ここでは私が実践している、ちょっと良いプログラマになるためのコツを紹介します。まるで﹁理想のプログラマ﹂のように仕事をするための簡単なアイデアです。チームでプログラミングするお仕事に就かれているみなさんが、このアイデアで昨日よりも気分よく過ごせるようになれば幸いです。
多くの達人が﹁理想のプログラマ﹂とはどういうものか、よいプログラマのあるべき姿、立ち振る舞いを説いてきました。おそらく、みなさんも達人たちが理想のプログラマについて書いた文章を読まれたのではないでしょうか。そして達人たちの示す理想のプログラマ像を想像してそんな人物になろうとしましたよね。みなさんは実際にそうなれたでしょうか。その振る舞いを実践するのはちょっと難しかったりしませんでしたか。
﹁理想のプログラマ﹂といった﹁理想の何か﹂になるために、本来の自分を変えて別な自分になる必要があります。しかし変身は痛みを伴うものです。本当に理想のプログラマになろうとすると、あなたの本来の性格や価値観、信条と衝突してしまうことも少なくないでしょう。私は本来﹁アーティスト﹂としてのプログラミングが大好きで、自己顕示欲を満たすために行動しています。あまり知られていない問題をちょっとおかしなやり方で解決して、自分の尊敬する人に自慢するためにプログラミングしたいのです。私は長い間﹁アーティスト﹂モードの自分と会社員モードの私のプログラミングを使い分けてきました。一時的に別のロールをこなしたり思考パターンを取り替えたりするときに﹁帽子をかぶる﹂と表現することがあります。私は﹁帽子﹂を使って本来の私と会社員の私のコンフリクトを回避してきました。この﹁帽子﹂の領域と時間を拡張して、いっそのこと﹁理想のプログラマ﹂を演じてしまうというのはどうでしょう。理想のプログラマを体験するロールプレイングゲームです。
会社でプログラミングしているあなたを例に考えてみましょう。あなたはお仕事中、9時から18時までの間だけあなたのチームの﹁理想のプログラマ﹂の役を演じます。自分の技量を超えたプログラミングを演技することはできませんが、より重要な立ち振る舞いについてなら演技できそうです。あなたの想像する﹁理想のプログラマ﹂だったら今この局面でどう振る舞うだろう、この問題に気づいたらどうするだろう、同僚のあの態度に対してどう発言するだろうと想像しながら﹁理想のプログラマ﹂を演じるわけです。本来のあなたなら気付いても放置していた問題も、理想のプログラマ役のあなたは見逃すこと無く適切に対応することでしょう。勤務時間中は理想のプログラマのふりをする。それがあなたの仕事なのです。
ところで理想のプログラマ像はどこからやってくるのでしょうか。出発点は本に書いてあるような人物かもしれません。しかし、あなたが職場で演じなくてはならないのは﹁あなたのチームの﹂理想のプログラマです。﹁あなたのチームの理想のプログラマ﹂はあなたのチームで作らなくてはなりません。チームの価値観はチーム内でおこるさまざまなイベントとそれに対するメンバーの反応、つまりたくさんの状況とよい判断の集合で作られます。メンバー各人︵あなたもその一人︶がその判断が良い/悪い/気に入らないなど一つ一つに対しフィードバックを行うことで、徐々にチームの価値観が醸成されます。
つまりチームへの関心がチームの価値観を作り、そしてあなたのチームの理想のプログラマ像をあなたの心に浮かび上がらせるのです。仕事だから仕方なく﹁チームにフィードバックする﹂と思うと気も楽ですね。
お仕事中は淡々と理想のプログラマを演じてみましょう。本来の自分を変えるより、ずっと簡単です。迷ったら仕事だと思ってあきらめて演じてください。だって、仕事でしょ?
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