令和書籍中学校歴史教科書の﹁検定合格﹂に対する抗議声明
2024年6月1日
子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会
4月22日、文部科学省は﹁決定未了﹂にしていた令和書籍の中学校歴史教科書を﹁検定合格﹂させた。令和書籍は毎年のように検定申請し、その都度﹁不合格﹂になった申請本を﹁不合格教科書﹂として市販していたが、とうとう﹁合格﹂したのである。令和書籍歴史は戦前の軍国主義時代の国定教科書﹁国史﹂にそっくりで、大日本帝国の皇国史観にもとづいて書かれている。侵略戦争への反省もまったくない時代錯誤で不誠実な歴史教科書である。このような﹁天皇の活躍物語﹂を子どもたちが学ぶ教科書として﹁合格﹂させた文科省の責任は重大であり、私たちは強く抗議する。私たちが抗議する理由はいくつもあるが、短くまとめると以下のとおりである。
︵1︶皇国史観
・神話と歴史を直結している。天皇を神の子孫とし、実在しない天皇も含めて、歴史を天皇の活躍物語
にしている。皇統はずっと男系と強調。
・明治天皇と昭和天皇を特に偉大な天皇として美化。これらの天皇はアジアへの侵略戦争を進めた天皇であるにもかかわらず、平和を望んだ天皇と描く。
・教育勅語を賛美。﹁特攻死﹂を国民のもっとも美しい自己犠牲の姿として﹁散華﹂と呼ぶ。
︵2︶侵略戦争と植民地支配を正当化し、加害の記述がほとんどない
・韓国の植民地化は韓国の皇帝から依頼されたから。近代化は日本のおかげと説明。
・南京大虐殺を否定。日本軍﹁慰安婦﹂が性奴隷だったことも否定。
このような歴史教科書たりえない﹁物語﹂を﹁検定合格﹂させたことに、検定官の質の劣化が如実にあらわれている。そもそも検定基準﹁1 基本的条件︵5︶﹂では、内容は﹁児童又は生徒の心身の発達段階に適応﹂していることが求められている。令和書籍歴史は縦書きで他社の倍近くのページ数があり、一般には知られていない天皇のことまで記述しているため難解で、中学生の﹁発達段階﹂にはまったくふさわしくない。内容の是非以前にこれだけでも不合格になるべき教科書なのである。
また﹁社会科の検定基準︵6︶﹂には﹁近隣諸国条項﹂があり、﹁近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること﹂が明記されている。これにもとづくなら令和書籍の戦争・植民地記述は絶対に認められないはずである。ところが安倍政権によって﹁近隣諸国条項﹂が棚上げ、さらには完全無視されることが続き、検定官自身がアジア諸国のことなどどうでもよいかのような傲慢な感覚に陥っているのである。
しかし、問題の深刻さはそれだけではない。﹁事前に内容が漏れていた﹂ことにより﹁決定未了﹂となっていた令和書籍歴史を﹁合格﹂させた文科省の最終判断は、岸田政権の判断でもあるということだ。岸田首相は4月の日米会談で今後はアメリカのグローバルな戦争に全面的に協力することを表明した。兵器の爆買いだけでなく、世界各地でのアメリカの戦闘に自衛隊が参加する可能性を表明したのである。しかし、自衛隊が実際に戦死もありうる戦闘行為に参加するには、自衛官の数が圧倒的に不足しており、国民感情としても容易に受け入れられるものではない。災害救助で作られた人々の自衛隊への肯定的評価を利用して、自衛官募集を一生懸命やっても、自衛隊内のパワハラやセクハラは後をたたず、自殺者も出ている状況では応募者はなかなか増えない。このようななかで、岸田政権にとっては教育を通じた﹁愛国兵士﹂づくりは喫緊の課題である。そのためには育鵬社・自由社だけでなく、令和書籍のような極端な歴史教科書すら利用しようとしているのである。
しかし、私たちはこのような子どもたちを戦争に導く﹁軍国主義礼賛・愛国主義礼賛﹂の教科書を絶対に許さない。すでに各地の教科書センターには採択にかけられる令和書籍の見本本が届いている。私たちは教科書展示会で意見を書いて教育委員会に届けることをはじめ、採択会議の傍聴などできることはすべてやるつもりである。あぶない教科書の採択を阻止し、﹁平和・人権・共生﹂という日本国憲法の理念にのっとった教科書を子どもたちに届けるために努力することを表明する。
以上
賛同団体(7月15日現在︶
オール東大阪市民の会、教科書問題を考える北摂市民ネットワーク、 ︵アイ︶女性会議・京都、子どもと教科書 市民・保護者の会、子どもに﹃教育への権利﹄を!大阪教育研究会、香川の子どもと教科書ネット、高槻タチソ戦跡保存の会、ざざまる会、日本軍﹁慰安婦﹂問題・関西ネットワーク、アイ女性会議ひょうご、﹁慰安婦﹂問題を考える会・神戸、サポートユニオンwithYOU、﹁日の丸・君が代﹂強制反対・大阪ネット、教職員なかまユニオン、全国労働組合連絡協議会大阪府協議会︵大阪全労協︶、子どもの教科書を読む会・北九州、﹁キリスト者・9条の会﹂北九州、草の根の会・中津、教科書問題を考える会・豊中
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教科書全国集会2023秋 ~中学校教科書採択に向けて~
今年の教科書採択から見えてきたもの
ー市民と教員にもっと開かれた教科書採択を!―
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■日時 11月11日(土) 14‥00~16‥30︵開場13‥30︶
■場所 国労大阪会館 3階大会議室
︵JR環状線﹁天満﹂、地下鉄﹁扇町﹂︶
■オンライン配信もします
https://onl.la/Z4ffnIU
■内容
①大阪と全国の採択状況報告と今後の課題
②今年の小学校教科書の問題点(社会科、道徳︶と、現行中学校教科書の問題点
③各地からの報告
④特別報告﹁自衛隊の若者勧誘に協力する地方自治体﹂
■主催 ﹁戦争教科書﹂はいらない!大阪連絡会
iga@mue.biglobe.ne.jp
■呼びかけ
︵1︶採択過程を透明にしない地域がいまだにある
教科書運動は、ここ10年間ほどで大きく前進しました。市民が教科書展示会に足を運んで意見を書き、教育委員会の採択会議を傍聴してきました。教育委員会会議は通常傍聴人数が限られており、希望者が多いと抽選になります。教科書採択会議には教科書会社がつめかけるため、抽選になると市民がほとんど傍聴できません。そのため、私たちは採択会議には傍聴希望者全員が入れる大きな会場を用意するように、粘り強く働きかけてきました。その結果、大阪府下では傍聴人数に制限がない地域が増えています。
ところが、東大阪市は今年も抽選をし、その結果、定員12名のうち傍聴できた市民はわずか3名で、9名は教科書会社の社員でした。多くの市民は別会場で画面を見るしかなく、別会場では採択資料すら配布されませんでした。教育委員どうしのやり取りは聞き取りにくく、市民はずっと我慢させられました。
石川県金沢市は採択会議に市民の傍聴を許さず、採択結果も発表しませんでした。市民は強く抗議しましたが、﹁静謐な環境保持﹂を理由に、密室採択が長年続いています。このように、全国的にはまだまだ開かれた採択になっていません。今回の集会では、全国状況を集約し、来年の中学校教科書採択に向け、知恵を出し合いましょう。そして、育鵬社教科書採択をゼロにしましょう。
︵2︶増えている自衛隊の災害救助の写真
小学校の社会科教科書では自衛隊の写真が増え、その多くは東日本大震災の救援写真です。そのため、子どもたちは自衛隊を軍隊ではなく、レスキュー隊のようにイメージしています。文科省は検定の際、日本文教の﹁自衛隊のイラク派兵﹂写真のキャンプション﹁はじめて実際の戦闘地域に派遣された自衛隊﹂に、﹁戦闘地域ではなかった﹂と意見をつけ、﹁イラクで活動する自衛隊﹂に書きかえさせました。
自衛隊の本質は殺し合いをする軍隊です。南西諸島は中国、北朝鮮との戦争を視野に入れて、最前線基地として再編強化されています。岸田政権はウクライナ戦争を口実に、﹁敵基地攻撃能力﹂と称して、﹁先制攻撃﹂まで想定しています。麻生自民党副総裁は台湾で、日本の﹁戦う覚悟﹂を語りました。このように、現実には露骨な戦争準備がなされているにもかかわらず、子どもたちには真逆のことが教えられているのです。教科書が自衛隊の宣撫工作に利用されています。
自衛隊の高校生リクルートに、個人情報を提供する地方自治体
現在、岸田政権はアメリカの高価な武器を爆買いし、自衛隊を軍隊として強化しようとしています。しかし、自衛隊の真の弱点は武器の不足にあるのではなく、自衛官の不足にあります。そのため、若者には何とか自衛隊に親しみをもたせ、あこがれるように仕向けてきました。しかし、実際には五ノ井さんの告発でも明らかなように、内部ではセクシャルハラスメントが後を絶たず、いじめも横行しています。
現在、自衛隊は高校生に、かつての﹁赤紙﹂まがいの勧誘ハガキを送りつけ、自治体は個人情報を自衛隊に提供しています。今回の集会では﹁特別報告﹂として、この問題を長年追及してこられた山下慶喜茨木市会議員に自治体の実態を語っていただきます。﹁若者を戦場に送らない﹂ために、私たちは何をすればよいのかをいっしょに考えましょう。
多くのみなさんの集会へのご参加をお願いいたします。
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教科書全国集会2023~小学校教科書採択に向けて~
琉球弧の軍事要塞化と戦争教科書
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■日時 6月3日(土)14‥00︵開場13‥30︶
■場所 エルおおさか 本館6階大会議室
︵大阪メトロ﹁天満橋﹂、京阪﹁天満橋﹂︶
■講演 北上田毅さん(沖縄から来阪)
■報告 小学校教科書の内容
採択制度の民主化に向けて
藤井寺市での教科書汚職事件
■資料代 800円︵学生、しょうがい者無料︶
■オンライン希望者は添付のQRコードから申し込んでください。
︵5月31日までに︶
■主催 ﹁戦争教科書﹂はいらない!大阪連絡会
iga@mue.biglobe.ne.jp
■呼びかけ
□﹁愛国心教育﹂の道具にされる小学校教科書
今年の夏に採択される小学校教科書の検定結果が出ました。
道徳では、教育出版2年生の﹁私の町のあんこやさん﹂という教材のテーマが、﹁ちいきのよさに気づく﹂から﹁国やちいきのよさに気づく﹂に変えられ、本文では﹁これからも日本のあじをつたえていきたいね﹂が付け加えられました。また、日本文教6年生の姫路城の修復を取りあげた教材では、﹁木組みの技術﹂が﹁日本古来のすぐれた木組みの技術﹂に変えられました。
﹁あんこ﹂は東アジア共通の食品です。﹁木組みの技術﹂は仏教の伝来とともに、中国・朝鮮を経て伝わった寺院建築の技術であり、いずれも日本独自のものではありません。子どもたちが学ぶべきは、視野の狭い﹁日本すごい!﹂ではなく、国際理解と多文化共生の大切さではないでしょうか。
社会科では、北方領土・竹島・尖閣諸島は、すべて﹁日本固有の領土﹂と記述されました。これらの領土問題は日本の侵略戦争と深く関わっています。したがって、歴史的背景と相手国側の主張も教えてこそ、領土問題の平和的解決を考える力を養うことができます。文科省の領土教育は相手国への憎しみを煽ることにしかならず、好戦的な国民を育成する危険な教育です。
日本文教6年生では、自衛隊のイラク派兵︵2004年︶の写真のキャンプションが、﹁はじめて実際の戦闘地域に派遣された自衛隊﹂から﹁イラクで活動する自衛隊﹂に書きかえさせられました。イラク派兵は激しい戦地への派遣で、帰国後PTSDを病んで、幹部も含め29名もの自衛官が自殺するような悲惨な結果となりました。それを隠ぺいし、あたかも平和的なボランティア活動だったかのように、子どもたちがイメージするように文科省は誘導したのです。
□琉球弧︵南西諸島︶の軍事要塞化を企む岸田政権
このような﹁愛国心﹂の刷り込みの背景にあるのが、岸田政権の軍拡と増税政策です。岸田政権はウクライナ戦争をきっかけとした国民の不安感を利用して、﹁敵基地攻撃能力﹂を持つために軍事費をGDPの2%︵5年間で43億円︶に上げるとしました。そのための大増税ももくろんでいます。すでに沖縄や奄美などの南西諸島では、自衛隊のミサイル基地建設が着々と進められています。日本は﹁新たな戦前﹂=﹁戦争準備の開始﹂に踏み込みつつあるのです。
アメリカは﹁台湾海峡有事﹂に備えて沖縄の米軍基地を強化しています。岸田政権はアメリカに全面協力し、沖縄県の反対を無視し、辺野古の海の埋め立てを強行しています。今回、講師としてお呼びした北上田毅さんは辺野古の海底がマヨネーズのようにゆるく、埋め立てるには無理があることを明らかにして、反対運動の先頭に立ってこられた方です。講演では、辺野古の最新の状況と、南西諸島の軍事要塞化の実態についてお話していただきます。
□﹁平和・人権・共生﹂を大切にした教科書の採択を!
戦争をするためには﹁お国のために命を捨てる覚悟﹂を持った国民を大量に育成しなければなりません。﹁愛国心教育﹂が不可欠なのです。安倍政権が進めた侵略戦争の歴史の抹殺と、道徳の教科化。私たちはそれに立ち向かい、2020年には大阪市、東大阪市などで育鵬社中学校教科書の採択を阻止しました。藤井寺市では大日本図書と癒着した元校長らによる不正採択が明らかになり、採択のやり直しがおこなわれました。これらは市民の教科書運動の成果です。
市民アンケート、採択会議の傍聴など、今年もぜひいっしょに取り組んでください!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/thumbnail/54/88/53fab9d67a46c900e657a330e530992f_s.jpg)
大阪の会では、大阪府内の全ての市町村教育委員会に要望書と公開質問書を送りました。
2024年度使用小学校教科書の採択に関する要望書と公開質問状
2023年5月6日
教育委員会 教育長 様
教科用図書選定委員会 様
子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会
貴教育委員会の教育への日頃のご尽力に敬意を表します。
さて2024年度から使用される小学校教科書の採択に向けて、貴教育委員会も準備作業を進めておられることと存じます。3月の末に公表された文部科学省の教科書検定結果では、道徳教科書において愛国心教育を強化しようとする記述が増え、社会科においては日本の加害の事実を曖昧にする記述が増えました。また、全ての出版社で﹁北方領土﹂﹁竹島﹂﹁尖閣諸島﹂を﹁日本固有の領土﹂と記述もされました。しかし、これら三つの領土問題は、かつての日本の侵略戦争と深く関わっているという歴史的背景があります。それを教えずに日本政府の主張だけを教えれば、相手国への反感を子どもたちに植え込むことにしかなりません。
また昨年11月には藤井寺市で教育委員を巻き込んだ教科書汚職事件が発覚し、元校長の有罪判決、教育委員の辞職、さらには全国で初めて教科書採択をやり直す事態にまで至りました。このような事態に至った要因として、教育委員をはじめ採択に関わる者の認識が甘かったことだけでなく、市教委が非公開の選定委員会の議事録を作成せず、市民に完全に閉ざされた環境の中で選定委員会﹁答申﹂が作られていたことがあげられます。採択過程を広く市民に公開することが、不正を防ぐ大きな抑止力になることが改めて明らかになりました。藤井寺市での教科書汚職事件を他人事してはなりません。再度、教科書採択の公正性、透明性が十分確保されているかどうか、点検することが必要です。
そこで私たちは、日本国憲法に体現される基本的人権、平和、民主主義、そして近隣諸国との友好関係を深める観点から、公正かつ透明性のある教科書採択が行われるよう貴教育委員会に要望するとともに、以下の公開質問への回答をお願いいたします。なお、貴教育委員会からの回答は公表を予定しています。ご多忙と思いますが、回答を5月末日までにお願いします。(回答用紙は別紙)
︻要望書︼
1.採択関係者が﹁利害関係者﹂でないことを厳密にチェックしてください。
教育委員、選定委員、調査員については、﹁利害関係者﹂でないことを、事前に厳格にチェックしてください。2019年の小学校道徳採択から、大阪市では教育委員からも﹁利害関係者ではない﹂ことを宣誓する﹁誓約書﹂の提出を義務づけました。貴教育委員会でも大阪市と同様に教育委員からも﹁誓約書﹂を義務づけてください。
2.人権、平和、共生など日本国憲法の精神を尊重した調査研究と採択を行ってください。
貴教育委員会が作成する﹁教科書を調査研究する観点﹂には、従来から﹁人権の取り扱い﹂が項目に含まれています。大阪では、部落問題や在日外国人問題、障がい者問題などさまざまな人権に関わる問題について、教育課題としても積極的に取り上げられてきたところです。道徳の教科書採択に当たっても、人権、平和、共生など日本国憲法の精神を重視する観点から調査研究をおこない、そのような観点から評価の高い教科書を採択してください。
3.偏狭なナショナリズムに繋がる﹁愛国心﹂を調査の観点に入れないでください。
教育基本法には、﹁愛国心﹂に繋がる目標がありますが、そこには﹁他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと﹂が同時に明記され、偏狭なナショナリズムに陥ることがないように求めています。 しかし、小学校教科書検定結果を見れば、﹁日本美化﹂﹁日本人はすばらしい﹂と言った内容がことさら強調されている教科書があります。これらは偏狭なナショナリズムにつながっていくものです。調査の観点に偏狭なナショナリズムに繋がる﹁愛国心﹂を採択基準に入れないでください。
4.﹁考え,議論する道徳﹂を重視する調査の観点を設定してください。
新学習指導要領では、﹁考え、議論する道徳﹂が強調されています。しかし、教科書の中には、教材の前後に﹁学ばせたい徳目﹂に誘導する設問を設けて、子どもたちの学びを特定の価値観に誘導しようとするものがあります。子どもたちは、自由に発想し、幅広く考え、意見交換する中で自分の考えを深めていきます。自由な発想は、﹁考え、議論する道徳﹂の基になるものです。特定の価値観に誘導する教科書はそれらに逆行しています。
5.採択にあたっては子どもの実態をもっともよく知る教員の意見を尊重してください。
ILO・ユネスコの﹁教員の地位に関する勧告﹂には、﹁教員は生徒に最も適した教材および方法を判断するための格別の資格を認められたものであるから、承認された計画の枠内で、教育当局の援助を受けて教材の選択と採用、教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである。﹂と明記されています。﹁教員の意見を尊重した採択﹂は、国際基準です。従って、教員が調査員をつとめる﹁調査員報告﹂や﹁学校意見﹂を集約する形で選定委員会﹁答申﹂を作成し、それに基づいて採択してください。
6.選定委員会﹁答申﹂や、﹁調査員報告﹂、﹁学校意見﹂では教科書の長所・短所を記述するようにしてください。
いうまでもなくどんな教科書にも長所と短所があります。しかしながら近年、﹁答申﹂や﹁調査員報告﹂、﹁学校意見﹂に﹁特長︵すぐれた点︶﹂しか書けない形式にしている地域があり、これでは教員の意見は伝わりません。また優劣がわからないため正しい判断もできません。
7.選定委員会﹁答申﹂では、専門的な調査研究の結果として﹁順位付け﹂﹁絞り込み﹂を行ってください。
一部マスコミが﹁文科省は採択にあたっては教員による順位付けや絞り込みを禁止している﹂と報じ、また同じような解釈をしている一部の教育委員会がありますが、これは誤りです。下村文科大臣(当時)は、国会答弁で﹁(教科書採択は︶教員や保護者を初めとする調査員による綿密な調査研究を行った上で、適切に行われる必要がある﹂(2015.4.22)と述べ、文科省初等中等教育局長も﹁調査研究の結果として何らかの評定を付し、それも参考に教科書の採択を行うことが不適切だというものではない﹂(同日)と述べています。選定委員会﹁答申﹂の﹁順位付け﹂や﹁絞り込み﹂は、教育委員会での公正で公平な採択を行うためにも必要な資料となるものです。
8.選定委員会の議事録(発言者名を入れた)を作成し、市民に公開してください。
大阪府内では、発言者名を入れた選定委員会議事録を作成している教育委員会はまだまだ一部にとどまっています。しかし、藤井寺市での教科書汚職事件の教訓は、教科書採択が公正で民主的な手続きで実施されるためには、採択過程の透明性を高めることが不可欠だということです。また、教育委員会での議事録に発言者名を明記していなかったことも、教育委員の甘い認識を生みました。選定委員会や教育委員会議の発言者名入りの議事録を作成することは、採択の透明性を確保するために絶対に必要なことです。
9.採択教科書を決める教育委員会会議は、傍聴希望者全員が傍聴できるように配慮してください。
近年、教科書採択には市民の関心が高く、傍聴希望者が増えています。しかし、採択会議は教科書教科書会社も来るので、抽選になると傍聴できない市民が多くなります。市民に開かれた公平・公正な採択のためにも、市民の傍聴を保障することは大切です。
10.採択会議の傍聴者には、選定委員会答申など採択会議の審議内容がよくわかる資料を配布してください。また、終了後に配布資料を回収するのはやめてください。
傍聴者に配布された資料は公開されたものであり、回収する意味はありません。
11.要望書や市民アンケートに書かれた市民の意見も採択の参考にしてください。市民の要望書やアンケートの意見は、必ず選定委員や教育委員にも見せるようにしてください。
一部の市では教育委員会事務局が、市民の意見を選定委員や教育委員に一切見せずに採択を進め、その結果子どもたちにはふさわしくない教科書が採択されてしまいました。採択権限は教育委員会にあるとしても、選定委員会や教育委員会には、公平・公正な採択のために広く市民の意見に耳を傾ける謙虚な姿勢を持ってもらいたいと考えます。
以上
︻公開質問状︼
1.貴教育委員会の採択制度︵公開度も含めて︶は、2020年の中学校採択から変更がありますか。
①ある
②ない
2.教科書の調査研究に各学校・教員はどのように関わっていますか。
①学校意見を集約している。
②教員の意見を集約している。
③教員研究会の意見を集約している。
④意見集約を行っていない。
3.選定委員会﹁答申﹂や﹁調査員報告書﹂はどのような形式で作成されるのでしょうか。
①各社の長所と短所を記述している。
②各社の特長︵すぐれた点︶をまとめている。
③その他︵ ︶
4.選定委員会の﹁答申﹂はどのような方法で行う予定ですか。
①順位付けをして答申する。
②何社かに絞り込んで答申する。
③全社の長所と短所を文書表記して答申する。
④全社の特長︵すぐれた点︶を文書表記して答申する。
⑤その他︵ ︶
5.採択において選定委員会﹁答申﹂を重視しているのかどうか、その位置づけを教えてください。
①選定委員会﹁答申﹂を重視する。
②選定委員会﹁答申﹂を参考にする。
③選定委員会﹁答申﹂には一切左右されない。
6.教育委員会議では、どのような方法で採択をする予定ですか。
①話し合いによって採択する。
②記名投票(挙手)で採択する。
③無記名投票で採択する。
7. 教育委員会議の会議録作成について教えてください。
① 発言者名入りの議事録を作成している。
② 発言者名のない議事録を作成している。
③ 議事録は作成していない。
8.選定委員会の会議録作成について教えてください。
①発言者名入りの議事録を作成している。
②発言者名のない議事録を作成している。
③ 審議のおおまかなメモを作成している。
④議事録は作成しない。
9.選定委員会﹁答申﹂の公開はいつの時点ですか?
①﹁答申﹂ができた時点で公開請求があれば公開する。
②﹁答申﹂は採択日以降に公開する。
10.教育委員協議会︵採択の教育委員会の前に開かれるもの。名称は教育委員会によって異なる場合がある︶は秘密会としておこなわれています。採択過程の透明性の確保の観点から、協議会も議事録を作成すべきだと考えますが、どのようにされていますか。
①協議会の議事録は作成している。
② 協議会の議事録はないがメモは作成している。
③協議会の議事録もメモも作成していない。
④協議会のような会議は行っていない。
11.市民からの要望書や市民アンケートの意見を、選定委員や教育委員に見せていますか。
①すべて見せている。
➁見せていない。
③一部は見せている︵見せているもの‥ ︶
12.採択の教育委員会議の傍聴者について
︵1︶2020年の中学校採択時、傍聴人数は何人に設定されましたか? ︵ ︶人
︵2︶傍聴希望者の手続きについて
① 当日、会議開始前に集合
② 事前に申し込みを必要としている
③ その他︵ ︶
13.傍聴者が定員を超えた場合、どのように対応されていますか?
① できるだけ全員が傍聴できるように配慮している。
② 傍聴希望者で抽選を行い、定員内の傍聴としている。
③ その他の対応︵ ︶
14.傍聴者に配布した資料の取扱いについてどのようにされていますか?
① 配布資料は回収している。
②配布資料は回収しているが、後に希望者には配布する。
② 傍聴者には資料を配付していない。
15.情報公開請求に対して、市民アンケート︵教科書アンケート︶は公開されていますか。
①名前、住所を含めて全て公開している。
②名前、住所以外は全て公開している。
③名前、住所以外にも非公開部分があり、部分公開としている。
④ 公開していない。
16.今年度の小学校採択に関して、貴市の市長、教育長、教育委員に対して、教科書会社から何らかの接触・働きかけがありましたか?
①あった。
②あったが、詳細ははっきりしていない。
③ない。
以上
藤井寺市市長 岡田 一樹様
藤井寺市教育委員会教育長 濱崎 徹様 2023年 2月 6日
緊急の要望と質問
子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会
ざざまる会
昨年11月3日の報道﹁大阪府警が、藤井寺市の元中学校長・西留を教科書選定収賄疑いで書類送検、﹃大日本図書﹄の社員2人を贈賄容疑で書類送検﹂によって私たちもこの事件を知り、教科書採択と公教育にかかわる重大な事象ととらえ、質問・抗議を行ってきました。報道によれば、当時教科書選定委員であった西留元校長が、大日本図書に調査員の名前や調査員作成資料を漏洩させ、その見返りに現金を受け取ったりゴルフ・会食接待を受けたりしていました。2022年11月2日、大阪府警は西留元校長を加重収賄の容疑で書類送検し、年明けの1月25日には大阪地裁が西留元校長を有罪とする判決を出しました。前代未聞の教科書採択汚職と言わざるをえません。
この事態を受けて、12月20日、藤井寺市議会は全会一致で﹁市教科書採択に係わる第三者委員会﹂の設置を決定し、今年度内に報告書をまとめるとしています。委員会は非公開とされ、会議録を公表するとしていますが、実際には簡単なメモしか公表されず、審議の内容は市民に知らされないままです。
他方で、藤井寺市教委は、1月10日に﹁臨時教育委員会﹂を開催し、﹁中学校の数学と保健の教科書採択のやり直し﹂を決めました。1月中に選定委員会︵6名︶を開き、2月末までには市教委が新しい教科書を採択するという内容です。市議会の設置した第三者委員会の報告書を待たず、教科書汚職事件の全貌解明にはほど遠い中での決定ではありますが、採用期間中での採択やり直しは、全国で初めてのことであり、画期的なことです。
そんな中、1月25日には、大日本図書株式会社特別調査委員会が﹁調査報告書﹂を公表しました。その中では、2011 年以来︵﹁報告書﹂では 2016 年以降が調査対象︶、大日本図書営業局統括局長と西留元校長との極めて深い癒着関係︵頻繁に行われたゴルフや会食の接待、その見返りとして採択関連資料・調査員名の提供など︶が赤裸々に書かれており、予想を遙かに超えるひどい実態でした。
しかし、教科書汚職事件の深刻な広がりはそれにとどまりませんでした。2名の教育委員や調査員の教員が、西留元校長を介して大日本図書から飲食接待を受けていたことが明らかとなりました。
以下﹁調査報告書﹂が指摘する2名の教育委員の汚職を挙げます。―――――――――――
< 2019 年小学校採択に際して>
・7月11日、採択期間中に大日本図書と教育委員Dが面会
・大日本図書が、理科と生活の内容解説資料などを別の1名の教育委員Eの自宅に郵送し電話で説明。
< 2020 年中学校採択について>
・西留元校長は7月7日の選定委員会終了後、2名の教育委員に﹁選定委員会の結果通りに採択されるように﹂﹁連絡した﹂。
・西留元校長は、教育委員Eに電話し、7月15日に教科書採択に向けた教育委員勉強会を開催することを聞き、それまでに大日本図書と教育委員Dとの会食を設定。また、西留元校長が仲介し教育委員Eと大日本図書の面会︵教育委員の自宅で︶を実現させた。
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この2名の教育委員は、大日本図書によるヒアリングを、﹁公判﹂への影響を理由に拒否してきました。しかもこの2名の教育委員は、現在も教育委員にとどまっています︵Dは 2008 年6月から現在、Eは 2014 年から現在︶。市教委は、教科書採択のやり直しを決めましたが、この2名の教育委員の責任が不問にされたままです。この2名の教育委員が参加する中で、採択のやり直しが行われるなどあってはならず、今後の﹁採択のやり直し﹂のための会議は、この2名を除いた形でおこなうべきです。
と同時に教育委員会として、このような2名の教育委員をやり直しのための会議に参加させてしまったことの責任をまぬがれることはできません。なぜそのようなことになったのかも含め、すみやかに真相調査を進め、疑惑が明らかになったら、ただちに罷免すべきと考えます。
要望内容と質問内容については、大変お忙しいとは思いますが、2月17日︵金︶までに回答をお願いいたします。
要望内容
■藤井寺市教育委員会に対して
︵1︶1月6日の臨時教育委員会議では、﹁2月末までに採択やり直し﹂を決定しました。しかし、その場には汚職が疑われる2名の教育委員が参加していました。採択やり直しは、少なくともこの2名の教育委員が全く関与しない形で進めなければ公正性は保障されません。今後は2名の教育委員を除いて、速やかに採択のやり直しを進めてください。
︵2︶教科書汚職事件について徹底した全貌解明と市民への丁寧な説明を求めます。特に、大日本図書の﹁調査報告書﹂では、2名の教育委員と調査員も会社からの飲食接待等を受けていたことが明らかとなりました。どのような接待を受け、どのような情報を流していたのか、その実態について徹底した調査を行い、責任ある見解を出してください。
︵3︶1月6日の臨時教育委員会の会議録では、発言した教育委員の名前が記載されていません。これでは、不正が疑われる教育委員の発言・会議への関わり方が、傍聴者以外の市民には明確になりません。1月6日の議事録を、発言者名を明記して再度作成し直して公表してください。今後は、発言者が明記された議事録を作成してください。
また今後、選定委員会の議事録を作成するとしていますが、その際も発言者名を明記してください。
教育委員も選定委員も市民の負託を受けて選ばれ、会議への出席には公費が支払われています。発言は公表されることを前提に責任をもっておこなうべきと考えます。
■藤井寺市長に対して
︵1︶﹁第三者委員会﹂でこの2名の教育委員の問題を調査解明するよう要請してください。
︵2︶﹁第三者委員会﹂において教育委員の汚職が明らかとなれば、速やかに議会での罷免手続きをとってください。
質問内容
■ 大日本図書の﹁調査報告書﹂で指摘された以下の点について藤井寺市教育委員会として﹁見解﹂を明らかにしてください。
︵1︶報道によれば、﹁調査報告書﹂で指摘を受けた教育委員と調査員は﹁接待を受けた﹂と申し出ていません。2名の教育委員と調査員への聞き取り調査などはおこなったのかどうか。2名の教育委員と調査員に関する指摘は事実であるかどうか明らかにしてください。現時点で把握している事実関係を全て明らかにしてください。
︵2︶﹁調査報告書﹂で指摘を受けた教育委員と調査員は、どのような情報︵教科書採択に関わる︶を大日本図書側に流したのか、その内容の全てを明らかにしてください。
︵3︶﹁調査報告書﹂P18には、教育長の教科書採択方針に関する発言について西留元校長と教育部長が会食したことが指摘されています。教科書採択の公正性の観点から不適切であると考えるかどうか、明らかにしてください。
︵4︶﹁調査報告書﹂P23では、西留元校長がG氏を理科の調査員に選任するように教育委員会に助言し、了承されたと指摘しています。このような調査員の選び方について教科書採択の公正性の観点から不適切であると考えるかどうか、明らかにしてください。
︵5︶﹁調査報告書﹂P28では、2020 年7月7日、西留元校長︵当時選定委員︶が選定委員会のまさに審議中に、大日本図書社員に自分が大日本図書を評価する発言をしたことや、他の選定委員の第日本図書の評価、検討結果などを伝え、食事の接待を求めていたことが指摘されています。これは教科書採択の公正性の観点から不適切であると考えるかどうか、明らかにしてください。
︵6︶﹁調査報告書﹂では、﹁関係者﹂として市教委側の人物として、西留元校長、2名の教育委員、3名の調査員を対象としています。教科書採択を巡って大日本図書と教育委員会、校長、教員等の採択関係者との接触はこの6名だけなのかどうか、明らかにしてください。
以上