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コラム
YouTubeの視聴は﹁ストリーミング﹂ではなく﹁ダウンロード﹂です
文化庁著作権課によると、﹁視聴のみを目的とするストリーミング配信は一般にダウンロードを伴わないため、動画共有サイトを視聴するだけでは違法行為にはならない﹂そうです。これに対してネットの各所では﹁YouTubeを視聴するとブラウザのキャッシュフォルダにFLVファイルが保存されるが、これはどう考えてもダウンロードだ﹂ということで、文化庁著作権課の知識不足に対する猛烈な批判が巻き起こっています。 もちろん文化庁著作権課もこのあたりのことは多少考えており、﹁ストリーミングはダウンロード︵=複製︶ではない﹂と言い切ることは難しいとして、今後は別個に議論する予定だそうです。 さてさて、YouTubeにアップロードされているムービーを視聴することは果たして﹁ダウンロード﹂なのか、それとも﹁ストリーミング﹂なのか? 実はYouTubeには以下のような記述があります。 YouTube - 利用規約 http://jp.youtube.com/t/terms B. 本ユーザー投稿には、 ・ お客様の参考及び個人的な利用の目的で ・ YouTubeサービスの通常の機能を通じて意図された方法により ・ ﹁ストリーミング﹂のため にのみ、アクセスすることができます。 つまり、YouTubeは自分自身を﹁ムービーをストリーミング配信するサイト﹂であると主張しているのです。 では、YouTubeの規定するストリーミングとは一体何のことなのでしょうか?これについても以下のように記載されています。 ﹁ストリーミング﹂とは、YouTubeサービスから利用者のデバイスへのインターネットを通じた視聴覚作品の同時的なデジタル送信で、データが、利用者により、リアルタイム視聴されることが意図されており、ダウンロード、コピー、記憶、永久ダウンロード又は再配布は意図されていないという方法によるものをいいます。ストリーミング以外の目的での本ユーザー動画へのアクセスは、明示的に禁止されます。本ユーザー動画は﹁現状有姿﹂でのみ利用可能です。 ﹁現状有姿﹂とはもともと不動産用語で、現在あるがままの状態で引き渡すこと、という意味です。YouTubeはブラウザから見ることだけを目的としており、それ以外の利用方法、たとえばダウンロードして保存するなどはダメ、ということらしい。つまり、YouTubeからムービーの本体であるFLVファイルをダウンロードするな、というわけ。 しかしながら実際には最も普及している﹁Internet Explorer﹂でYouTubeを見た場合、見たムービーのFLVファイルが﹁インターネット一時ファイル﹂として保存されます。これは以下のような手順で確認できます。 1:Internet Explorerを起動して﹁ツール﹂→﹁インターネット オプション﹂をクリック 2:﹁ファイルの削除﹂をクリック 3:﹁すべてのオフライン コンテンツを削除する﹂にチェックを入れてから﹁OK﹂をクリック 4:﹁Cookieの削除﹂をクリック 5:﹁OK﹂をクリック 6:﹁設定﹂をクリック 7:﹁ファイルの表示﹂をクリック 8:﹁Temporary Internet Files﹂フォルダが開きます。これで空っぽになったのが確認できたので、フォルダを閉じましょう。 9:フォルダを閉じたら﹁OK﹂をクリック 10‥さらに﹁OK﹂をクリック 次に、以下のページにアクセスしてみましょう。 YouTube - ﹁∞(むげん︶プチプチ﹂でプチプチをひたすら潰す快感を味わってみました 最後まで再生したら、上記手順﹁1﹂﹁6﹂﹁7﹂という順に進んで中を見てみると……どこにも本体らしきFLVファイルは見あたらない。 ダウンロードされていないのかと思ったら大間違いで、アドレスバーへ以下のように入力して﹁移動﹂ボタンを押すか、キーボードのEnterキーを押してみましょう。 ※﹁Administrator﹂の部分は自分のログインする際のユーザー名に変えてください C:\Documents and Settings\Administrator\Local Settings\Temporary Internet Files\Content.IE5 いくつかフォルダが現れました 開こうとするとこのようなダイアログが出ますが﹁はい﹂をクリック いくつかあるフォルダを開いてみると、ひときわ巨大な容量のファイルを発見。これがYouTubeのムービーの本体であるFLVファイルです︵実際には拡張子が.flvでない場合がほとんど︶。FLVファイルの再生をサポートしているプレイヤーを使えば再生することができます。
ちなみにどういう仕組みで保存されているかというと、Temporary Internet Files直下にあるように見せかけてはいますが、実際にはContent.IE5というフォルダの下にさらに細かくフォルダで分類されて保存されています。それらのファイルを擬似的にTemporary Internet Files直下に並べて見せている、というわけ。
さて、これでInternet Explorerを使って閲覧するだけでパソコンのハードディスク上にYouTubeのFLVファイルが保存されてしまうことがわかったわけです。確かにストリーミングというよりは「ダウンロード」と言った方がふさわしい状態です。
では、ストリーミングとは一体何のことなのでしょうか?マイクロソフトによると、以下のように定義されています。 パソコン用語 - ストリーミングとは インターネットにある音声や動画をパソコンに保存せずに再生する機能です。 ということは、YouTubeはFLVファイルがダウンロードされて保存されているので、ストリーミングにはならないはず。もうひとつ、NTT Communicationsによるストリーミングの解説を見てみましょう。 ストリーミングとは|ストリーミングならストリームウィング | NTT Communications ストリーミングは送信データをハードディスクにダウンロードすることなく視聴できます。 どう解釈してもYouTubeはFLVファイルをダウンロードしているので、ストリーミングではないわけです。そのため、ネット上の動画視聴においてダウンロードは違法、ストリーミングは合法という法案が通過するのであれば、YouTubeにアクセスして視聴することは間違いなく﹁違法﹂に限りなく近づく……ということになります。 しかしYouTubeにも助かる方法があります。それは﹁FLVファイルをストリーミング配信する﹂という正攻法です。一体何を言っているのかわからないはずなので、順を追って解説します。 まず、本家本元Flashの開発を行っているAdobeによると、現在のYouTubeが採用している方法は以下の﹁FLV のプログレッシブダウンロード﹂という方法になっています。 2. FLV のプログレッシブダウンロード つまりYouTubeは擬似ストリーミング︵プログレッシブダウンロード︶を行っているにすぎないわけです。おそらく今後の法的議論の焦点はこの﹁プログレッシブダウンロード﹂の扱いになることでしょう。 で、もう一つの方法が﹁FLV のストリーミング﹂という方法です。そう、実はちゃんとストリーミングできるのです。 FLV のストリーミング 上記ページの﹁特徴﹂には以下のように書かれています。 FLVファイルはダウンロードされず、ユーザーのパソコンのキャッシュにも保存されない 見ている側は今のブラウザでまったく問題なく閲覧できますし、確かにこれなら﹁ストリーミング﹂です。まったく問題ありません。 ではなぜYouTubeは正式なストリーミングを行う方法があるのにそれを採用しないのでしょう?理由は単純、お金がかかるからです。このFLVファイルのストリーミングを実現するには、配信側に﹁Macromedia Flash Media Server 2﹂という専用のサーバソフトが必要になります。これのコストが高いのです。 Macromedia Flash Media Server 2 参考価格 例えば、最大同時接続数が﹁5000﹂のOrigin Editionの場合、520万円かかります。YouTubeに一体どれだけの人数が同時接続しているかはわかりませんが、少なくとも同時に5000人がアクセスしているなどというレベルではないことは想像に難くありません。また、そもそもYouTubeクラスの同時接続人数を同時に処理しようと思ったら一体サーバにいくらぐらい予算をかけなければならないのか想像も付きません。もっとも、Googleに買収された今となっては実現できるのかもしれませんが……。 結論‥今のYouTubeは﹁自称ストリーミング﹂だが実際はプログレッシブダウンロードでしかないため、﹁ダウンロード﹂である。ただし、ストリーミング視聴が合法であるならば、金をかけて本当の﹁ストリーミング﹂仕様にすることでYouTubeの視聴を合法化することは可能。 なお、いわゆる﹁キャッシュ﹂という扱いについては以下のページが非常に詳しく書いています。 高木浩光@自宅の日記 - 技術用語﹁cache﹂が政治的な言葉として拡大利用される
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