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ひょうんな事から、大阪市教委が、市内のいくつかの図書館や区役所で、来年度に使用する学校教科書の展示会を開催中である事を知りました。開催期間は6月初めから7月中頃まで。開催場所など詳しい事は、﹁﹁つくる会﹂系教科書を子どもたちに渡さないために!﹂というブログの、次の記事を参照して下さい。 ・教科書展示会に行って、アンケート用紙にあなたの意見を書いてください! http://kyoukashoosaka.blog39.fc2.com/blog-entry-198.html ・大阪市の教科書展示会に行こう!市民の意見をアンケートに! http://kyoukashoosaka.blog39.fc2.com/blog-entry-200.html 早速私も、今日の公休日に、大阪市内の西長堀にある市立中央図書館に行って来ました。教科書展示コーナーは1階の受付横にあり、小・中・高の主要科目の教科書が開架棚に並んでいました。そこには、右翼団体﹁新しい歴史教科書をつくる会﹂︵略称‥つくる会︶系出版社2社のうちの、育鵬︵いくほう︶社版はなく自由社版だけがあったので、自由社の﹁新版 中学社会 新しい歴史教科書﹂を手に取り、幕末の頃から現代の項目を中心に、ざっと目を通しました。 その自由社版教科書の感想ですが、余りの酷さに今更ながら驚きました。もうアホらしくて何も書く気が起らなかったぐらいです。 まず第一に感じたのが、余りにも自国中心の記述に偏っている事です。世界史に関する記述が、古代の四大河文明の後、第一次大戦の頃まですっぽり抜け落ちてしまっているのです。ローマ帝国も、イスラム帝国も、ルネサンスも、マグナカルタも、宗教改革も、フランス革命も全然出て来ず。いくら中学生相手に日本史中心に教えるようになっているからと言っても、これでは、なぜ南蛮人が堺にやって来たのか︵大航海時代との関連︶、なぜオランダだけが長崎の出島で貿易を維持できたのか︵ルター宗教改革との関連︶、自由民権運動が何をめざしたのか︵フランス人権宣言との関連︶、皆目分からないじゃないですか。少なくとも私が中学生の頃は、この程度の事は授業で教わりましたけれど。これでよく﹁グローバル・スタンダードや国際感覚を養わなければならない﹂なぞと平気で口に出来るなと思いました。 そして第二に感じたのが、社会科学的な分析視点がどこにもない事。例えば、明治維新の項目を取り上げる際も、吉田松陰や坂本竜馬とか文明開化とか、そういう陽の当たる史実ばかり取り上げ、松方デフレ政策とか女工哀史などの﹁陰の部分﹂については完全黙殺。西南戦争や自由民権運動に関する記述も、﹁政府も近代化を望んでいた点では民権運動家と同じだ﹂と、まるで﹁コップの中の争い﹂みたいな描き方。世直し一揆や地租改正反対一揆、秩父事件などの史実は一切無視。NHKの大河ドラマでも、もう少しマシな描き方をするでしょう。 これが小学校の歴史教科書であれば、﹁英雄の伝記物語﹂中心の授業になるのも、生徒の興味を引くためには一定仕方ないと思いますが、少なくとも中学で歴史を教えるのであれば、単なる英雄伝や事件史だけでなく、その人物が登場した社会的背景や、その事件が起こった社会的背景についても、ある程度掘り下げないと。中学で義務教育は終了してしまうのですから。 第三に感じたのが、前述の第二に感じた事とも関連しますが、徹底して﹁上から目線、支配者目線﹂の記述で貫かれ、庶民生活の様子がほとんど出てこない事。建国神話や聖徳太子の話ばかりにページを割き、山上憶良の貧窮問答歌などは一切出て来ず。中世の土一揆・国一揆については少し出てきますが、これも﹁我々の先祖もよく頑張った﹂という文脈の中で、その一コマとして触れているだけ。さすがに近代以降は、庶民生活の様子も取り上げられるようになりますが、それすら﹁近代化で鉄道開通﹂とか﹁千人針で婦人も前線の兵士を支えた﹂とか、そんな話ばかりで、その戦争によってどれだけの人間が殺されたかについては、ほんの少ししか取り上げず。東京大空襲、沖縄戦、中国や東南アジアでの日本軍兵士の蛮行とかも一切出てこない。 そして第四に、帝国主義や植民地主義に対する批判的視点が一切ない事。大日本帝国憲法を﹁当時のアジアで最も先進的﹂と手放しで礼賛し、その陰で行われた治安維持法弾圧や﹁蟹工船﹂的搾取については全く触れず。﹁日本は初めて人種差別撤廃を世界に向けて訴えた﹂とか、八田与一︵台湾に渡った日本人技師︶の美談ばかりで、霧社事件︵日本軍による台湾先住民弾圧︶なども完全黙殺。何せ、明治政府の琉球処分︵沖縄完全併合︶を﹁一種の奴隷解放﹂と称賛し、五四運動︵日本の領土・権益要求に抗する中国の民族運動︶も排日暴動といわんばかりに記述しているのですから。大正デモクラシーも、その中の﹁日本人よく頑張った﹂史観の単なるエピソードの一つに矮小化されてしまっている。 こんな歴史教科書で教えられた子どもが、やがて成人して自衛隊員になり、集団的自衛権行使でアフリカかどこかの紛争地帯に、PKOや治安維持部隊として派遣されても、差別意識丸出しで﹁黒んぼ﹂とか失言して、部族紛争を余計にこじらせてしまったり、IS︵イスラム国︶やボコ・ハラムに付け入る隙を与えてしまうだけでは。 第五に感じたのが産経流の反共史観や資本主義美化論。ロシア革命を単なる独裁者の陰謀としか見なさず、スターリン粛清などが行われた一方で、8時間労働制や社会保障、民族自決権確立の契機になった事には一切触れず。こんな描き方では、およそ﹁公平・中立な価値観﹂なぞは絶対に養われないでしょう。この出版社や産経新聞などが、他の歴史教科書の﹁偏向ぶり﹂をよく攻撃しますが、自分たちの方こそ、よっぽど偏っているではないか。戦後の記述も、モーレツ社員の働きぶりを無批判に称賛するのみで、それが今の非正規と正社員、男女間の賃金格差や、ブラック企業の横行を下支えしている事は全く無視。その上、ベトナム戦争・イラク戦争に対する反戦運動や反原発運動を、まるで﹁コミンテルン︵共産主義︶の手先﹂であるかのように、一方的に決めつけるような記述まで。もうウンザリです。
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﹁日露戦争﹂の単元を自由社と他の出版社︵学び舎︶の教科書で比較。左上が自由社、右上が学び舎の該当ページ。自由社の方は﹁バルチック艦隊を発見した漁師の武勇伝﹂とか﹁歴史に残る大海戦﹂﹁武士道精神の発露﹂とか、もうそんな話ばかり。他方、学び舎の方は、戦場となった中国における民衆の犠牲や、与謝野晶子・内村鑑三の非戦論についてもちゃんと紹介している。 こんなトンデモ教科書でいくら歴史を教わっても、﹁朝鮮・韓国人を海に叩き込め~!﹂と叫ぶ在特会︵日本のネオナチ団体︶構成員と同じ程度の歴史認識しか身につかないでしょう。余りの内容に、しばらくパブコメ︵パブリック・コメント=市民アンケート︶に応じる気にもなりませんでしたが、せっかく図書館まで来たのですから、今言ったような事をアンケート用紙に書いて投書箱に入れて来ました。
「太平洋戦争」への道のりや、「日独伊三国同盟」さらにはその前の「日中戦争」や「ファシズム(ナチズム)」については、どんな書きぶりだったのでしょうか?
本当に読まれたのですか?私は初版しか持っていませんが、これらのことは書かれていましたよ。 ざっと立ち読みしたくらいでは分からないのでは。 もしかしたら初版とは大幅に変わってしまってる可能性もありますが あなたの言う通りならこれは、問題だなとは思います
いずれにせよ、斜め読みではなく最初から最後まで読んでおかないとうっかりがありますから読んだうえで批判しないといけないのではないでしょうか 返信する
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