四国内の相互交流量を分析してわかった3つのこと
はじめに
四国は思ったよりもずっと広かったという記事で、松山からの電車・自動車の移動時間についての印象を書きました。
いろいろ調べていく中で、四国のWikipediaには、以前よりも四国内での相互移動が活発になったとの記載がありました。この記載は国土交通省・第5回全国幹線旅客純流動データを元した分析結果で表も記載してありました。
元データはWebサイト上でExcelで公開してあるため、もっとビジュアルにデータ分析してみることにしました。
データ分析について
使ったデータは国土交通省が調査した生活圏流動表に公開されている、207生活圏間流動表︵出発地から目的地︶︻交通機関別流動表︼の2010年度のデータをRubyのGraphvizライブラリであるGvizを使って流動数マップを作成しました。元データでは、全国のそれぞれの地域(出発地)から、全国各地への移動先(目的地)への年間の流動数を二次元データで格納しています。データは航空、鉄道、バス、船舶、乗用車等に分かれていますが、全機関の合計を対象としてデータを読み込んでいます。
全国の生活圏対象データをGraphvizを使ってそのまま表示すると大変なことになるので、開始地は四国のみに限定し、目的地はアクセス量の多い順に各TOP10まで絞り込んだ後にマップ化しています。
四国のWikipediaではTOP15を表にしていましたがノードが多く見辛いためTOP10に変更しました。(各目的地へのアクセス数や流動数は、TOP10内のアクセスの総数になるため、全データを対象にするとまた合計数が変わることはご承知ください。)
訂正(8/18):8/17公開のデータはスクリプトのミスによりTOP11までが対象になっていたため、TOP10までのデータに各種グラフ・マップを変更しました。
訂正(8/22):8/17公開時点で対象にした1990年度の調査データ(旧手法)と、2010年度の調査データ(新手法)のまとめ方が変わるため単純な比較はできないことがわかりました。
該当サイトに旧手法での2010年度調査が公開されていたため、旧手法によるデータで1990年と2010年を比較しなおしました。そのため比較の分析・数値に若干の変更があることをご承知ください。
四国の生活圏
本データでは、都道府県を更に細かい生活圏という単位に区分けしています。全国の生活圏は207地域生活圏として定義されています。四国での生活圏は以下のようになります。
県名 | 地域名 | 該当区域 |
---|---|---|
徳島 | 徳島 | 徳島市、鳴門市、小松島市、吉野川市、阿波市、美馬市、勝浦郡、名東郡、名西郡、板野郡、美馬郡 |
徳島 | 三好 | 三好市、三好郡 |
徳島 | 南部 | 阿南市、那賀郡、海部郡 |
香川 | 香川東部 | 高松市、さぬき市、東かがわ市、小豆郡、木田郡、香川郡、綾歌郡(宇多津町を除く) |
香川 | 香川西部 | 丸亀市、坂出市、善通寺市、観音寺市、三豊市、綾歌郡(綾川町を除く)、仲多度郡 |
愛媛 | 松山 | 松山市、伊予市、東温市、上浮穴郡、伊予郡 |
愛媛 | 新居浜・西条 | 新居浜市、西条市、四国中央市 |
愛媛 | 今治 | 今治市、越智郡 |
愛媛 | 宇和島 | 宇和島市、北宇和郡、南宇和郡 |
愛媛 | 八幡浜・大洲 | 八幡浜市、大洲市、西予市、喜多郡、西宇和郡 |
高知 | 中央 | 高知市、南国市、土佐市、香南市、香美市、長岡郡、土佐郡、吾川郡、高岡郡(佐川町、越知町、日高村) |
高知 | 幡多 | 宿毛市、土佐清水市、四万十市、幡多郡 |
高知 | 高幡 | 須崎市、高岡郡(高知中央の区域を除く) |
高知 | 安芸 | 室戸市、安芸市、安芸郡 |
1990年の流動数マップ
まず、1990年の時点のデータを元に流動数マップを作成しました。︵クリックするとSVGで拡大表示できます︶
線の太さは流動数が多いほど太くなり、各地域のノードは流入量が多いほど大きくしています。
1990年当時は、四国圏内からは岡山県南への流動数が最も多く417万人にも達していました。四国圏内だと、香川東部、香川西部、愛媛‥新居浜・西条の流入量が200〜300万と比較的多く、続いて徳島‥徳島、愛媛‥松山が続きます。
2010年の流動数マップ
2010年になると流動数は大きく変わりました。まず1990年時点で最も多かった岡山県南への流動数が大幅に減りました。その代わりに増えたのが香川東部、香川西部、徳島です。他にも新居浜・西条、高知‥中央も流動数を大きく増やしています。 生活圏人口が最も多い愛媛‥松山は、流動数は1990年との比較では増加してはいますが、他地域の流動数と比べると若干控えめの印象です。1990年と2010年の比較でわかること
各項目について、個別に1990年と2010年の数を比較してみました。目的地の流動数の変化
まずは、目的地毎の流動数の変化を見てみました。 グラフ化して特に目立ったのは、2010年での香川県東部・西部への流動数です。1990年と比較して倍以上に増えており、他の地域への流動数と比べても頭ひとつ抜けています。続いて徳島‥徳島は、1990年と比較して3倍を越える増加率になります。香川東部と徳島は相互交流が非常に盛んなことが流動数マップからも見て取れます。 高知‥中央も、1990年と比較して倍以上の増加率になっています。愛媛県では、愛媛‥新居浜・西条も100万人増えており、特に香川西部との相互交流が盛んです。 一方で、岡山県南、大阪‥大阪、広島‥広島といった周辺の都市への流動数は軒並み減少していますが、唯一、東京‥23区への移動は微増しています。2015年時点ではLCCの就航もあり、東京へ移動する流れは更に増えていることが予想されます。出発地の出発者数の変化
他方、四国の各生活圏から他の生活圏に出発する流動数の変化も見てみました。 ここでも、香川東部・西部、徳島、高知‥中央が積極的に外部へ移動しているのがよくわかります。他方、愛媛は新居浜・西条、八幡浜・大洲エリアは増加していますが、宇和島、今治、松山は逆に減少しています。データの視覚化からわかったこと
今回のデータ分析︵というほどでもないですが︶でわかったことを列挙しておきます。四国圏内の全体の相互交流は1990年よりも増えている
四国のWikipediaの解説にもあるように、1990年と比べて、2010年は四国圏内の相互交流は増え、近隣大都市への移動が減少していることがわかりました。 ただし、大きく移動数が増えたのは、香川東部・西部、徳島、高知‥中央、愛媛‥新居浜・西条といった特定の地域であり、その他の地域は微増にとどまっています。 今回のデータでは、瀬戸大橋、明石海峡大橋の開通時に懸念されていたストロー効果が顕著であるようには見えませんでしたが、実際にストロー効果が発生していないかどうかは不明です。このあたりは実際の住人の皮膚感覚の方が現実に近いかもしれません。特に香川・徳島は密接な相互交流が行われている
流動数マップを見て顕著だったのは香川・徳島の相互交流が非常に活発であるということでした。1990年時点でも交流が活発でしたが、2010年には岡山、神戸という近隣の大都市への流動数を遥かに上回る相互交流が実現されています。
また、高知も独立独歩というイメージがあったのですが、高知‥中央に関しては、他地域との相互交流が多く行われていることがわかりました。
香川・徳島、そして高知の三県は、各県の人口減少・商圏縮小が進むに連れて、より相互交流が深まっていくのではという印象を持ちました。