イベントレポート

「新人発掘イノベーション元年」2017年の編集者がすべきこと

ネット時代の編集者や出版社の価値は? 新人発掘と育成機能について敏腕編集者が対談

株式会社ストレートエッジ代表取締役の三木一馬氏(右)と株式会社集英社「JUMP j BOOKS」編集長の浅田貴典氏(左)

 特定非営利活動法人NEWVERYのトキワ荘プロジェクト/マンナビ編集部が1月25日、株式会社ストレートエッジ代表取締役の三木一馬氏と、株式会社集英社「JUMP j BOOKS」編集長の浅田貴典氏の対談イベント“「新人発掘イノベーション元年」2017年の編集者がすべきこと”を開催した。

“日本一のラノベ編集者”と“ギネス記録コミックの編集者”


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ヒット作家をどうやって発掘してきたのか?

 そもそも二人はこれまで、ヒット作家をどうやって見つけ出してきたのか? 浅田氏は「数は力」だと断言する。「JUMP j BOOKS」が主催するジャンプ小説新人賞は、年3回締切と他社に比べてペースが速い。「枠を作ると人が集まる」というのだ。ただし「自由に書いて良い」賞だと、ジャンプっぽいファンタジーバトルが多くなってしまう傾向があるので、既存の小説賞に加え「ジャンプホラー小説賞」のようにテーマを明確にした新人賞も増やした。新人作家にしてみれば、どういうテーマで書けばよいか想像しやすく、その先の「売り方」も明確になり、一気通貫できるという。

日本ホラー小説大賞とジャンプホラー小説大賞のダブル受賞作家・坊木椎哉氏のデビュー作『この世で最後のデートをきみと』

 稿2Twitter

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三木一馬氏

 浅田氏は、小説はマンガに比べると作品を生み出す労力が少ないため、兼業で書いている人が多いと分析する。マンガでも、作画コストの低いエッセイなどは、小説と似たような状況。ところが、例えば三浦建太郎氏の『ベルセルク』のような、作画コストの高いマンガを兼業でやろうと思ったら、30ページ描くのに1年かかってしまうような状況に陥ってしまう。そういう作品や作家に対しては、誰かが才能を見込んで投資し続けなければならない、というのだ。

出版社には「ミツバチ機能」と「パトロン機能」がある


 

 

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浅田貴典氏

 三木氏と浅田氏の二人には、「大ヒット作品を生み出した作家を新人時代から担当していた編集者」という共通点がある。逆に、出版社から飛び出しエージェントとしての活動を始めた三木氏と、出版社の中で尽力している浅田氏、という立場の違いもある。

 その二人が、新人の「発掘」はもちろんのこと、「育成」にももっと力を入れなければならないという共通見解を持っていることは、示唆に富んでいる。これからは、作家を選ぶのではなく、作家の伴走者として魅力を高め、作家に「選んでもらう」ようにすることが重要なのだろう。