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- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488451127
感想・レビュー・書評
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超★5小鳩君と小山内さんが小市民を決めた苦い思い出、二人の未来は #冬期限定ボンボンショコラ事件 ■あらすじ 高校三年生の冬、小鳩君と小山内さんが帰宅途中にひき逃げにあってしまう。小山内さんに怪我はなかったが、小鳩君は病院に搬送され、入院生活を送ることになってしまったのだ。小山内さんは犯人を捜すべく奔走する。 一方入院中の小鳩君は、中学時代に同じ場所でおきた同級生のひき逃げ事件を回想していて… ■きっと読みたくなるレビュー 本作単品で超★5、小市民シリーズ全部とおして鬼★5 青春ミステリーの完全体ですね、参りました… もうすごかった。 ●はじめに 青春ミステリーっていうと、未成年の学生が事件の捜査に関わる物語なんてリアリティがないよ、という批判を言われることがある。個人的には所詮エンタメでしょ、楽しければいいじゃんと思っているのですが、人によっては受け入れがたいんです。お子様も読む本だし。 たしかに現実の世界であれば、捜査を妨害してしまったり、犯人から害悪を受けたり、関係者に様々悪影響がでる可能性が高い。そもそも個人が警察組織よりも先に事件解決できるはずもなく、リスクを取るだけとって手間と時間を無駄にするのが関の山。 このアンチテーゼを背景に描かれるのが、一連の小市民シリーズなんです。最終話を迎えた本作で、どういった結末を迎え、どんな回答を提示してくれるのでしょうか… ●ほろ苦い青春小説 本作では二つのひき逃げ事件についてストーリーが展開される。まず小鳩君のひき逃げ事件は、復讐心に燃える小山内さんが捜査を進め、小鳩君へのメッセージという形で導かれてゆく。それに並行して、三年前の中学時代日坂君に起こった事件を回想していく流れ。 中学時代の事件が物語の主軸なんですが、彼らがその後小市民として生きていくことになったきっかけがありました。まだ幼い二人は真面目で可愛いんだけど、やっぱりまだ子供。何が正しいのか、そしてそれは誰のための意思なのか。幼稚な正義は、他人を追い込み、傷つけ、そして自分自身にも不幸をもたらしてしまう。読めば読むほどビタ―なチョコレートを食べているようで、ほろ苦さが広がってくるんです。 でも、多少行き過ぎた行動はあったかもしれないけど、みんな一生懸命で気持ちわかるじゃん… 若いときはどうしても視野が狭くなるもので、これらの経験を学びにして明るいこれからを歩いてほしいと願ったのです。 ●練りに練られた謎解き 中学時代のひき逃げ事件は、少年少女の冒険小説ともいえる内容でエンタメ要素がしっかりしてる。多少長めの筋運びなんですが、プロットが理解しやすく、読み手に負担をかけさせません。後半、切り口が変わってくるのですが、事件の背景や犯人は全く煙に巻かれる。私の想像力では見抜けませんでしたね。 そして小鳩君の事件、もうあまりページもないけどもと思っていたら…驚きの急転直下。あっという間に思いもよらない真相が明るみになり、しかもこれまでの事柄が収束していくんですよ。 明かされてみると、どちらの事件もなるべくしてなった事件。ストーリーの組み立てのうまさには圧巻でしたね。 ●小市民たちのこれから シリーズものって、基本同じパッケージで新しい事件に取り組むのが一般的です。そこに時折キャラを追加したり、関係性を変化させたりする程度ではないでしょうか。 本シリーズの恐ろしいのは、全巻同じテーマにも関わらず、アプローチや人間関係の深度が全然違うんです。 春‥連作短編、小市民たちの日常 マカロン短編‥短編、新キャラ後輩ちゃん 夏‥連作短編、二人のXX︵※ネタバレ懸念のため伏字︶ 秋‥長編、二人のXX︵※ネタバレ懸念のため伏字︶ 冬‥長編、中学時代の出会い回想、そして未来へ… 春、夏、秋、マカロン短編、冬、それぞれの話で小市民メソッドへの強弱が違うし、二人の距離感も変化していく。時系が経過するごとに、この二人にしか理解できない価値観も深まっていくんですよね。 さて、これから二人はどうなるのだろうか… どこか遠くの街の喫茶店、大学生の男女が向き合って座っている。小山内さんは甘味に浸っていて、小鳩君は甘味以外の別のことを考えながらケーキをつついている。未来の二人の姿が、目に浮かんできたのです。 ■ぜっさん推しポイント 悩み多き若者たちの成長の姿が眩しすぎる。コレ。 失敗して、反省して、努力して、その経過の中でお互いの良いところも悪いところも理解して… そして感謝の気持ちを持ち続けられる関係性を築いてゆく。 自分の考えや欲望があるのはわかるけど、その人がいるから自分が救われることもある。人が幸せになるって、こういうことだと思うわ。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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遂に終わってしまった寂しさ。 相変わらず、学園探偵ものだと油断していたら最後の最後で思ったより重い話が待っていた。 今作、小鳩くんはずっと入院中。 入院生活である現在と、入院のきっかけとなった事故に似ている3年前の事件当時のやりとりとを、いったりきたりする。 3年前の事件こそ、小鳩くんと小佐内さんが知り合うきっかけとなった事件であり、過去作で小鳩くんが後悔してずっと根に持っていると語る事件であり、小市民を目指すきっかけとなった事件である。 堂島の出番が少なかったのが残念。 小佐内さんの見舞いに持ってきたものが、狼のぬいぐるみ、ボンボンショコラ、薔薇の花などで、小市民シリーズを知る人間に対して同じことを私もいつかしてみたい。
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小市民を目指す小鳩くんに降りかかる事件を描いた本。テンポ良く話が進んでいくので、非常に読みやすかった。 夏からテレビアニメ化もするらしいので、そちらも楽しみです。 本屋特典でイラストカードが挟まっていたのが嬉しかった。栞として使っていきたい。
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小市民 春夏秋冬シリーズのラスト ブクログのお勧めで購入しましたが、 シリーズものと知り1作目から読まなければと しばらくお預け状態でしたが、 ようやく本書まで辿り着きました。 うん。 春から順番に読んで正解。 本書単独の評価ではなく、 シリーズ最終回として⭐︎5つ 何故、小市民を目指すことになったか 本書で明らかに。 また、これまでとは違い、 本人がクルマに轢かれて入院するという だいぶハードな展開から始まります。 ほぼ病院のベッドの上で話が進み、 3年前の回想も交えて轢き逃げ犯を推理していく。 お勧めですが、 やはり春から順番に読んで欲しい。 ﹁巴里マカロン〜﹂という短編もあるということで ポチりました
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なんとほろ苦い……。 こんなにもほろ苦いシリーズだったっけ? 小市民シリーズを初めて手に取ったのは2009年の2月、13時間の空の旅のお供にするためだった。 時が流れすぎてこれまでの3作を詳細には思い出せないけれど、もう少し飄々としていた気がする。 本作を読んで、こんなことがあったなら小市民を目指さざるを得なかったであろうと納得。 けれどまたもう少し飄々とした二人が見たい。 米澤先生、大学生シリーズも書いてください。
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小市民シリーズ最新作、一作目は何年前だったかな。前作からもだいぶ空いているんじゃないかな。 序盤から重たい展開、もっと日常の謎的な軽い話じゃなかったっけ? 小鳩くんの人生狂わすほどの大事件、三年前の事件とどうリンクしていくのか、中学の頃の二人の回想と交差していくのが、ややこしくならず気持ちよく進められる。 高校生でも大人からあんなに正面から悪意をぶつけられたら怖いだろうな。トラウマ級のダメージを残しそうだ。 非を認めるとこは認めつつも、立ち向かった小鳩くん立派です。 春夏秋冬揃ってしまったのでこれで終わりなんだろうけど、久しぶりに二人に会ってしまったらやはり惜しく寂しいな。
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もう店頭に並んでるという情報を受けて、急いで購入。相変わらず構成がうまい。2人の始まりのエピソードと高校時代最後となるだろう事件が同時進行していく。手のひらに乗せられるように片方の事件に目付けをしていたら、もう片方の事件が解決していて、魔法にかけられたような気分になった。当たり前のことではあるのだが、タイトルのボンボンショコラはちゃんとキーとなるスイーツなのだ。それに気付いたのは読み終わって表紙を眺めているときだったが。
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轢き逃げ事件をきっかけに中学時代の同様の事件を振り返り、過去と現在を行き来しつつ真相に迫っていく。高校生活の小市民時代が終わってしまうが、小山内さんの思いを受け、小鳩はどんな進路を目指すのか見てみたいと思う。
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遂に冬が来た!
嬉しくも寂しい小市民の高校生活が終わったのかな。
続編期待したいけど、高校生で終わってもらいたい気持ちも。 -
米澤穂信先生の小市民シリーズの本編最終巻。 本編としては、秋期限定栗きんとん事件︵下︶が2009年の発売ですから、巴里マカロンの謎を除くと15年ぶりのシリーズ。 内容は小市民シリーズの原点でもあり、小市民の最新でもあるという、最後に相応しい作品だったなと思います。 いきなり轢き逃げされて病院送りにされる小鳩くん。 彼が病院で目覚めて思い出したのは、小佐内さんと互恵関係を結ぶことになった中学3年生の時に起きたクラスメートが巻きこまれた轢逃げ事件。 その轢逃げ事件は小鳩くんが轢逃げに遭った道で起きた。 果たして、3年前の事件と小鳩くんに起きた事件はリンクするのか? というお話。 まず、本作を書店で手に取った時は ﹁今まで生きてて良かったぁ﹂ です。 私が、本作の小市民シリーズに出会ったのは2007年。 ﹃クドリャフカの順番﹄を読んで古典部シリーズなど米澤先生の作品を読みはじめた頃です。 当時読んだ時になんでもない日常の謎に関する事件の裏にとんでもない事件が潜んでいるという作品︵だったと思う︶で、薄いのに凄い作品だよなぁと思って読み続けておりました。 そして、順調にシリーズを重ねていたはずの小市民シリーズ。 ようやく最終巻を読めると書店で手に取った時の私想いは言葉ではとても言い表すことができません。 そんな本作品、実は凄いのが、時代を踏襲しているということ。 本作品が発売されたのは2004年。 この時代、私は大学生だったのですが、その時はスマホなんてないですし、インターネット環境はひかりみたいな高速通信なんてなかった。 それをしっかりと踏襲した上で事件があって、小鳩くんや小佐内さんの行動もその時代に合っています。 これ、もちろん作者の中でもともとの構想はあるんでしょうが、今の感覚で書いてると思うので、大分苦労したんじゃないかと思います。 そして、出来上がった最終巻は400ページ超えで、本当に小市民シリーズなのか?と思う分厚さに、明らかに発刊当時よりもレベルアップしている表現力。 極上のタイトルはスイーツでも中身はビターな小市民シリーズの原点にして完結がここにある。 米澤先生、ごちそうさまでした。