即興ゴルコンダ（仮）

押上で水たまりをつつく感じだ、と彼女は思った
フラットネスに関しては

金魚鉢のようなものを想像していた
長さと円弧に対しては

曲率を焦点とした話だったが（ガラスの）
《my sky hole 85-2 光と影》が射出されようとしていた

「関心」にまつわる出来事なので
彼女以外にはどうもできなかった

すでにうわのそらだった放物線は
二乗する都営浅草線から逸れて京成上野をスカイライナーしていく

あたりには木々が茂り
階段がある

この駅って公園の端っこなのよねぇ
と
つぶやく

大きな弧を描く橋を渡って行く
海という言葉を川より先に覚えた子は
眩しいぐらい輝く水の流れに「海だ」と叫ぶ
橋の先に目を転じれば広がる草原を見渡せる
その先で高架が空と陸を分けるように横切る
真っ直ぐに草原へと駆ける子の背を追えば
どこまでも行けそうな気がしてくる

「おーい」と呼ぶ声が心の覆いを一枚取り去る
この気持ちを翼にすれば私もまだ翔けるだろうか

湯を蹴る遊びが流行した
コールガールがやっているのを見ました
ヘルムートコールがやったかどうかは
さだかでありません

前を向いて後ろを向きながら
我々は遠くまで行きます
湯を蹴っている暇はないので
大抵は野宿でしょう
寝袋は地味なものがいい
クマに襲われると厄介だから

写真家の星野さんが襲われたのは
大変悲しい
我々は遠くまで行けるが
星野さんはカナダに居ました
テレビのための取材だったようです

遠くまで行った我々は何をするのでしょう
詩を読みます
詩を朗読します
そして寝ます。