CESA Developers Conference 2009現地レポート
コナミがアップデート配信のために投入したP2P技術の秘密を公開
「BitTorrent」を活用して配信コストを大幅に削減。ユニークな取り組みの実態を語る
■ 速くて確実でカネもかからない、そんな都合の良いデータ配信方法が世の中には存在する!
コナミデジタルエンタテインメントの佐藤良氏。やわらかな語り口で自身の取り組みを紹介した |
セッションのテーマは「データ配信」。ピーク時に回線がパンクして、なかなかダウンロードできなかったという経験をお持ちの読者も多いはずだ。それを解決する手法があるという |
データ配信方法の比較。WEBサーバーをデータセンターに設置する方法では、ピーク時の予想帯域が大きく外れてしまうと企業側、ユーザー側ともに悲惨なことになりがち。CDNを利用する方法ではややコストが削減でき、それと同時にピーク時でも一定のクオリティが期待できる。P2Pではさらにコストが削減でき、極端なアクセス集中が発生しても対応できる可能性がある |
■ 「BitTorrent」プロトコルによるデータ配信の仕組み
BitTorrentのシステム概念図。「トラッカー」、「シーダー」、「リーチャー」の3者がネットワークを構成する |
佐藤氏はBitTorrentの実装のひとつを選択し、プレイステーション 3に移植した。データセンターに用意するサーバーマシンは提供地域ごとにバックアップを含めて4台づつとなり、かなり小規模な設備で事足りている |
■ 「MGO」でBitTorrentによるデータ配信を実戦投入! その結果は?
「MGO」でアップデートが配信された際、ユーザーが通信方法を選択する画面 |
パッチはバージョン毎に細かく差分をつくり、サイズができるだけ小さくなるよう工夫されている |
パッチデータのダウンロードが完了した時点で「シーダー」になり、他の「リーチャー」に対して接続の受付け、データの送信を行なう。パッチのインストールが終了した時点で「シーダー」を完了する仕組みなので、それほど長い時間送信を続けるわけではないようだ |
「MGO」におけるパッチ配信の統計データ。ピーク時の転送量は全体としてものすごいビットレートとなっているが、BitTorrentの仕組みで全体に負荷が分散されることにより、コナミ側がデータセンターに設置したオリジナルの「シーダー」による転送量は緩やかな伸びになっている。その「オフロード率」はパッチの公開期間全体を通して83%を達成 |
■ 80%以上のオフロード率を達成。
配信コストの大幅な削減が期待できるが、改善の余地も
βテスト時におけるプロトコルの選択割合は、P2PとHTTPでおよそ半々 |
ユーザー側のダウンロード平均速度は1.3Mbpsに達した。なかなか快適な速度だが、佐藤氏は「もっと速度が出せれば」と語っていた |
日本では理想に近い効果を発揮したP2Pによるデータ配信だが、やはりユーザー側にそれなりの回線速度が求められるため、ADSLが中心の北米、欧州ではあまり速度が出ないという問題に直面している。佐藤氏はいくつかの改善策を提案していたが、インフラの整備が進むことで自然と解消されてくる部分も大きくなりそうだ |
http://www.cesa.or.jp/
□「CEDEC 2009」のホームページ
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(2009年 9月 4日)