第66回NHK紅白歌合戦に出演した小林幸子さん。写真はリハーサル時
小林幸子さんが、インターネットとともに紅白に戻ってきた。
昨年の第66回NHK紅白歌合戦、ニコニコで“ラスボス”と慕われる小林幸子さんの紅白特別企画出演。黒うさPのボカロ曲﹁千本桜﹂を歌いはじめてしばらくすると、巨大なステージ衣装にニコニコのコメントが流れはじめた。
ツイッターのタイムラインにも、﹁弾幕﹂﹁コメント﹂といった字面が躍った。歌が終わりに近づいたとき、テレビ画面全体がコメントで覆われると﹁おおおおおおおお﹂﹁すげえ﹂﹁まじかよ﹂とツイッターは一層の盛りあがりを見せた。
じつに4年ぶりの紅白出場だ。ネットにも活躍の場を広げ、若者たちとともに歩んできた小林幸子さんにとって、その結実ともいえる舞台となった。
失敗の許されない生放送、ラスボスを支えたのはドワンゴの技術部隊だ。
ニコニコ生放送のコメントをリアルタイムで紅白歌合戦に流す。一世一代のプロジェクトに挑んだマルチデバイス開発部 先端演出技術開発セクション セクションマネージャーの岩城進之介氏に、技術の裏側を聞いてきた。
二重、三重のバックアップを
── ﹁コメントを流そう﹂という話が出たのはいつごろだったんでしょう?
最初に聞いたのは12月頃ですかね。公式発表されたタイミングあたりですね。
ドワンゴ 岩城進之介氏
── めちゃくちゃ急ですね。
わりといつもそんな感じですよ。おおまかな演出の方向性は決まっていて、直前に﹁衣装にコメントを使いたいんだけど﹂という話が来たので技術部分で私たちのチームが参加した形でした。本格的に演出が決まったのは12月5日のミーティングだったと記憶しています。
── 番組で流れたのは、六本木ニコファーレで紅白歌合戦を実況する生配信番組﹁第66回NHK紅白歌合戦 応援裏実況﹂のコメントでした。演出としてリアルタイムにはこだわりがあったんでしょうか。
じつはNHKさんから﹁やっぱり生じゃなきゃ﹂と提案いただいていたんです。それでこちらも﹁そこはリアルタイムの反応が要りますよね﹂という話を。
── ﹁生放送番組にコメントをのせるノウハウ﹂は持っていたんですか?
わたし、5年前にドワンゴに入ったんですけど、入社半年後にまかされたのがニコファーレのこけら落としだったんですね。そのときのデビュー戦が﹁HEY!HEY!HEY!﹂の生放送にコメントをのっけるという企画だったんです。
── うわあ……聞くだけで緊張します。
生のコメントを送出するボタンを作ったんですけど﹁これ本当に押すの?﹂って。後ろから偉い人が﹁やるんだよ!﹂というので、震えながら押した経験がありました。そこからだいぶ図太くなりましたが、久しぶりのドキドキ体験でしたね。
── じゃあ今回も、つくりつづけてきたコメント配信システムで実現したと。
そうです。コメントやLEDを演出に使うシステムは長年の蓄積がありますから、それ自体はなんてことはないんです。ただ今回、舞台が舞台なので……
── 何かあったら大変なことになる。
その﹁何かあったら﹂について、質というかレイヤーによって、二重・三重のバックアップをつくっておいたんです。