抜け穴と解釈で「廃棄してOK」に
衆議院選挙では、各政党が公約で公文書管理制度の見直しを掲げるという、これまでにない政治的注目が集まった。政府は、公文書管理法のガイドラインの見直しの検討に着手し、11月8日の公文書管理委員会でガイドライン改正案がおおむね了承された。
このきっかけになっているのが、南スーダンPKO日報問題、森友学園問題、加計学園問題だ。
南スーダンPKO日報問題は日報を廃棄したとして情報公開請求に対して不存在決定をしたことが、森友学園問題は国有地売却金額を不開示としたことが、加計学園問題は文科省内で記録されていた文書の存在が発端になっている。
政府は行政文書の廃棄は問題ない、加計学園問題の文科省文書を﹁怪文書﹂や﹁個人文書﹂と主張してきた。なぜ、このような説明がまかり通るのか。
政府の問題を隠すために行政文書を廃棄・隠ぺいしているかのようであり、記録がなければ言い訳をしているようにしか見えないのだが、政府はそれでも違法でなければ問題ないという姿勢で一貫している。
このような実態は、公文書管理法とそれを実施するために策定されている行政文書管理ガイドラインなどからある程度説明ができる。
公文書管理制度の抜け穴や裁量的な解釈運用を﹁駆使﹂して、政府が違法ではないと主張するそれなりの理屈を作り出しているからだ。
そもそも「行政文書」の範囲が曖昧
公文書管理法は2011年4月1日に施行された。情報公開法から10年遅れての施行だった。
公文書管理法は、行政機関の保有する﹁行政文書﹂、独立行政法人等の保有する﹁法人文書﹂、国立公文書館等に移管された﹁特定歴史公文書等﹂の管理などを定めており、この3つの文書を総称して﹁公文書等﹂と定義している。行政文書の定義は、情報公開法で定義されたものをそのまま用いている。
行政文書が定義され、統一的基準で管理されるようになったのは情報公開法の制定以降で、それ以前は﹁公文書﹂を定義した法制度はなかった。
各省庁が規則等でそれぞれ﹁文書﹂を独自に定義していたので、管理される文書の範囲もまちまちだった。情報公開法以降、行政文書を管理する規則が制定されたが、さまざまな問題があり統一的管理を徹底するために公文書管理法が制定された。
行政組織の歴史と比べると、ごく最近のことなのだ。
行政文書管理の基本的枠組みは、公文書管理法では以下のようになっている。
1. 意思決定過程や事務事業の実績を合理的に跡付け、検証可能な文書の作成義務︵4条︶
2. 行政文書は保存期間を設定し、原則として密接に関連するもので行政文書ファイルを構成し適切に保存︵5、6条︶
3. 1年以上の保存期間の行政文書ファイル等は、行政文書ファイル管理簿に登録し公表︵7条︶
4. 保存期間が満了した場合は、原則として内閣総理大臣の同意を得て廃棄するか、国立公文書館等への歴史文書として移管︵8条︶
この基本的枠組みのもとで、実際の運用場面でどのような問題があるのか次に見ていきたい。