今回も﹁誤認逮捕﹂だったら、警察の言うことなど誰も信用しなくなる---。逮捕直後から、巷間こう囁かれてきた。はたして﹁ネコ男﹂は5人目の被害者か、それとも・・・・・・。容疑者の肉声を公開しよう。
﹁証拠があるなら認めます﹂
﹁1月3日に江の島に行ったことは事実です。午後1時にバイクで到着し、神社にお参りした後、山頂に辿り着きました。午後2時30分頃だと思います。お正月でしたので、たくさんの人がいて、大道芸のパフォーマンスが行われていた。僕は4~6匹のネコを可愛がって、写真は十数枚、当時使っていた富士通製のスマホ(スマートフォン)で撮影しました。
真犯人が送ったとされるメールに添付されていた写真のネコは知っています。江の島では人懐っこいネコとして有名ですから。江の島に行った3日にそのネコを撫でて、写真を撮ったかもしれない。明確に覚えているわけではないんです。ただし、そのときに僕が首輪をつけたなんてことはありえません。
僕がネコに首輪をつけている画像があるなどと報道されたそうですが、たしかにそんな画像があるなら僕が真犯人である﹃決定的な証拠﹄となりうるでしょう。ですが、絶対にありえない。あるとすれば、それはでっち上げ、合成写真です﹂
2月10日、﹁PCなりすまし事件﹂の容疑者として逮捕された片山祐輔さん(30歳)は、このように一貫して容疑を否認している。
2月17日以降は取り調べの録音・録画、いわゆる﹁取り調べの可視化﹂を警察と検察が行わなければ、取り調べに応じない方針に転じた。
警察が片山さんを﹁真犯人﹂だと確信しているなら、取り調べの様子を可視化し、決定的証拠を突きつければよい。しかし、警察・検察はなぜそれを嫌がるのか。
そもそも、一連の﹁PCなりすまし事件﹂では、片山さん以前に4人の﹁誤認逮捕﹂が行われ、うち2人がやってもいない罪を﹁自白﹂するという信じがたい事態が生じた。
今回も同様のことが起こりかねないとの危惧から、取り調べの可視化を弁護人の佐藤博史弁護士らが警察と検察に申し入れたのだった。
ところが、警察は頑なにこの申し入れに応じようとしない。佐藤弁護士がこう指摘する。
﹁取り調べの可視化は、実は被疑者にとってもデメリットのある﹃諸刃の剣﹄なんです。取調官が証拠を握っていて被疑者を問い詰めたとき、答えられなくて、しどろもどろになれば、その様子がありのまま記録され、証拠として採用される可能性があるのですから。
しかし今回、私たちは可視化された取り調べであれば、被疑者は黙秘しないことも合わせて申し入れています。それでも、捜査当局が可視化に応じないということは、それだけ逮捕の根拠が薄弱だからではないでしょうか﹂
本誌は、佐藤弁護士への取材などを通じて、いま片山さんが何を語っているのか、その肉声を掴んだ。これを読めば、警察が可視化を渋る理由も浮かび上がってくる。
﹁逮捕後3日目の取り調べだったでしょうか。警察官から﹃3枚の写真﹄を見せられました。それまではやさしい対応だったが、このときは雰囲気が変わって﹃これ(画像)なんだけど。どこから出てきたものだと思う?﹄と聞かれたのです。
1枚は自分の部屋でセルフタイマーで撮った写真、もう1枚がイベント会場で兜をかぶった写真、そして3枚目が友人と一緒に写したものでした。
私は﹃これは自分のパソコンか、iPadから出てきたものではありませんか﹄と答えました。すると、﹃違う。あなたの携帯電話から出たものだ﹄と言われたんです。私は今年1月に以前使っていたスマホを売却して、新しい携帯電話に替えていたので、不思議に思いました。あとで弁護士に聞くと、警察は1ヵ月の間、私を尾行して売却したスマホを手に入れていたようですね。
スマホの画像を復元したのでしょうが、そこに真犯人がメールで送ったというネコの写真と同じ構図の写真があるはずありません。そんなものを私は撮っていないのですから﹂
警察はスマホから画像を復元したと言うが、そこにあったはずの﹁犯人が送りつけた江の島のネコの写真﹂は片山さんに提示されていない。
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