〈コラム〉パブリック・ライセンスについて
どこまでの範囲なら無断で利用して良いかの意思表示を、パブリック・ライセンスといいます。ただ、利用条件をいちいちこと細かに文章で説明するのは、著作権者側だけでなく、利用者にも理解や解釈する手間がかかります。そこで、ある程度似ている許諾範囲を標準化し、わかりやすく提示できるツールが用意されるようになりました。
代表的なパブリック・ライセンスとしては﹃クリエイティブ・コモンズ・ライセンス﹄が挙げられます。これは、国際的非営利組織のクリエイティブ・コモンズが推進しているプロジェクトです。表示︵BY︶、非営利︵NC︶、改変禁止︵ND︶、継承︵SA︶の4つの条件を組み合わせた6種類のライセンスを用意しています。
前項で例に挙げた初音ミクのイラストはピアプロ・キャラクター・ライセンスとともに、クリエイティブ・コモンズ 表示 非営利ライセンス︵CC BY-NC︶でも提供されており、いわば利用者は二重に許可を得ている形です。
日本では二次創作︵第5章で詳しく説明します︶の同人誌が盛んですが、実はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスでは二次創作︵イチから自分の手で描く︶は許可するけど、デッドコピー︵単なる複製︶は禁止、という条件での意思表示ができません。そこで代替案として、漫画家の赤松健さんが提唱し、コモンスフィア︵クリエイティブ・コモンズの日本における活動母体︶が策定した﹃同人マーク・ライセンス﹄が試験運用中です。
また、文化庁が策定した﹃自由利用マーク﹄というパブリック・ライセンスもあります。障害者や学校教育のための非営利目的での利用や、プリントアウト、コピー、無料配布を自由に行ってもいいという意思表示ができます。
ニコニコ動画には、﹃ニコニ・コモンズ﹄というパブリック・ライセンスがあります。閲覧数などから算出されたスコアに応じて奨励金が支払われる﹃クリエイター奨励プログラム﹄では、親作品として投稿した動画や画像などはニコニコ動画内での二次創作を許諾したことになります。例えば、任天堂のゲームタイトルを親作品として登録することが可能になっており、ゲーム実況動画などを公認で投稿でき、奨励金まで受け取れる形になっています。ユニークなのは、二次創作︵子作品︶のスコアも親作品に加算される点です。二次創作の連鎖を﹃コンテンツツリー﹄として視覚化している点も、面白いところです。
次回予告
今回の続きとして次回は“ネットで拾った画像は利用できるのか”というテーマを解説する。