ZAKZAKが藤田紘一郎による﹁食べ物も血液型別に相性がある﹂という話を取り上げている。
■食べ物にもあった!?血液型相性…合わないと体に負担︵ZAKZAK︶*1
﹁人類の最初はO型で狩猟民族だった。だが、その後、農耕民族の一部からA型が生まれ、遊牧民族の一部からB型が生まれ、彼らが混じり合った結果、AB型が生まれたと考えられる。分類的にはA型はB型に対する抗体を持ち、B型はその逆。O型はそのどちらの抗体も持ち、反対にAB型は抗体は形成しない。この抗体の有無が、食べ物の“相性”も決める﹂と話すのは、東京医科歯科大学名誉教授で人間総合科学大学の藤田紘一郎教授。
血液型ダイエットの話をちょっぴり膨らました模様。血液型ダイエットとは、血液型別に先祖が異なり、ゆえに体質に合う食べ物が異なるという主張である。たとえば、O型の祖先は狩猟民族であるから肉を食べると良い、というもの。科学的な根拠はない*2。﹁抗体の有無が食べ物の相性を決める﹂という話は新しいと思うが、やっぱり科学的根拠はない。
﹁A型の人が、B型物質を含む食品ばかり食べていると、体内の抗B抗体が消費されていく。つまり、無用なエネルギーが使われることになる。それを逆手に取れば、ダイエットに結びつく可能性がある﹂と藤田教授。 例えば夏バテ防止のウナギや豚肉は、A型の血液型物質を多く含み、A型人にとっては疲労回復になる。 ところが、B型の人が、これらを食べると、A型物質に対する抗体が増産され、疲労回復どころか、免疫血清学的には抗体を作ることで無用なエネルギーの消費につながってしまうのだ。この消費が重なれば、痩せられるのではないか、というのが藤田教授の考えだ。
よしんば﹁体が抗体を作ろうとエネルギーを消費してしまう﹂ことが正しいと仮定しても、消費されるエネルギー量は微々たるものである。ある個体が持つ抗体はきわめて多様であり︵でないと多様な病原微生物に対応できない︶、そのうちの抗A抗体の量などたかが知れている。そもそも食べ物由来の抗原は体内にはほとんど入らない。﹁無用なエネルギーの消費につながる﹂ほどの抗原抗体反応が起こるのあれば、危なくておちおちウナギも食べられない。血液型不適合輸血をされるようなものだ。 抗体の消費ではなく、消化・吸収の効率が血液型別に異なるというのならまだ分からないでもないが、きわめてたくさんある外来抗原のうち、ABO式血液型に関わる抗原のみが消化・吸収の効率に影響を与えるということは考えにくい。ABO式血液型以外にも、Rh式やMN式などの多くの種類の血液型がある。多型のある遺伝子となるとさらに多い。性格診断やらダイエットやら食べ物の相性やらの話は、﹁なぜABO式血液型だけが特別なの?﹂という疑問を持ちさえすれば、ABO式血液型の影響はあったとしてもきわめて小さいと判断できる。こうしたニセ科学にABO式血液型がよく利用される理由は、生物学的なものではなく、単にABO式血液型がよく知られている遺伝マーカーであるからに過ぎない。 ﹁藤田紘一郎はまともなことを言っているのにも関わらず、ZAKZAKが不正確に伝えた﹂という可能性は小さいと思う。かなり前から、藤田センセイは﹁あっち側のヒト﹂であった*3。﹁寄生虫に感染することがアレルギー疾患に予防的に働く﹂という説は、トンデモではないが、おそらく寄生虫が単独で効くことはない。﹁寄生虫を駆除してもアトピーは増えない﹂という研究がある*4。 藤田紘一郎は、ライナス・ポーリングやフレッド・ホイルのように、﹁最初はまともなこと言っていたけど、あっち側に行ってしまった﹂例なのかもしれない︵彼らと比較すると小物だが︶。いや、よく指摘されることだが、彼らは初めから﹁あっち側﹂におり、たまたま最初の頃に提唱していた仮説が正しかっただけなのかも。奇抜な説を100個唱えて、99個が外れても1個でも当たればOK。科学の進歩にはこういう人も必要なのだろう。
■食べ物にもあった!?血液型相性…合わないと体に負担︵ZAKZAK︶*1
﹁人類の最初はO型で狩猟民族だった。だが、その後、農耕民族の一部からA型が生まれ、遊牧民族の一部からB型が生まれ、彼らが混じり合った結果、AB型が生まれたと考えられる。分類的にはA型はB型に対する抗体を持ち、B型はその逆。O型はそのどちらの抗体も持ち、反対にAB型は抗体は形成しない。この抗体の有無が、食べ物の“相性”も決める﹂と話すのは、東京医科歯科大学名誉教授で人間総合科学大学の藤田紘一郎教授。
血液型ダイエットの話をちょっぴり膨らました模様。血液型ダイエットとは、血液型別に先祖が異なり、ゆえに体質に合う食べ物が異なるという主張である。たとえば、O型の祖先は狩猟民族であるから肉を食べると良い、というもの。科学的な根拠はない*2。﹁抗体の有無が食べ物の相性を決める﹂という話は新しいと思うが、やっぱり科学的根拠はない。
﹁A型の人が、B型物質を含む食品ばかり食べていると、体内の抗B抗体が消費されていく。つまり、無用なエネルギーが使われることになる。それを逆手に取れば、ダイエットに結びつく可能性がある﹂と藤田教授。 例えば夏バテ防止のウナギや豚肉は、A型の血液型物質を多く含み、A型人にとっては疲労回復になる。 ところが、B型の人が、これらを食べると、A型物質に対する抗体が増産され、疲労回復どころか、免疫血清学的には抗体を作ることで無用なエネルギーの消費につながってしまうのだ。この消費が重なれば、痩せられるのではないか、というのが藤田教授の考えだ。
よしんば﹁体が抗体を作ろうとエネルギーを消費してしまう﹂ことが正しいと仮定しても、消費されるエネルギー量は微々たるものである。ある個体が持つ抗体はきわめて多様であり︵でないと多様な病原微生物に対応できない︶、そのうちの抗A抗体の量などたかが知れている。そもそも食べ物由来の抗原は体内にはほとんど入らない。﹁無用なエネルギーの消費につながる﹂ほどの抗原抗体反応が起こるのあれば、危なくておちおちウナギも食べられない。血液型不適合輸血をされるようなものだ。 抗体の消費ではなく、消化・吸収の効率が血液型別に異なるというのならまだ分からないでもないが、きわめてたくさんある外来抗原のうち、ABO式血液型に関わる抗原のみが消化・吸収の効率に影響を与えるということは考えにくい。ABO式血液型以外にも、Rh式やMN式などの多くの種類の血液型がある。多型のある遺伝子となるとさらに多い。性格診断やらダイエットやら食べ物の相性やらの話は、﹁なぜABO式血液型だけが特別なの?﹂という疑問を持ちさえすれば、ABO式血液型の影響はあったとしてもきわめて小さいと判断できる。こうしたニセ科学にABO式血液型がよく利用される理由は、生物学的なものではなく、単にABO式血液型がよく知られている遺伝マーカーであるからに過ぎない。 ﹁藤田紘一郎はまともなことを言っているのにも関わらず、ZAKZAKが不正確に伝えた﹂という可能性は小さいと思う。かなり前から、藤田センセイは﹁あっち側のヒト﹂であった*3。﹁寄生虫に感染することがアレルギー疾患に予防的に働く﹂という説は、トンデモではないが、おそらく寄生虫が単独で効くことはない。﹁寄生虫を駆除してもアトピーは増えない﹂という研究がある*4。 藤田紘一郎は、ライナス・ポーリングやフレッド・ホイルのように、﹁最初はまともなこと言っていたけど、あっち側に行ってしまった﹂例なのかもしれない︵彼らと比較すると小物だが︶。いや、よく指摘されることだが、彼らは初めから﹁あっち側﹂におり、たまたま最初の頃に提唱していた仮説が正しかっただけなのかも。奇抜な説を100個唱えて、99個が外れても1個でも当たればOK。科学の進歩にはこういう人も必要なのだろう。
*1:URL:http://www.zakzak.co.jp/top/2008_07/t2008070128_all.html
*2:詳しくは■O型は肉を食え?血液型別ダイエットは根拠なしで論じた。
*4:■衛生仮説はガセネタではないを参照