中国のトップIT企業が大規模言語モデル(LLM)の料金を引き下げている。ついには一部の製品を無料提供するところも出てきた。激しい価格競争を繰り広げて、AIアプリケーションの巨大市場での勝者を目指すものだが、その特殊な環境から欧米と違う中国独自の道を進みそうだ。
値下げ率97%
中国クラウド大手のAlibabaは5月21日、同社のLLM﹁Qwen︵通義千問︶﹂シリーズの料金を大幅に引き下げると発表した。対象は9種類で、最大1000万トークンの長文入力をサポートする高性能モデルQwen-longは、1000トークン当たり0.0005元︵約0.011円︶へと97%値下げした。中国共産党の英字紙China Dailyによると、Qwen-longはOpenAIのGPT-4モデルと同等の性能を持ち、﹁価格はGPT-4の400分の1﹂︵Alibaba︶としているという。
﹁今回の値下げの目的は、国内市場でAIモデルのアプリケーションを加速することにある﹂。Alibaba Cloud Intelligenceパブリッククラウドビジネス・プレジデントのLiu Weiguang氏は、こう説明している。
その発表のわずか数時間後、今度は、Ernie︵文心一言︶を擁する検索トップのBaiduが今年初めに発表したばかりのLLM、Ernie SpeedとErnie Liteを即日無料提供すると発表した。同社は企業向けでも2023年11月にERNIE Botベースのプラットフォーム﹁文心前帆﹂を投入している有力プレーヤーだ。
このめまぐるしい発表にはきっかけがあった。前の週の5月15日、TikTokの親会社Bytedanceが、最新のLLM﹁Doubao﹂︵豆包︶を発表。料金が﹁業界平均の99.3%安い﹂とアピールしたのだ。香港の英字紙South China Morning Postによると、例えば、Doubao General Model Pro-32kバージョンの推論入力価格は、同等の類似モデルの1000トークンあたり0.12元︵約2.6円︶に対し、1000トークンあたり0.0008元︵約0.017円︶と設定したという。
中国では大手が次々にLLMの提供価格の極端な値下げ、あるいは無料化に踏み切っている。その1年前から、大手ベンダーがクラウドの料金を半額にするなどの激しい値下げ合戦が展開されており、LLMにもその波が押し寄せた格好だ。
新しいモデルを投入した際、旧世代モデルをバーゲンするのはよくある話だ。OpenAIなど米国勢もトークン料金を新モデルの登場ごとに引き下げている。しかし、中国ベンダーの勢いは、それをはるかに上回っている。