会社です。起業資金は知人に借りました。﹁きのこれ﹂の企画はどのようにできたのでしょう。
栗原‥ 当時ユーザーとして、すごくハマっていた﹁クラッシュ・オブ・クラン﹂をベースに、かわいいイラストを使って、日本向けのゲームをつくれば、いけるんじゃないかと考えました。 そこで、ネットの定番ネタである﹁キノコvsタケノコ﹂と、その当時に流行っていた﹁美少女×擬人化﹂を、組み合わせてつくったのが﹁きのこれ﹂でした。![kinokore_play](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2016/02/kinokore_play.gif)
※正式名称は﹁きのここれくしょん~きのこたけのこ百年戦争~﹂
イラストはどのようにつくったのでしょうか?
栗原‥ イラストについては、ピクシブで絵師さんを15人くらい探して、お願いしました。キノコって種類も多いですし、特徴もあるので、キャラクターにもしやすかったですね。 ﹁ブナシメジ﹂﹁エリンギ﹂など、スーパーで売っているようなキノコをメインキャラに、﹁ヒトヨタケ﹂︵生えても一夜で溶けてしまう︶など、特殊なキノコをレアキャラにしました。![kinokore_eringi](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2016/02/kinokore_eringi.png)
※キャライラストは70種類︵キノ娘、タケノ娘︶、ボイスも各キャラ10〜20作成した。
﹁きのこれ﹂の開発費は、どのくらいかかりましたか?
栗原‥ 開発費については、累計2,000万円ほどかかりました。内訳は、プログラミング費用1,300万円、イラストやボイスに300万円、残りの700万円が社内の人件費です。 私も元々プログラマだったので、社内でアプリを開発することも考えましたが、スピードを重視するために、企画やデザインは社内で行い、プログラムは外注することにしました。![kinokore_cost](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2016/02/kinokore_cost.png)
リリースする前はどんなことを考えていましたか?
栗原‥ リリース前から﹁ねとらぼ﹂﹁はちま起稿﹂﹁オレ的ゲーム速報@JIN﹂などのメディアで話題にしてもらい※、事前登録は約4万人、ツイッターも数千フォロワーまで集まりました。 なので﹁なかなか好調なスタートが切れそうだ﹂と考えていました。そんなことを思いながら、2015年の3月にアプリを公開しました。︵公開日はAndroid版 3/30、iOS版 5/23︶ ※︻2/17 補足追記︼確認したところ﹁ステマや広告依頼ではなく、自然に記事で取り上げられた﹂という意味とのこと。﹁アプリ公開後﹂に起きたこと。
アプリを公開して﹁ダウンロード数や売上﹂はどのくらいまでいきましたか?
栗原‥ ダウンロード数は、累計15,000ダウンロードくらい︵iOS+Android︶でしたね。 売上については︵2015年︶4月がピークで、そのときは月200万円くらいありました。一番課金していた人で1日13万円ほど課金してくれました。ジャンル的に、ユーザー課金率は高かったとおもいます。![kinokore_data](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2016/02/kinokore_data.jpg)
※課金ポイントは500円の﹁ガチャ︵キャラが獲得できる︶﹂と、500円の﹁大工︵施設を時短で立てられる︶﹂だった︵課金のみのため、広告収益はなし︶
プロモーションなどもやっていたのでしょうか。
栗原‥ プロモーションは、ニコニコ動画の﹁てーきゅう﹂チャンネルに動画広告を出稿しました。料金については、25万再生で50万円︵1impあたり2円︶でした。 ﹁てーきゅう﹂はギャグアニメなので、おもしろいモノが好きな視聴者も多くて、﹁きのこれ﹂との相性はよかったと感じます。ここまでは﹁順調﹂に思えますが、どんな問題が起きたのでしょうか。
栗原‥ リリース後に、とにかくバグ︵不具合︶に悩まされました。もちろんデバッグはしていましたが、経験が浅かったため、チェック漏れのバグがたくさん出てしまったんです。 中でもひどかったのが﹁課金チケットが無限に配布される﹂というバグです。イベントで配布する予定だった﹁課金チケット﹂が、無限に配信されてしまって。 チケットが4,000通とか、あまりにも大量に配布されすぎて、ユーザーがログインしようとするだけで、アプリが落ちてしまうことさえありました。 その後も、ずっとバグが続いて。ユーザーからもクレームがたくさん来て。﹁はやく直さなきゃ、はやく直さなきゃ﹂と急いでいるうちに、資金が底を尽きてしまいました。え..?
栗原‥ いくつか﹁資金調達の宛て﹂はあったのですが、一気に全部ダメになってしまって。大きい金額を投資してもらえるはずの話も、いきなり6月末に﹁やっぱりなしで﹂となってしまった。 そこで、いきなり追い詰められました。やばい、やばいとなって。とくにプログラミングを外注していたので、その支払いができなくなって。資金繰りで、手詰まりになってしまった。 あと﹁資金繰りの問題﹂に加えて、瀕死のところにやってきたのが、先ほどの﹁チケット無限バグ﹂でした。結局これが﹁最後のとどめ﹂になり、サービスを終了することを決めました。![kinokore_history](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2016/02/kinokore_history.png)
そこでどうすることもできなくなったと。
栗原‥ いえ、まだ選択肢としては﹁他社にゲームを譲渡して、運営を続けてもらう﹂という手があったんです。なので、いろんなゲーム会社に電話したり、声をかけて回りました。 ですが、とにかく時間がありませんでした。資金が底をつくまでに、たった1週間ほどの猶予しかなかったので。結局、ほとんど相手にしてもらえず終わりました。当たり前ですよね。厳しい状況ですね。
栗原‥ もう、どうしたらいいのか、わかりませんでした。周りに相談できる人もいませんでした。書籍やネットでも必死に探しましたが、答えは見つかりませんでした。 最終的には、どうしようもなくなり﹁弁護士を頼る﹂という決断をしました。それはつまり﹁会社を清算する︵倒産︶﹂ということです。 最後まで﹁本当にこれでいいのか﹂と悩みました。もちろん﹁ここで終わりたくない﹂とも思いました。でも、他に方法がありませんでした。【サービス終了のお知らせ1】
平素よりきのここれくしょんをご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
この度きのここれくしょんは、誠に勝手ながら2015年07月01日以後プログラム開発会社の管理するサーバーの停止と共に、サービスの提供を終了させていただくこととなりました。
サービス終了すると﹁ゲーム﹂はどうなるのか。
﹁サービス終了後︵会社倒産後︶﹂は何をしなくてはいけないのでしょうか、想像もつきません。
栗原‥ ﹁何もしない﹂をしなくてはいけませんでした。下手に債権者とコンタクトをとると、刺激してしまう可能性もあるので、弁護士さんから﹁何もしないで下さい﹂と言われていました。 なので基本的には、誰とも連絡を取らずに、しばらくじっとしていました。﹁サービス終了﹂したときはどんな気持ちでしたか?
栗原‥ 気持ち的に﹁サービス終了後﹂は、とてもきつかったです。我が子のように愛情を注いでつくってきたアプリが、なくなってしまったわけですから。 とくにツイッターなどで、﹁きのこれ﹂のユーザーが悲しんでいるのを、見るのが一番きつかった。みんなに楽しんでもらいたかったのに、それができなかったのも悔しくて。 もう、つらいし、悲しいし、申し訳ないし。心の中がぐちゃぐちゃになって。﹁なんでダメだったんだろう﹂と自己嫌悪にもなりました。 会社を清算した後は、お恥ずかしい話ですが﹁無気力状態﹂に近かったと思います。なんにもやる気が起きなくて。なんというか、どうしようもなかったです。自分の責任ですけどね。その後﹁きのこれ﹂のゲーム資産は、どこにいってしまうのでしょう。
栗原‥ ﹁ゲームの資産﹂は私の手から離れてしまいます。意思決定権もありません。資産をどうするかは、弁護士さんに全権がゆだねられる形になります。 そして、弁護士さんは﹁きのこれを売る﹂という決定をしました。そこで競売にかけられた﹁きのこれ﹂を買ったのが、ポッピンゲームズです。私自身も︵2015年10月から︶今ポッピンゲームズで働いています。ゲームの﹁競売﹂はどのように行われるのか。
﹁きのこれ﹂を競売で買った、ポッピンゲームズの辻村さんに、当時の話を聞いてみました。辻村さんはポッピンゲームズの社長として、﹁きのこれ﹂を買ったわけですよね。そもそも﹁競売﹂というのは、どのようにはじまるのでしょうか?
辻村‥ 競売については、まず弁護士からメールがくるんですよ。﹁株式会社Cmixが破産しました。ゲームの資産については、競売にかけられます﹂みたいな感じで。 それに対して﹁興味があります﹂と回答すると、情報が80%くらい開示されるんです。例えば、キャラクターのイラストデータ、ゲームの売上金額、内部のデータなどです。 それを見て﹁入札するか﹂を判断します。ただ最後は﹁賭け﹂みたいなところはありますよね。致命的なバグがあるかもしれないですし、ゲームが動く保証もないわけですから。 最終的には﹁入札しよう﹂と決めたのですが、興味のある会社さんが何社かいらっしゃって、﹁競売﹂という形になりました。そこから﹁競売﹂はどのように進むんですか? ﹁闇オークション﹂みたいな場所に集まるのでしょうか。
辻村‥ ﹁きのこれ﹂のときは﹁メールベースで価格を提示する﹂という形になりました。ドラマなどで見る﹁100万円!200万円!﹂という競りでなく、メールで淡々と進むような感じです。 メールベースになった理由としては、大きな会社さんが入札していたためです。決裁するにはその都度、稟議を通さないといけなかったようで。価格については300万円からスタートしました。![kinokore_kyoubai](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2016/02/kinokore_kyoubai.png)
当時の﹁きのこれ﹂って、ユーザーは多くなかったと思いますが︵15,000ダウンロード︶、どういうところに惹かれたのでしょうか?
辻村‥ 一番はツイッターを見て﹁ユーザーさんに愛されているな﹂と感じたからです。やっぱり自分と一般ユーザーの感覚はズレやすいので。そこはいつも判断材料にしています。 あと失敗の理由が、明らかに﹁サービス初期のシステム不具合﹂によるものだったので、そこをきちんと立て直せば、うまくいくだろうと考えていました。なるほど。
辻村‥ もうひとつは﹁栗原がポッピンに入社してくれそうだ﹂とわかっていたこともあります。当初、弁護士さんに﹁お誘いしたい﹂と伝えてはいましたが、直接の連絡はとれなかったんです。 ところが後日、たまたまゲーム業界の交流会に、栗原が参加していて。そこにポッピンの社員も、たまたま参加していて、直接話をすることが出来ました。かなり奇跡的ですよね。 そこから、話が進み﹁来てくれそうだ﹂ということになって。そのときの偶然がなかったら﹁きのこれ﹂は買っていなかったと思います。![kinokore_reazon](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2016/02/kinokore_reazon.png)
こういう風に﹁終了したゲームを競売で買う﹂というのは、ゲーム業界ではよくあることですか?
辻村‥ いえ、多くはないと思います。業界的には﹁買い手不在﹂という状況ですね。サービス終了するゲームは、ごろごろありますけど、買い手は少ないんです。 理由としては﹁買い手側の工数が大きくかかる﹂というのはあると感じます。そのゲームの﹁価値﹂を精査する必要もありますし、外注先との契約周りなどもチェックする必要があります。 売り手側としては﹁ゲームがどれくらいで売れるか?﹂という相場がわからないのも、難しいところですよね。どのくらいのユーザー、売上があると、どれくらいの価格で売却できるのか。まとめ
振り返ってみて、変えられるとしたら、何を変えたいですか?
栗原‥ 振り返ると﹁プログラミングは外注せずに、社内でやればよかった﹂と思います。そうしてたら﹁バグ問題﹂と﹁資金繰り﹂も、どうにかなったかもしれない。戻れるならそうしたいです。元﹁きのこれユーザー﹂さんたちに、伝えたいことはありますか?
栗原‥ この場を借りて﹁きのこれ﹂を遊んでくれたユーザーさんには、心から﹁申し訳なかった﹂と伝えたいです。サービスも﹁突然終了﹂になってしまい、本当に申し訳なく思います。 そして、もしチャンスをもらえるなら、また﹁きのこれ﹂を遊んでいただきたいです。このような流れで恐縮ですが、実は3月に﹁きのこれR﹂として、ポッピンゲームズから再リリースされます。 もちろん、前作のキャラたちも登場します。新キャラクター︵CV田村ゆかり︶も追加しています。今度こそ皆さんを楽しませたいと考えています。どうか宜しくお願いします。 また、もし﹁きのこれR﹂と、コラボいただけるゲーム会社さんなどいらっしゃれば、ご連絡を頂戴できましたら嬉しく思います。最後に﹁これから起業する人﹂にメッセージなどお願いします。
栗原‥ 表現は難しいですが﹁よい経験が積めた﹂とは思っていまして。﹁若いうちから、起業なんて辞めたほうが良い﹂とは、今も思わないです。むしろ、どんどんやるべきかなと。 ただ﹁儲かるから﹂という理由だけで、ゲーム起業はしないでほしい。悲しいことになるので。私の経験が、これから起業する人や、読んでくれている皆さんの、参考となれば嬉しく思います。 取材協力‥ポッピンゲームズジャパン株式会社![kinokore_manga_matome](https://appmarketinglabo.net/wp-content/uploads/2016/02/kinokore_manga_matome.png)