オンラインゲーム/コミュニティサービス専門のカンファレンス「OGC 2009」(主催:ブロードバンド推進協議会)が5日、東京都内で開催された。はてな執行役員/最高技術責任者(CTO)の伊藤直也氏が講演し、同社のソーシャルブックマークサービス「はてなブックマーク」が提供するコミュニティの側面について説明した。
● はてブの3つの側面~「機能」「メディア」「コミュニティ」
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はてな執行役員/最高技術責任者(CTO)の伊藤直也氏
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伊藤氏は、﹁はてなブックマーク﹂には、﹁機能﹂﹁メディア﹂﹁コミュニティ﹂という3つの側面があると説明する。﹁機能﹂とは、職場でブックマークに登録したページを自宅からも利用できるようになるという、いわゆるオンラインブックマークとしての機能のこと。﹁メディア﹂とは、ブックマークされている件数の多い記事を見ることで、人気記事や注目記事を探す手間を省くことができ、新しい情報を発見するためのメディアになっているという意味だ。
これら2つに対してわかりにくいのが﹁コミュニティ﹂の側面だとして、伊藤氏は﹁なぜ、ブックマークすることでコミュニティが生まれるのか﹂を詳しく説明した。
伊藤氏によると、一般的にコミュニティを形成する方法は2つある。1つは、もともとコミュニケーションの需要があったところにサービスを提供することで、コミュニティが生まれるパターン。もう1つは、それまでコミュニケーションが存在しなかったところへ、何かを題材にした﹁つながり﹂を提供してやることでコミュニティが自然発生的に形成されるパターンだ。
同社では、この﹁つながり﹂をブックマークによって提供しているのが特徴だ。具体的には、﹁コメント﹂﹁お気に入りユーザー﹂﹁はてなスター﹂﹁IDコール﹂という4つの機能によって﹁つながり﹂を提供している。
● 重要なのは、ユーザー同士を﹁ゆるくつなげること﹂
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「つながり」を提供する「はてなブックマーク」の機能
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はてなのサービスの特徴は「ゆるくつなげること」だという
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まず、﹁コメント﹂では、自分がブックマークした記事について、ほかにどんなユーザーがブックマーク登録しているか、また、どういうコメントを残しているのかを見ることで、徐々に﹁ゆるいつながり﹂が生まれる。
次に、いつも面白いコメントを残しているユーザーや、同じ記事に対していつも自分より先にブックマークしているようなユーザーが見つかれば、﹁お気に入りユーザー﹂に登録し、常にチェックしておくことができる。また、自分が気になった記事をとりあえずブックマークしておけば、お気に入りユーザーたちがどんなコメントを残しているかなども確認できるため、ブックマークを介したつながりが形成されていく。
ただし伊藤氏によれば、こうしたブックマーク同士のつながりだけではユーザー間のコミュニケーションはなかなか生まれない。そこで用意したのが、いいコメントや役に立ったコメントに対して“拍手”を送る仕組み﹁はてなスター﹂だ。これにより、ユーザー同士がポジティブなコメントをし合う、間接的なコミュニケーションが生まれるという。
さらに、コメントらんに﹁id:他のユーザーのID﹂と書き込むことで、コメントがそのIDのユーザーにメッセージとして届くのが﹁IDコール﹂だ。おすすめの記事があることを知らせることができるため、より直接的なコミュニケーションを提供していると言える。
﹁ブックマークを付けることができるだけでなく、コメントを付けられたり、星を付けられたり、人を呼ぶことができるようにすることで、ユーザーとユーザーの﹃つながり﹄を提供しているのが﹃はてなブックマーク﹄だ。﹂
ただし、コツとして﹁ゆるくつなげることが重要﹂と伊藤氏は説明する。コメントに対して直接返信したり、直接メールできる機能は提供していないとしており、﹁ゆるくつなげる﹂がポリシーなのだという。
伊藤氏は、直接連絡を取り合うようなつきあいが10年も続く友人は少ないのに対して、Web巡りはライフワークだと指摘。そうした日々の行動の中に﹁ゆるいつながり﹂を提供すれば、ツールとして長く利用してもらえるとの判断だ、そうした長く使われるものだからこそ、直接つなぎすぎると、トラブルや気疲れが発生するとし、適度に距離を置いてつなげることが需要だとした。
● カテゴリ分けで蛸壺化を防止、コミュニティ分散化を狙う
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効果が大きかったという「非表示ユーザー設定」機能
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「はてなブックマーク」ユニークユーザー数の推移
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伊藤氏はこのほか、ソーシャルアプリケーションを提供するにあたって重要になるいくつかのポイントを挙げたが、そのうちの1つに﹁蛸壺化を防ぐ﹂というものがある。
コミュニティが大きくなってくると、新しく参加するために必要となる前提知識が膨大になったり、雰囲気が恐くて入れないといった人も出てくる。これに対して、同社では﹁コミュニティを分散化することで、新しい人にとっても入りやすくしたり、古い人と新しい人が対応にコミュニケーションできるよう意識している﹂。
以前の﹁はてなブックマーク﹂ではこれがうまくいっておらず、課題となっていたが、2008年11月に実施したリニューアルによりカテゴリー分けを行ったこと、また、今後、お気に入りユーザー機能が使われるようになることで徐々に対応できるものと見ている。
ブックマーク登録件数による人気記事という観点だけでなく、自分と同じような関心を持つユーザーを登録しておき、そのユーザーたちの動きをチェックできる﹁お気に入りユーザー﹂機能は、﹁自分の視点だけを中心に、その回りだけを見る機能﹂だと説明。ユーザーがこれを中心に使い始めるようになると、﹁はてなブックマーク﹂のコミュニティも分散化するというわけだ。
リニューアルの成果としては、ネガティブコメント問題への対策となる﹁非表示ユーザー設定﹂の効果が大きかったことも報告した。これは、特定ユーザーからのコメントを非表示にする機能で、リニューアルにより、よりカジュアルに設定できるようUIを改善したという。はてな社内では﹁効果があるのか?﹂と疑問視されていたというが、多くのユーザーが利用しており、ネガティブコメントを見なくても済むようになるだけで﹁精神的安定を得られる﹂とした。
関連情報
■URL
OGC 2009
http://www.bba.or.jp/ogc/2009/
はてなブックマーク
http://b.hatena.ne.jp/
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︵ 永沢 茂 ︶
2009/02/05 18:35
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