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2013.08.30 11:05
2013.08.29 06:00
闘うジャーナリスト・佐々木奎一がゆく! ワーキングクラスの被抑圧者たち 第11回
有名専門スクール、パワハラ&強制退職の実態「つなぎ着て掃除しろ」他社へのスパイ行為も
ニュースサイト「My News Japan」を中心に、企業のパワハラ問題や労働争議を追いかけ取材を続けるジャーナリストの佐々木奎一が、独自のルートで取材したあの企業や業界の問題点に迫ります。 「Thinkstock」より
ゲーム、アニメ、声優などの専門スクール﹁バンタンゲームアカデミー﹂や、パティシエ︵製菓︶、ブランジェ︵製パン︶などの専門スクール﹁レコールバンタン﹂、ネイル、エステ、ファッション業界志望者向けの専門スクール﹁ヴィーナスネイルアカデミー﹂などを経営する株式会社バンタンの社員が、退職強要で会社を辞めさせられた、と東京地裁に訴えている。
訴状や証拠書類などによると原告の細野義夫氏︵20代後半、仮名︶は、リクルート・エージェントの求人に応募し、2012年7月2日にバンタンの正社員として入社した。所属は事業部LVグループ東京という部署。業務内容は、スクール営業に関する業務全般、事務業務全般、と契約書には書いてあった。
だが、実際の仕事内容は、社長やマネージャーの指示で、バンタンと競合する他の学校を情報収集することだった。具体的には、志望者を装い、競合校の資料を取り寄せ、競合校を訪問したり体験入学をして、実態や特徴を調査し自社へ報告した。
入社から約50日の間に訪問した学校は、東京観光専門学校、服部栄養専門学校、日本菓子専門学校など実に19校に上った。
こうして酷暑の中“スパイ活動”を続けるうちに、細野氏は体調不良に陥っていった。﹁身分を偽って、志望者を装い、競合校でウソを言い続けることに罪悪感を持った。もし競合校の職員であることが発覚したらどうしよう、という不安から、常に緊張感を強いられ、大きな精神的負担となった﹂と細野氏は訴えている。徐々に手が震える、まぶたがけいれんするといった症状に見舞われ、病院に行った結果、熱中症、胃潰瘍の疑いあり、と診断された。
細野氏は社長に配転を申し出た結果、8月下旬から、土日休みで比較的生活リズムがつくりやすい営業企画グループに配属されることになった。同グループは、芸能プロダクション﹁ワタナベエンターテインメント﹂︵ナベプロ︶の広告代理店業務をする部署だ。
●﹁他のスタッフに挨拶とかするなよ﹂
だが、新部署に入った途端、細野氏はパワハラを受けた。配転初日、一つだけ空席だった机に細野氏が座ると、直属上司の安住太郎︵仮名︶チーフは開口一番、﹁これからは目の前が細野さんか。景色が悪いな﹂との言葉を投げかけた。その後安住チーフは、約2週間の間に次のような言葉を浴びせたという。 ﹁お前が今考えていることくらいは、俺は小2で気付いていたよ﹂ ﹁兵隊としか思っていないから、言われたことだけをやれ。それ以外のことは一切するな﹂ ﹁言動、行動、姿勢、全て認めていないから、お前に給料を払うなら、他のスタッフにボーナスを払った方がまし﹂ ﹁新人に、ここの仕事はこの程度でよいのかって思われたら悪影響だから、一人だけ3階に行くか?﹂ ﹁他のスタッフと関わるんじゃない。挨拶とかするなよ﹂ ﹁任せられる仕事がない。与える仕事がない﹂ 10月頃からは、もう一人の上司である落合豊︵仮名︶部長からもパワハラを受けるようになった。例えば細野氏の部署では、昼休みは全員が一斉に12時からとるわけではなく、各自が仕事の切りのいいところでとっていた。しかし、ある日の午後、細野氏が、午後2時頃まで昼休みをとらず仕事をしていたところ、落合部長は﹁今お昼どうぞ﹂と言った。 細野氏は、もう少し作業を済ませてから行こうと思っていたので﹁今、お昼に行ったほうがいいですか?﹂と聞き返した。すると、落合部長はいきなり、こう怒鳴ったという。﹁私にそんな軽口をたたくな!﹂それ以降、細野氏に対してだけは﹁12時になったらとるように﹂とか﹁12時か13時で選択するように﹂と、時間を指定するようになった。 会社側は、さらに追い打ちをかけてきた。10月22日の13時45分ごろ、安住チーフは、いきなり細野氏へ給与の10%減額を言い渡したのだ。
同日17時40分頃には、落合部長と面談してこう言われた。
﹁現在の部署に細野は要らない﹂
﹁他の部署でも細野を必要としていない﹂
﹁会社に居場所はない。それでもバンタンにいたいのか?﹂
﹁人事権は会社にあるから、職場はどこでもいいんだね?﹂
﹁じゃあ、掃除でもゴミ拾いでもなんでもやるね?﹂
﹁リアルな話さ、アルバイトで、そこそこかわいいキレイな姉ちゃん時給1200円で雇った方がよっぽど良いでしょ﹂
さらに、﹁ねえ、こんなにオレ、言ったことないよ。言っとくけど、たいがいみんな、嫌で辞めていくけど。嫌なんでしょ?﹂と、これまでも同様の手口で社員を辞めさせていたことをほのめかし、﹁どんな仕事でもいいなら、席はつくらないで、荷物置き場だけはつくって、掃除やゴミ拾いをしてもらう﹂と言った。
この話を聞いた細野氏は、事務職として就職したにもかかわらず、掃除をさせられることに恐怖を覚えた、とつづっている。
●﹁つなぎを着てトイレ掃除しろ﹂
翌23日午前9時45分ごろ、細野氏はまたもや落合部長に呼ばれ、こんな会話を交わした。 落合部長﹁昨日話した通り、今後の業務は、掃除やゴミ拾いで本当によいのか?﹂ 細野氏﹁異動については、会社にいる以上、拒否はできないですよね﹂ 落合部長﹁それでも辞めないんだ。これ以上、会社にいてもいいことないよ﹂ 細野氏﹁辞めません﹂ 落合部長﹁雑草抜きとか、ゴミ拾いとか、トイレ掃除とかやってもらうことになる。8時に出社し︵これまでは9時出勤︶、スーツではなく、おばちゃんの掃除用のつなぎを着て、掃除をしてもらうことになるけど、それでいいんだね? それが嫌だったら、まあ、退職日を決めてくれれば、それまでの間、僕の横で雑用してもらってもいいんだけど。トイレ掃除とかよりは、いいでしょ。退職日、決めようよ、いつならいい?﹂Business news pick up
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