【PC遠隔操作事件】第1回公判前整理手続きで、弁護人の怒り炸裂
主任弁護人の佐藤博史弁護士の怒りが炸裂した。まずは検察官に。そして報道陣に対して。5月22日の第1回公判前整理手続きが終わった後の記者会見の席上である。検察側が提出した証明予定記載事実に事件と被告人のつながりについてまったく記載されていないという﹁異常なもの﹂︵佐藤弁護士︶だった。唯一の警察官調書が開示されたものの、肝心の部分は黒塗り。弁護側の公訴棄却の申し立てはほとんど報じられず、また雲取山山頂から今月になってメッセージ入りの記憶媒体が発見されたという警察情報はそれなりの大きさで伝えられた。この警察情報を無批判に報じたマスメディアについて、佐藤弁護士は﹁警察の御用聞きはやめてもらいたい!﹂と一喝した。
![検察とマスメディアの批判をする佐藤弁護士]()
検察とマスメディアの批判をする佐藤弁護士
﹁3月2日の時点で、片山さんが犯人だという確証があるなら、その証拠を出すべきだ。﹃見込み逮捕﹄というのはあるが、本件は﹃見込み起訴﹄であり、︵犯人であるとの証拠が見つかっていないうちの︶見切り発車での起訴ではないか。︵証拠が見つからないので︶検察官は公判前整理手続きを引き延ばしのために使っている。こんなことは許されない。裁判所はただちに公判前整理手続きを打ち切って、第1回公判期日を指定すべきだ﹂
さらに弁護側は、検察の対応は、﹁公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利﹂を保障している憲法にも違反する、と主張。
検察側は、片山氏が﹁どこで﹂﹁どのPCを使って﹂犯行に及んだのかも明らかにしていない。起訴状では、﹁東京都内又はその周辺﹂﹁インターネットに接続したコンピュータから﹂としか書かれていない。これについて、﹁証明予定事実記載書﹂には何も書かれていなかった。弁護側は﹁被告人の防御権を著しく侵害している﹂として、裁判所にただちに公訴棄却の判断をするよう求めた。これについて、検察側は1週間以内に意見を書面で提出することとなった。
![木谷明弁護士]()
木谷明弁護士
これに続いて、元東京高裁判事で現在は片山氏の弁護人の木谷明弁護士が、自身が裁判官中に経験した再審請求事件の話を例に、後から﹁発見﹂された証拠の危うさを説いた。
それは、かの有名な白鳥事件。物証がほとんどなく、被害者を射殺した凶器の銃も発見されなかった。警察は、﹁被告人らが武装蜂起をするために峠で射撃訓練をした﹂とみて、何度も捜索を行ったが、それらしい証拠は見つからず仕舞い。ところが、2年後になって、銃弾が﹁発見﹂され、その線条痕が被害者の体内の弾と一致したとの鑑定を元に有罪判決が下された。しかし、﹁発見﹂された銃弾は2年間も山に放置されていたとは思えないほど新しく、その鑑定も後に捏造された疑いが出た。
死刑判決が確定して現在再審請求中の袴田事件でも、有罪の決め手の1つである血染めの着衣が、味噌工場のタンクから﹁発見﹂されたのは、事件から1年2か月も経ってから。この着衣は、袴田巌氏のもので犯行時に着ていた、とされたが、サイズがはるかに小さく、新たに行われた鑑定では、血痕から被害者のDNAは検出されなかった。
やはり再審請求中の狭山事件でも、石川一雄氏の自宅の2回にわたる家宅捜索では見つからなかった被害者の万年筆が、3回目の捜索で勝手口の鴨居から﹁発見﹂され、有罪証拠に使われた。