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翔泳社の本(AD)

「自分はわかるからOK」というオレオレ表記が開発を遅らせ、プロダクトの評価まで下げてしまう

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 誰しも経験のある開発現場での失敗。うっかりミスも重大なトラブルも避けたいところですが、そうした失敗からしか学べない教訓もあります。ですが、実際に失敗はしたくないという方には、『ソフトウェア開発現場の「失敗」集めてみた。』(翔泳社)がおすすめです。架空のプロジェクトが進む中で、様々な失敗が登場する本書。今回はその中からユーザーを迷わす表記の揺らぎ、「オレオレ表記」のエピソードを紹介します。

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ユーザーを迷わす「オレオレ表記」──自分のルールで表記を決める

登場人物

ハル
主人公。高度な技術力と知識を持つ技術者で、アームチェッカープロジェクト(※)の開発リーダー。
コーハイ
チームの若手技術者で、ハルの後輩。ソフトウェア工学の知識が豊富だが、ミスをすることも多い。
ヒンシツ
製品の品質保証担当者。製品を世に出す最後の審判者としてのプライドがある。


オレオレ表記
 UI1ExitCancelDoneOK


 α
ヒンシツ
 OK
コーハイ
押してダメなボタンなんてないっスよ。OKボタン押すと閉じるだけっスよ?
ヒンシツ
でも警告が出ているから、OKじゃないわよ。こっちのエラーダイアログにはExitってボタンになっているし。これ押したらアプリ終わっちゃうの?
コーハイ
いやいや、終わらないっス。Exitボタンでダイアログが閉じるだけっス。
ヒンシツ
表記が異なるのに何でどっちもダイアログ閉じるのよ! 閉じるならCloseじゃないの? しかも警告とかエラー出ているじゃない。ほんとに閉じていいの?
コーハイ
いやそこはハケンさんとシンジンさんとで手分けしたところで……(もうこのぐらいどっちでもいいんじゃない? わかるっしょ)

 
ハル

 12使


 UI使

 
図 ExitとDone
 ExitDone

 ExitDoneExitMeasurement ModeOFFDoneMeasurement ModeON

 

 OKDoneOKOK

 CancelSubmit

 NextUI1
図 左にあるNext
 Next

 PCCancelDelete

 1
図 ボタンがない
 

 ×CautionClose
ハル
こんな実装は普通しないよね……ここまで全部指示しないといけないのかなあ。でも常識っていうのは人によって違うし、確かに指示がなければ、できるだけ楽な方法で実装するのもわかるしなあ。

ちょっとしたストレスがソフトの評価を大きく下げる

 これらの例はとっても小さい話ではあるのですが、こういった細かいところがきちんとできているかどうかでソフトウェアの使いやすさは左右されます。人間ほんのちょっとしたことでも自分の思うようにならないと、ついイラっとしてしまうもの。それはソフトウェアのユーザーも同様です。

 今回の失敗ポイントは用語とその使い方を規定しなかったことです。用語を実装者任せにしたために、表記に揺らぎが出て、その結果ユーザーを迷わすソフトになったのです。

 ソフトウェア全体を通して用語が統一されている、誤解を生まないようなボタンの表記になっている、常にCancelボタンがあって操作前の状態に戻れるなど、操作に迷いがないように些細なことがしっかりと考えられたソフトウェアは、安心して使うことができます。

用語集を整備する

 まず、用語集を整備することが肝心です。このソフトを通じて使う用語はこれと決めましょう。そしてその画面で何をユーザーに促すのか、よく考えて用語を用いましょう。この用語集、実はそのドメインを表す知識となります。一般的な用語でもこのドメインではこう使う、また特殊な用語であってもほかの言葉では言い表せられないため、あえて使う。そういった知識が積み重なった重要なデータベースなのです。

 用語集はソフトを作るときだけではなく、ドキュメント類を作ったり翻訳するときにも役立ちますし、チーム全員のドメイン知識を底上げするための教育にも使えます。用語集は社内Wikiを使って、誰でも閲覧編集できるようにするといいでしょう。

ユーザビリティを点検する

 また実装する前にプロトタイプ(手書きのUIモックみたいなものでOKです)を作り、デザイナーの方や、品質保証の方と一緒にユーザビリティの点検を行うことが効果的です。ドメイン知識が少なく、一般のユーザー視点で評価していただける方は特に重要です。作る側の「当たり前」が実は当たり前ではなく、ただユーザーに戸惑いを与えるような、わけのわからないUIになっているかもしれません。ぜひ早めに協力いただくようにしましょう。

 こうしてユーザビリティに関して検討した結果を、UI仕様としてまとめておけば、使用性に関する問題が減ると共に、再利用によってソフトウェア間の統一性も取ることができます。

まとめ

失敗:用語を統一せず実装者に任せたため、使いにくいソフトになった

回避策1:用語集を作る
回避策2:デザイン、品質保証の部署とユーザビリティの点検を行い、UI仕様としてまとめる

特別抜粋版をダウンロードする

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著者:出石聡史
発売日:2024年6月12日(水)
定価:2,420円(本体2,200円+税10%)

本書について

本書は、開発現場で起こる様々な「失敗事例」を面白おかしいエピソード形式で紹介しながら、それらの失敗を回避する方法を解説する書籍です。

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この記事の著者

  

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稿


出石 聡史(デイシ サトシ)

2023年3月まで、コニカミノルタ株式会社センシング事業本部の開発部にてソフトウェアリーダー(管理職)を担当。ほぼすべてのソフトウェアにかかわり、ソフトウェア開発の各ゲートにおける承認責任者として全プロジェクトの進捗をサポートした。各ゲートにおいては詳細設計や実装だけではなく、システム全体のアーキテ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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