セカンドライフ失速で転機を迎える仮想空間ビジネスの「現実」
﹁数百万円の投資を行ない、ミュージアムやショールームを作ったが、人が集まらなくて廃墟のようになっている﹂
﹁これまでの収入は初期投資額の10分の1程度。撤退した同業他社もいるが、満を持して参入しただけにどうしたものか……﹂
現在、セカンドライフに参入した企業の担当者は、口々にため息をついているという。
セカンドライフ︵Second Life︶とは、言わずと知れた﹁世界で最も有名な3D︵立体︶仮想空間﹂である。米国のリンデンラボ社が2003年に開始したこのサービスは、SNSやYouTubeなどの﹁ウェブ2.0的なツール﹂の一つとして、06年頃から利用者が急増、昨年7月には日本語版サービスも開始された。今や世界90カ国の人々が参加しており、アカウント登録者数は約1400万人に上る。
このセカンドライフ︵以下SL︶、平たく言えば、壮大なオンラインRPG︵ロールプレイングゲーム︶のようなもの。自分の分身であるアバター︵着せ替えなどが自由にできるネット上のキャラクター︶を作り、仮想空間内でSIM︵﹁島﹂と呼ばれる土地︶を購入して生活する。空間内にはショッピングモール、遊園地、銀行、個人の住居など、現実世界に存在するありとあらゆる場所があり、アバター同士が交流している。ただし、通常のRPGのように﹁ゴール﹂はない。
これがタダのゲームでない理由は、現実世界とリンクする﹁リアリティ﹂である。空間内では、自分で店を作って自由にビジネスができるのだ。﹁リンデンドル﹂という仮想通貨が流通しており、これは現実社会の米国ドルと換金も可能。現実さながらの﹁バーチャル社会﹂を楽しむことができる。
人が全く集まらない企業も
閑古鳥が鳴くセカンドライフ内の﹁島﹂
その経済効果に目を付け、SLには現実社会の企業や団体が流れ込んだ。仮想空間内で商品やサービスのプロモーション・販売を行ない、現実社会の利益に結びつけようとしたのだ。トヨタ自動車、日産自動車、ベンツなどの自動車メーカーから、富士通、マイクロソフト、ソフトバンクなどのIT企業、三越などの小売企業、果てはハーバード大学などの教育機関まで、国内外を問わず、その数は膨大だ。
ところが、しのぎを削っていた企業や団体の多くは、冒頭のように肩を落としている。そう、﹁人が集まらない﹂のだ。