'''サウジアラビア法'''(サウジアラビアほう、{{lang-ar|قانون سعودي}}、{{lang-en|Legal system of Saudi Arabia}})
== 概要 ==
[[サウジアラビア]]においては、イスラム法︵[[シャリーア]]︶そのものが法源となり、制定法を介さずに直接適用される。しかも、一般の法律を制定できる範囲が限定されている、つまおり、イスラム法で明示的な規定がない事項について、イスラム法に抵触しない範囲でのみ、制定が許容されている︵ここにおいて、シャリーアは、[[クルアーン]]と[[スンナ]]を第一次的法源とし、イスラム法学者の合意や見解を第二次的法源とする法規範であり、条文の形で成文化されているものではない。︶<ref name="businesslaw">{{Cite book|和書 |title=イスラーム圏ビジネスの法と実務 |url= |publisher=経済産業調査会 |date=2014-07-30 |isbn=978-4-8065-2937-8 |author=イスラムビジネス法研究会・/西村あさひ法律事務所編著﹃イスラーム圏ビジネスの法と実務﹄}}</ref>。
他の[[イスラム世界|イスラム諸国]]では、制定法内にイスラム法︵シャリーア︶の理念や原則を取り入れることはあるが、イスラム法そのものが[[裁判]]規範として直接適用される主権国家はサウジアラビアのみとされている。例えば、[[酒]]類の製造等が禁止されていることは、サウジアラビアも[[クウェート]]も同様であるが、クウェートでは、[[刑法典]]において、販売目的で酒類を製造等した者を10年以下の[[禁錮|禁固刑]]に処すると規定しており、その効力として酒類の製造等が禁止されている。ことになるのれに対し、サウジアラビアでは、そのような制定法は存在せず︵制定法を設けることが許容されず︶、イスラム法の直接命じるところとして、酒類の製造等が禁止されていると解される。同様のことは、イスラム法が詳細な定めをする[[家族法]]についても該当し同様であり、サウジアラビアには、[[婚姻]]や[[相続]]などの実体ルールを規定する制定法は存在せず、イスラム法が直接の実体規範となっている。このように、イスラム教[[スンナ派|スンニ派]]の盟主サウジアラビアは、現代の[[主権国家]]の中では、イスラム法による統治を最も徹底した国とい言える︵対照的に、イスラム教[[シーア派]]の雄[[イランの法制]]は、シャリーアを最高法規としつつも、制定法の適合性審査で用いるにとどまり、裁判規範として直接適用まではしない法体系をとっている。︶<ref name="businesslaw"/>。
ただし、民商事取引分野においては、シャリーアと抵触せず、これを補完するものという位置づ付けで、いくつもの法律が制定されており、その例としては、[[会社法]]、商業代理店法、不動産所有・投資に関する法律、[[特許法]]・[[商標法]]・[[著作権法]]、保険会社法、不動産担保に関する法律、[[仲裁法]]、民事執行法などが挙げられる。他方で、取引分野の基本法というべき[[民法典]]については、ルールの明確化・予見可能性向上などの観点から、国王のイニシアティブの下、で制定に向けた動きがありつつも、反対論も根強く、未だ制定には至っていない。その背景にはとして、[[民法]]が取引分野の基本法だけに、そのような制定法が導入されると、シャリーアを中心とすべき法体系との整合性が保てない、などの懸念が指摘されている<ref>[http://www.jccme.or.jp/japanese/11/pdf/2014-04/josei03.pdf 田中民之﹁中東諸国の法律・司法制度 サウジアラビアの司法改革を巡って②﹂]</ref>。
また、このような[[民法典]]制定論争を巡っては、取引法制の整備という視点のみならず、﹁シャリーア﹂を重視しつつ﹁現代の実態﹂にも即した基本法整備を行うことが、現代における真のシャリーアに基づく統治のあり方を示していくきっかけになり、偏った形でイスラム法︵シャリーア︶による統治を掲げる[[テロリズム]]に対し、理論的・実践的な反論にもなるとの意見もある<ref>[http://www.jccme.or.jp/japanese/11/pdf/2015-09/josei02.pdf 田中民之﹁中東諸国の法律・司法制度-シャリーアの法典化の可能性と有用性(3)﹂]</ref>︵このような﹁シャリーア﹂と﹁現代社会﹂との調和の試みは、[[イスラム金融]]発展の歴史にも通じるとい言えよう。︶。
== 統治機構<ref name="businesslaw"/> ==
サウジアラビアは、[[サウジアラビアの国王一覧|国王]]を[[元首]]とする[[絶対君主制]]の国家であり、その統治は、実質的にも国王の[[親政]]で、﹁[[司法]]、[[行政]]、[[立法]]の三権は、国王の下で、相互に協力して執行される﹂とされている︵統治基本法44条︶<ref name="businesslaw" />。
国王は行政府の長である首相も兼ね、副首相以下の閣僚を任命する。制定法の立法権も国王に属するが、国王が任命する150名の議員と1名の議長で構成される諮問評議会が、法律制定・改正などの実質的な検討をする機関として存在する。[[法律]]制定の通常のプロセスは、行政府の担当閣僚等が法律案を起草し、諮問評議会の審議に付され、諮問評議会に異議がなければ国王の承認を得た上で法律として[[公布]]されるというものである。ただし、上記のとお通り、制定法を設けることができる範囲は、イスラム法︵シャリーア︶との関係で、相当に制約されている<ref name="businesslaw" />。
== 司法制度 ==
== 司法制度<ref>[http://www.jccme.or.jp/japanese/11/pdf/2013-12/josei03.pdf 田中民之「中東諸国の法律・司法制度 サウジアラビアの司法改革を巡って①」]</ref> ==
サウジアラビアの[[裁判所]]は、統治基本法上単一の種類しかなく、[[特別裁判所]]の定めはないが、。イスラム法︵シャリーア︶を主たる法源とする法制であることのを反映として、裁判所の[[裁判官]]︵ガーディー︶は、シャリーアの[[専門家]]たる[[ウラマー]]である。そのため、サウジアラビアの裁判所は、通称として、シャリーア裁判所と呼ばれるのが一般化している<ref name=":0">[http://www.jccme.or.jp/japanese/11/pdf/2013-12/josei03.pdf 田中民之﹁中東諸国の法律・司法制度 サウジアラビアの司法改革を巡って①﹂]</ref>。
一方、このような︵シャリーア︶裁判所とは別に、苦情処理庁と訳される国王直属の紛争処理機関や、[[商業]]、[[金融]]、[[労働]]、[[交通]]等を所管する各関係省庁の委員会等が各関連の民商事紛争処理の任に当たっている。結果として、建前上は統治基本法の定める︵シャリーア︶裁判所は、建前上は全ての[[訴訟]]を管轄するにもかかわらず、実態としては、家事事件︵親族、相続など︶や刑事事件など限定的な事件のみを担当している︵このような管轄の実態は、本来的に管轄が限定されている[[インドネシア]]の宗教裁判所に、実質的に接近するものともい言える。︶<ref name=":0" />。
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
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*[https://www.jetro.go.jp/world/middle_east/sa/law/ ビジネス法令・法務(サウジアラビア)] – [[JETRO]]の提供する[[サウジアラビア]]の統治基本法、[[会社法]]などの日本語仮訳
*[https://www.globalipdb.inpit.go.jp/link/5527/ JETRO「サウジアラビアにおける司法制度と知的財産制度」]
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{{アジアの法}}
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