Wikipedia

「フィラデルフィア管弦楽団」の版間の差分

履歴の双方向閲覧
← 古い編集
削除された内容 追加された内容
ビジュアルウィキテキスト
1個の出典を修正し、0個にリンク切れのタグを追加しました。 #IABot (v1.5.2)
Bancd'or (会話 | 投稿記録)
18 回編集
編集の要約なし
タグ: Refタグつき記述の除去
 
(15人の利用者による、間の19版が非表示)
1行目:
{{Infobox Musician <!--Wikipedia:ウィキプロジェクト 音楽家を参照-->
| Name = フィラデルフィア管弦楽団<br />{{lang|en|The Philadelphia Orchestra}}
| Img = Charles Dutoit and the Philadelphia Orchestra concert in Tianjin.jpg
| Img_capt = [[シャルル・デュトワ]]指揮・フィラデルフィア管弦楽団（2012年）
9行目:
| Origin = {{USA}} [[ペンシルベニア州]][[フィラデルフィア]]
| Genre = [[クラシック音楽]]
| Years_active = [[1900年]] -
| Label =
| Production =
| Associated_acts =
| Influences =
| URL = [httphttps://www.philorch.org/ The Philadelphia Orchestra]
| Current_members = <!-- グループのみ --> '''音楽監督'''<br />[[ヤニック・ネゼ＝セガン]]<br />'''桂冠首席客演指揮者'''<br />[[シャルルナタリー・デシュトワゥッツマン]]<br />'''準指揮者'''<br />[httphttps://www.macelaruphilorch.comorg/about-us/meet-your-orchestra/conductors/austin-chanu/ クリオースティン・チャヌ]<br />'''準指揮者'''<br />[https://www.philorch.org/about-us/meet-your-orchestra/conductors/tristan-rais-sherman/ トリスタン・レイズ・シャーマセラルン]
| Past_members = <!-- グループのみ -->
| Notable_instruments =
}}{{Portal クラシック音楽}}
'''フィラデルフィア管弦楽団'''（フィラデルフィアかんげんがくだん　、{{lang-en|'''The Philadelphia Orchestra'''}}）は、[[アメリカ合衆国]]の[[ペンシルベニア州]][[フィラデルフィア]]を本拠地とする[[オーケストラ]]である。
 
== 概要 ==
[[Image:KimmelCenterInteriorHDR.jpg|thumb|200px|本拠地の[[キメル・パフォーミング・アーツ・センター]]]]
1900年、[[ペンシルベニア州]][[フィラデルフィア]]に創立された、世界有数の[[オーケストラ]]である。﹁{{仮リンク|[[アメリカ5大オーケストラ|en|Big Five (orchestras)}}(]]﹂︵"{{lang|en|Big Five}}")﹂︶<ref>他の4つは[[シカゴ交響楽団]]、[[ニューヨーク・フィルハーモニック]]、[[ボストン交響楽団]]、[[クリーヴランド管弦楽団]][http://www.scena.org/columns/lebrecht/000705-NL-big.html]</ref>の一つである。自作の協奏曲で録音も残している[[セルゲイ・ラフマニノフ|ラフマニノフ]]は本楽団を﹁世界最高のオーケストラ﹂と賞賛し、最後の作品﹁[[交響的舞曲 (ラフマニノフ) |交響的舞曲]]﹂は﹁フィラデルフィア・サウンドを想像しながら作曲した﹂と述べ、本楽団に献呈している。近年では、インターネットを通じたスクリーン会場でのコンサートなど、同時代の音楽活動でも実績を残している。
 
創立以来、1857年創設の米国最古のオペラハウス﹁[[http://www.philorch.org/about-academy ︽アカデミー・オブ・ミュージック︾]]﹂<ref>旧本拠地アカデミー・オブ・ミュージック(︵写真)︶[httphttps://www.marshallday.com/sites/marshallday.com/files/imagecache/project-page-large/Philadelphia%20Academy.jpg]</ref>を本拠地としていたが、2001年からは本楽団の為ために建てられた、[http://www.rvapc.com/images-production/Projects/225/225_tmp7E1.jpg ︽﹁キメル・パフォーミング・アーツ・センター︾﹂<ref>[https://vinoly.com/works/kimmel-center-for-the-performing-arts/]</ref>の内部<ref>[httphttps://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/91/KimmelCenterInteriorNight.JPG 内部]</ref>のシンフォニー・ホール、﹁ヴェライゾン・ホール﹂<ref>[httphttps://farm3.staticflickr.com/2415/2320727430_a8f18dd3a7_o.jpg ︽ヴェライゾン・ホール︾]</ref><ref>本拠地ヴェライゾンホール(︵写真)︶[http://blog.mixonline.com/briefingroom/wp-content/uploads/2009/04/bssverizon-hall.jpg]</ref>で定期演奏している。なお、現在でも毎年、[[︽﹁アカデミー・オブ・ミュージック︾]]﹂の創設記念日に、寄付を目的とした演奏会を当同オペラハウスにて開催している<ref>フィラデルフィア市が[httphttps://wwwold.philorch.org/sites/default/files/styles/home_slider_large/public/hero_image/dutoit-opening-night-aom_0.jpg 数千人のタキシードとドレス姿]で埋め尽くされ、市の恒例の一大行事となっている[httphttps://www.philorch.org/anniversary-concert-ball]</ref>。
 
冬季定期演奏シーズンは10月から翌年5月の間、30週間、本拠地[http://blog.mixonline.com/briefingroom/wp-content/uploads/2009/04/bssverizon-hall.jpg ヴェライゾン・ホール]で同じプログラムを週44回︵火、木、金、土曜日︶演奏し、また[[カーネギー・ホール]]に毎年レギュラーとして5回ほど公演している。夏季は[[フィラデルフィア]]市内フェアモントパーク<ref>[http://pics4.city-data.com/cpicv/vfiles18916.jpg フェアモントパーク]</ref>の[http://manncenter.org/sites/default/files/imagecache/gigantic/TchaikovskyDvorakDB%206.jpg マーン・パフォーミング・アーツ・センター<ref>[https://manncenter.org/]</ref>、[[ニューヨーク州]]の[http://www.spac.org/orchestra.cfm　[サラトガ音楽祭]]<ref>[https://spac.org/]</ref>、[[コロラド州]]の[http://www.vailmusicfestival.org [ベイルバレー音楽祭]]<ref>[https://www.bravovail.org/]</ref>で演奏を行っている。夏の音楽祭では、'''フィラデルフィア・ロビンフッド・デル管弦楽団'''という名称で演奏することもあり、この名による録音も多く残されている。また、毎年遠征公演を行っており、2010年4月には[[マルタ・アルゲリッチ]]が同行して来日公演を行っている。
 
== 歴史 ==
[[File:Philadelphia Orchestra at American premiere of Mahler's 8th Symphony (1916).jpg|thumb|250px|1916年、[[グスタフ・マーラー|マーラー]]・[[交響曲第8番 (マーラー)|交響曲第8番]]のアメリカ初演。指揮‥ストコフスキー]]
[[File:1970_1812concert.jpg|thumb|250px|オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団(1970（1970年)）]]
[[1900年]]に、初代[[指揮者]]を務めた[[フリッツ・シェール]]によって創設される。[[1907年]]に[[カール・ポーリヒ]]が後任となるが、[[1912年]]に首席指揮者となった[[レオポルド・ストコフスキー]]によって、オーケストラとしての名声が築かれた。[[1940年]]には、ストコフスキーの指揮で[[ウォルト・ディズニー・カンパニー|ディズニー]]映画﹃[[ファンタジア (映画)|ファンタジア]]﹄の録音を行った。
 
[[1936年]]から[[1938年]]まで[[ユージン・オーマンディ]]が首席指揮者の座をストコフスキーと分かち合い、それ以降は単独で音楽監督となった。オーマンディは42年にわたって留在任し、この間に、数多くの名演名録音を制作した<ref>[httphttps://www.hmv.co.jp/artist_%E3%80%80%E3%82%AA%E3%83%A0%E3%83%8B%E3%83%90%E3%82%B9%EF%BC%88%E7%AE%A1%E5%BC%A6%E6%A5%BD%EF%BC%89_000000000065307/item_%EF%BC%92%EF%BC%90%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E4%BD%9C%E5%93%81%E9%9B%86%E3%80%80%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%EF%BC%86%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%83%87%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A2%E7%AE%A1%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%A3%EF%BC%88%EF%BC%91%EF%BC%92%EF%BC%A3%EF%BC%A4%E9%99%90%E5%AE%9A%E7%9B%A4%EF%BC%89_5100574 数多くの名演名録音を制作?]した</ref>。オーマンディとフィラデルフィア管弦楽団による[[ジャン・シベリウス|シベリウス]]作品の録音は、作曲者自身から賛嘆されお墨付きを得たことでも有名{{要出典|date=2009年2月}}<!--参考文献としてではなく、脚注を推奨-->。
 
オーマンディの後継の音楽監督は[[リッカルド・ムーティ]]︵1981年 - 1992年︶が、その後任は[[ヴォルフガング・サヴァリッシュ]]︵1993年 - 2002年︶が務めてきた<ref>1966年、当時フィラデルフィア管弦楽団音楽監督のオーマンディに、当楽団の次期音楽監督として引き継いでほしい、と要請されたが、現行の契約の縛りを理由に固辞した。その後、オーマンディから2度目の要請が入り、これも固辞した。1993年、今度は楽団全員一致[http://articles.philly.com/1990-09-13/news/25879241_1_philadelphia-orchestra-wolfgang-sawallisch-joseph-kluger 当楽団全員一致]の、次期音楽監督にサヴァリッシュを指名する、との投票結果による要請を受け、て心が動き、70歳の高齢にもかかわらず、受諾することを決心した。﹁フィラデルフィアから、まさか3度目の要請が来るとは思っていなく、本当に驚いた﹂と語っている。</ref>。その後、[[クリストフ・エッシェンバッハ]]が音楽監督に就任した。エッシェンバッハが退任した2008年には[[シャルル・デュトワ]]が首席指揮者兼芸術顧問に就任した。[[2010年]]6月には[[ヤニック・ネゼ＝セガン]]が[[2012年]]のシーズンから音楽監督に就任した。
 
客演指揮者のなかでは、[[ジョルジュ・プレートル]]、[[サイモン・ラトル]]、[[ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス]]との相性が特に良いといわれる。1990年後半から事実上ラトルが指揮する唯一の米国のオーケストラとなり、ラトルは毎年フィラデルフィアを訪れている。
 
[[コンサートマスター]]としては28年間（1966年 - 1994年）在任したノーマン・キャロル<ref>[http://www.curtis.edu/resources/uploads/embeds/file/Faculty/Carol,%20Norman.pdf ノーマン・キャロル]</ref><ref>ノーマン・キャロル、インタビュー（英語）[httphttps://www.violinist.com/blog/OvationPress/201010/11698/]</ref>が最も長く、1999年以降から現在のコンサートマスター、[httphttps://www.philorch.org/about/musicians/david-kim デービッド・キム]が務めている。
 
== 特徴 ==
[[File:Phila AcademyofMusicl03.JPG|left|thumb|200px|旧本拠地のアカデミー・オブ・ミュージック]]
創立当初からの本拠地だった[[アカデミー・オブ・ミュージック]]が古いオペラハウスであり、その音響が不良であったために、本楽団の奏者はアンサンブルで音に独特な広がりを持たせるよう工夫をし、それが分厚く柔らかくて優しくて弾ける、[http://www.newcriterion.com/articles.cfm/The--Philadelphia-Sound--at-100-2642 華麗なるフィラデルフィア・サウンド<ref>[https://newcriterion.com/issues/2000/6/the-philadelphia-sound-at-100]の響き</ref>を発達させた。特に、伸び伸びと広がる豊麗なシルクのような弦楽の音色は、本楽団の大きな特長であり、[[レナード・バーンスタイン|バーンスタイン]]＋[[ニューヨーク・・フィルハーモニック|ニューヨーク・フィル]]、[[ゲオルク・ショルティ|ショルティ]]＋[[シカゴ交響楽団|シカゴ響]]、[[ジョージ・セル|セル]]＋[[クリーブヴランド管弦楽団|クリーヴランド管]]など、アメリカのオーケストラ全盛時代に中にあっても一線を画した、豪華絢爛なサウンドを持つオーケストラとして独特の存在であった。また、オーボエ首席は常に高名な奏者で、現在の[http://www.philorch.org/about/musicians/richard-woodhams リチャード・ウッドハムズ]は前首席奏者[[ジョン・デ・ランシー (音楽家)|ジョン・デ・ランシー]]の弟子であり、ランシーは、リヒャルト・シュトラウスにオーボエ協奏曲の作曲を催促した人物である。ランシーは、伝説のオーボエ奏者[[マルセル・タビュトー]]の弟子で、タビュトーはランシーの前の首席奏者だった。
 
[[セルゲイ・ラフマニノフ|ラフマニノフ]]はフィラデルフィア管弦楽団の演奏会に初めて接した後、当楽団を「世界最高のオーケストラ」と絶賛し、その後の管弦楽作品の作曲においては「フィラデルフィア・サウンドを思い浮かべながら作曲した」と言及し、最後の管弦楽作品となった『[[交響的舞曲 (ラフマニノフ) |交響的舞曲]]』を当楽団に捧げている。また自作の協奏曲を当楽団と共演し録音も残している。
本楽団のレパートリーとしては、ストコフスキー時代からムーティ時代まで、伝統的に[[スラヴ人|スラヴ系]]や[[ラテン人|ラテン系]]の音楽を得意としてきた。例えば、[[セルゲイ・ラフマニノフ]]の自作自演による[[ピアノ協奏曲第2番 (ラフマニノフ)|ピアノ協奏曲第2番]]（ストコフスキー指揮）、オーマンディ指揮の[[ニコライ・リムスキー＝コルサコフ|リムスキー＝コルサコフ]]の交響組曲「[[シェヘラザード (リムスキー＝コルサコフ)|シェヘラザード]]」、[[バルトーク・ベーラ|バルトーク]]の「[[中国の不思議な役人]]」、[[コダーイ・ゾルターン|コダーイ]]の「[[ガランタ舞曲]]」、[[エクトル・ベルリオーズ|ベルリオーズ]]の「[[幻想交響曲]]」、そしてフィラデルフィアの弦楽を全開された[[ピョートル・チャイコフスキー|チャイコフスキー]]の「[[弦楽セレナーデ (チャイコフスキー)|弦楽セレナーデ]]」、[[リッカルド・ムーティ|ムーティ]]指揮の[[オットリーノ・レスピーギ|レスピーギ]]の「ローマ三部作」（「[[ローマの噴水]]」「[[ローマの松]]」「[[ローマの祭り]]」）などである。その一方、そのサウンドはムード音楽的と考えられ、深刻なドイツ音楽に向かないとされてきた<ref>オーマンディ指揮の[[フェリックス・メンデルスゾーン|メンデルスゾーン]]『[[夏の夜の夢 (メンデルスゾーン)|夏の夜の夢]]』のCD(BVCC-38285)のブックレットに記載されているオーマンディのインタビューでも、オーマンディが「昔から聞かされた批判の一つに『フィラデルフィア管弦楽団は、古典派の作品ではなく、[[チャイコフスキー]]やリムスキー=コルサコフ、[[ストラヴィンスキー]]などのロシア音楽を中心とするショーピースを演奏をするオーケストラだ』というのがありました。こんなことをいうのはばかげています。（ストコフスキーから引き継いだ）当時からこのオーケストラはなんでも演奏できたからです」と語っており、オーマンディは自分が常任になってからはモーツァルトとハイドンの交響曲の演奏を毎シーズン行うようにしたと語っている。</ref>。が、サヴァリッシュ時代は[[ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン|ベートーヴェン]]や[[フランツ・シューベルト|シューベルト]]、[[ヨハネス・ブラームス|ブラームス]]、[[ロベルト・シューマン|シューマン]]、[[アントン・ブルックナー|ブルックナー]]、[[リヒャルト・ワーグナー|ワーグナー]]、[[リヒャルト・シュトラウス]]などの正統的なドイツ音楽で高いレベルの演奏を行っている（なお、オーマンディ時代にもベートーヴェン、ブラームスの交響曲全集などが録音されている）。▼
 
また、オーボエ首席は常に高名な奏者で、現在のリチャード・ウッドハムズ<ref>[https://www.philorch.org/about/musicians/richard-woodhams]</ref>は前首席奏者[[ジョン・デ・ランシー (音楽家)|ジョン・デ・ランシー]]の弟子であり、ランシーは[[リヒャルト・シュトラウス]]に[[オーボエ協奏曲 (リヒャルト・シュトラウス)|オーボエ協奏曲]]の作曲を委嘱した人物である。ランシーは、伝説のオーボエ奏者[[マルセル・タビュトー]]の弟子で、タビュトーはランシーの前の首席奏者だった。
 
▲本楽団のレパートリーとしては、ストコフスキー時代からムーティ時代まで、伝統的に[[スラヴ人|スラヴ系]]や[[ラテン人|ラテン系]]の音楽を得意としてきた。例えば、[[セルゲイ・ラフマニノフ]]の自作自演による[[ピアノ協奏曲第2番 (ラフマニノフ)|ピアノ協奏曲第2番]]︵ストコフスキー指揮︶、オーマンディ指揮のによる[[ニコライ・リムスキー＝コルサコフ|リムスキー＝コルサコフ]]の交響組曲﹁﹃[[シェヘラザード (リムスキー＝コルサコフ)|シェヘラザード]]﹂﹄、[[バルトーク・ベーラ|バルトーク]]の﹁﹃[[中国の不思議な役人]]﹂﹄、[[コダーイ・ゾルターン|コダーイ]]の﹁﹃[[ガランタ舞曲]]﹂﹄、[[エクトル・ベルリオーズ|ベルリオーズ]]の﹁﹃[[幻想交響曲]]﹂﹄、そしてフィラデルフィアの弦楽を全開された[[ピョートル・チャイコフスキー|チャイコフスキー]]の﹁﹃[[弦楽セレナーデ (チャイコフスキー)|弦楽セレナーデ]]﹂﹄、[[リッカルド・ムーティ|ムーティ]]指揮のによる[[オットリーノ・レスピーギ|レスピーギ]]の﹁ローマ三部作﹂︵﹁﹃[[ローマの噴水]]﹂﹁﹄﹃[[ローマの松]]﹂﹁﹄﹃[[ローマの祭り]]﹂﹄︶などである。その一方、そのサウンドは[[ムード音楽]]的と考えられ、深刻なドイツ音楽に向かないとされてきた<ref>オーマンディ指揮の[[フェリックス・メンデルスゾーン|メンデルスゾーン]]﹃[[夏の夜の夢 (メンデルスゾーン)|夏の夜の夢]]﹄のCD(BVCCCD︵BVCC-38285)38285︶のブックレットに記載されているオーマンディのインタビューでも、オーマンディが﹁昔から聞かされた批判の一つに﹃フィラデルフィア管弦楽団は、[[古典派音楽|古典派]]の作品ではなく、[[チャイコフスキー]]やリムスキー=＝コルサコフ、[[イーゴリ・ストラヴィンスキー|ストラヴィンスキー]]などのロシア音楽を中心とするショーピースを演奏をするオーケストラだ﹄というのがありました。こんなことをいうのはばかげています。︵ストコフスキーから引き継いだ︶当時からこのオーケストラはなんでも演奏できたからです﹂と語っており、オーマンディは自分が常任になってからは[[ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト|モーツァルト]]と[[フランツ・ヨーゼフ・ハイドン|ハイドン]]の交響曲の演奏を毎シーズン行うようにしたと語っている。</ref>。が、サヴァリッシュ時代は[[ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン|ベートーヴェン]]や[[フランツ・シューベルト|シューベルト]]、[[ヨハネス・ブラームス|ブラームス]]、[[ロベルト・シューマン|シューマン]]、[[アントン・ブルックナー|ブルックナー]]、[[リヒャルト・ワーグナー|ワーグナー]]、[[リヒャルト・シュトラウス]]などの正統的なドイツ音楽で高いレベルの演奏を行っている︵なお、オーマンディ時代にもベートーヴェン、ブラームスの交響曲全集などが録音されている︶。
 
本楽団の奏者のほとんどは[[カーティス音楽学校]]のトップ卒業生によって占められている。カーティス音楽学校は、本楽団の水準を満たすような楽団員の養成機関をめざして設立され、その教授陣は本楽団のメンバーまたは元メンバーで構成され、伝統の途切れない継承が行われている。
 
本楽団の素顔を追ったドキュメンタリー映画「『オーケストラの向こう側』<ref>[httphttps://player.vimeo.com/video/7971013?title=0&byline=0&portrait=0　オーケストラの向こう側]」</ref>は世界で数々の映画祭で受賞し、2008年に日本でも公開され反響を呼んだ。この映画はオーケストラ奏者が音楽を通じて人生の歓びに触れる瞬間をとらえた作品と評され、本楽団が世界有数のオーケストラである秘密が明かされていると言われている<ref>映画公開[http://www.cetera.co.jp/library/orchestra.html]</ref>。
 
本楽団オンラインストア開設後は、ストコフスキー時代から現在のライヴ演奏を、[[MP3]]ファイル、もしくは[[FLAC]]ファイル︵CDと完全に同等の音質︶で購入することができるようになった<ref>ライブ演奏ダウンロードサイト[httphttps://www.philorch.org/recordings]</ref>。また、本楽団は、HD︵ハイビジョン︶ライブストリーミングサービスプロバイダーである、SpectiCast社が選んだ二つの楽団<ref>もう一つは[[ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団]]。</ref>の一つであり、ヴェライゾン・ホールでの生演奏は﹁フィラデルフィア管弦楽団コンサート・シリーズ﹂<ref>フィラデルフィア管弦楽団コンサート・シリーズ︵ビデオ︶[http://www.specticast.com/PhilOrch.jsp]</ref>として、インターネット経由で高音質・高画質で配信されている。
 
=== 破産、再生から復活へ ===
米国のオーケストラは地域コミュニティの顔として、個人の支援や寄付によって支えられている場合が多く<ref>サヴァリッシュは2008年のPBSインタビューで、米国のオーケストラが、公務員としてではなく真の演奏者として、自分たちを支援してくれている聴衆に向けて演奏していることに関して、それが正しい姿である、と言っている。[httphttps://video.whyy.org/video/1127865555/#]</ref>、本楽団はその代表的な存在である。大企業がバックに付き、高価な楽器と高収入の名人を呼んでいた経済が好調な時期もあった。しかし、収入の大半を地域住民からの募金に頼っていることに変わりはなく、エッシェンバッハ時代から低迷期<ref>そもそも本楽団の奏者はエッシェンバッハの就任に賛成していなかった。[httphttps://www.nytimes.com/2001/02/06/arts/musicians-are-gaining-bigger-voice-in-orchestras.html?pagewanted=2&src=pm]。また、退任後のエッシェンバッハには桂冠指揮者や名誉指揮者といった肩書きも与えられていない。</ref>に入り、そして、[[リーマン・ショック]]以降の米経済低迷で収入が劇的に落ち込み、ついに2011年4月16日、再建型の[[連邦倒産法第11章]]︵日本でいう[[民事再生法]]︶の適用を申請することを明らかにした。
 
同様に世界トップクラスに君臨する欧州ドイツやフランスのオーケストラの大部分は、国家や州の予算で厚く保護されていることもあり（英国は基本的に自主運営、フランスにも私設団体は少なくない）、本楽団の破産のニュースは世界中に報道され、音楽ファンのみならず各界に衝撃を与えた<ref>フィラデルフィア管弦楽団理事長から支援者への手紙（英語）[httphttps://www.artsjournal.com/slippeddisc/Patron%20E-mail%20Letter.PDF]</ref><ref>米名門オーケストラが破産申請へ[http://san-soku.blog.livedoor.jp/nigaii/archives/51728583.html]</ref>。
 
一方、この発表に先立ち、本楽団の理事会内部でも更生手続きの適用を申請することについて、意見が大きく分かれていた。まだ財源があることと名声に傷が付くことを理由とする現状維持派と、いま今こそ一気に改善すべきだとする改革派との意見の隔たりは大きかった。改革派は、ゲスト客演指揮者の[[ヤニック・ネゼ＝セガン]]の演奏が好評を得ていたことに本楽団復活の兆しを見出し、セガンが2012年秋から正式に音楽監督に就任する前に、財政問題を解決しておきたい、という思いもあった。結局、両派の意見は最後まで折り合いがつかないまま投票日を迎え、改革派の理事メンバーらは涙を浮かべながら更生手続き適用賛成票に投じたとの逸話が残っている<ref>更生手続き適用の申請（英語）[httphttps://archive.nytimes.com/artsbeat.blogs.nytimes.com/2011/04/16/board-of-philadelphia-orchestra-votes-to-file-for-bankruptcy/]</ref>。
 
更正生手続きの適用により、全ての債権回収が一旦停止され、演奏活動を継続しながら過去の負の遺産を断ち切ることが可能となり、2012年4月までという比較的短期間で再建プロセスが完了されることとなった<ref>更生手続き情報開示︵公式公開︶︵英語︶[http://www.gcginc.com/cases/poa/]</ref>。このプロセスで、本楽団の管理職への大胆なリストラと、高価なホールやその他維持費契約等などの白紙化が行われ、また各方面での組合員への破格な報酬を支払う義務から解放されることとなった。奏者の収入の減少にもつながることとなったが、奏者側も全員一致で給料・福利のカットに合意した<ref>フィラデルフィア管弦楽団奏者、給料・福利のカットに合意︵英語︶[http://articles.philly.com/2011-10-14/news/30279549_1_philadelphia-orchestra-musicians-john-koen]</ref>。
 
本楽団は更生手続き中の18ヶか月間、以前から予定されていた演奏会を一1回もキャンセルせず行い、この間市民からの寄付金も逆に増え続けた。2011年10月のシーズン・オープンの際、本拠地キメル・パフォーミング・アーツ・センターとの新規契約の合意ができず、[[ペンシルベニア大学]]の[httphttps://wwwspaceandevents.vpuluniversitylife.upenn.edu/perelmanquad/101-main-hall-auditorium.php/ アーバイン講堂]で演奏した<ref>[httphttps://www.wqxr.org/#!/blogs/wqxr-blog/2011/oct/10/philadelphia-orchestra-moves-its-season-opening-concert/]</ref>。
 
その一1年後の2012年10月、更生手続きは予定通り完了し、セガンが正式に第8代音楽監督に就任、シーズン・オープンのコンサート<ref>[httphttps://wwwold.philorch.org/sites/default/files/concert/pdfs/The%20Verdi%20Requiem_0.pdf シーズン・オープンのコンサート]</ref>、[[ジュゼッペ・ヴェルディ]]の﹃[[レクイエム (ヴェルディ)|レクイエム]]﹄を、本拠地キメル・パフォーミング・アーツ・センターにて、満員御礼で迎えた。<ref>[http://www.philly.com/philly/news/nation_world/20121021_Nzet-Sguin_takes__Requiem__to_new_place.html]</ref> 。[[ナショナル・パブリック・ラジオ]]は、これを﹁フィラデルフィアの復活﹂<ref>[httphttps://www.npr.org/blogssections/deceptivecadence/2012/10/18/163100834/philadelphia-orchestra-reboots-with-new-music-director フィラデルフィアの復活]</ref>と呼び、他のすべての米国オーケストラが同じように財産難に陥っているなか中、果たして、フィラデルフィアほどの決断力と実行力を持ちえるのか、懸念を示している。　また、[[カーネギー・ホール]]でも、[[ヤニック・ネゼ＝セガン]]と本楽団のコンビネーションがセンセーショナルな成功を果たし<ref>[httphttps://www.nytimes.com/2013/01/19/arts/music/philadelphia-orchestra-with-nezet-seguin-at-carnegie-hall.html センセーショナルな成功]を果たし</ref>、2013年 - 2014年のシーズン・オープン・コンサートに 本楽団を指名した<ref>[httphttps://www.carnegiehall.org/Calendar/2013/10/202/0700/PM/Openingopening-Nightnight-Thethe-Philadelphiaphiladelphia-Orchestra/ 本楽団を指名orchestra-0700pm]した</ref>。
 
2016年6月第一1週、フィラデルフィア管弦楽団を率いての来日公演中に、ニューヨークの[[メトロポリタンオペラ座歌劇場]]が次期音楽監督にヤニック・ネゼ＝セガンを指名する、との正式発表がなされ、メディアを大いに沸かせた。フィラデルフィア管弦楽団の音楽監督を兼務しながらのメトロポリタンオペラ歌劇場音楽監督の就任となる。ニューヨークとフィラデルフィアは、高速鉄道で1時間を少し超えた、感覚としては[[名古屋市|名古屋]]と[[大阪市|大阪]]の距離位置にある。[[ヤニック・ネゼ＝セガン]]は、かつてカラヤンが[[ウィーンオペラ国立歌劇場]]とベルリン・フィルの間を行き来していたような精力的な活動を、フィラデルフィア管とメトロポリタンオペラ歌劇場の間で活躍していくことになる。
 
本楽団は、世界初演や米国初演のコンサート以外に、数々の「世界初」や「米国初」を保持しているが、2012年には、世界で初めて民事再生法の更生手続きを経て復活したオーケストラとなった。<ref>[httphttps://www.bloomberg.com/news/articles/2012-08-21/orchestras-fight-hard-times-through-bankruptcy-seeking-new-model.html]</ref><br><br>。
 
1925年、世界初、電気録音したオーケストラ<br>▼
== 世界・米国初の一覧 ==
1929年、世界初、ラジオ放送されたオーケストラ（[[NBC]]社により）<br>
1948* 1925年、世界初、テレビ放送され電気録音したオーケストラ（[[CBS]]社により）<br>
1973* 1929年、世界初、欧米のラジオ放送されたオーケストラとして、（[[中華人民共和国NBC]]を訪問した。<br>社により）
1988* 1948年、米国世界初、ベートーベン交響曲全集をCDに録音しテレビ放送されたオーケストラ<br>（[[CBS]]社により）
1997* 1973年、世界初（メジャー、欧米のオーケストラとして）、[[ポッドキャスト中華人民共和国]]を訪問したオーケストラ<br>。
1999* 1988年、世界米国初、欧米のオベーケストラとして、[[ーベトナム]]ン交響曲全集を訪問CDに録音した。<br>オーケストラ
2006* 1997年、世界初、レコ（メジャード会社(代理店)を経由せずして、オーケストラとして）[[ホームページポッドキャスト]]から演奏録音をダウンロードできるようした。<br>オーケストラ
2012* 1999年、世界初、民事再生法欧米の更生手続きを経て復活したオーケストラ<br>として、[[ベトナム]]を訪問した。
* 2006年、世界初、レコード会社（代理店）を経由せずして、オーケストラ[[ホームページ]]から演奏録音をダウンロードできるようした。
▲1925* 2012年、世界初、電気録音民事再生法の更生手続きを経て復活したオーケストラ<br>
 
== 音楽監督・首席指揮者等 ==
* [[フリッツ・シェール]]（1900年 - 1907年）
* [[カール・ポーリヒ]]（1908年 - 1912年）
* [[レオポルド・ストコフスキー]]（1912年 - 1938年）
* [[ユージン・オーマンディ]]（1938年 - 1980年）
* [[リッカルド・ムーティ]]（1980年 - 1992年）
* [[ヴォルフガング・サヴァリッシュ]]（1993年 - 2003年）
* [[クリストフ・エッシェンバッハ]]（2003年 - 2008年）
* [[シャルル・デュトワ]]（2008年 - 2012年）
* [[ヤニック・ネゼ＝セガン ]]（2012年 - ）
 
<gallery>
File:Fritz Scheel.jpg|フリッツ・シェール
96 ⟶ 103行目:
File:Riccardo Muti.jpg|リッカルド・ムーティ
<!--サヴァリッシュは使用可能な画像がない-->
File:Christoph Eschenbach (cropped).jpg|クリストフ・エッシェンバッハ
File:Charles Dutoit (1984) by Erling Mandelmann.jpg|シャルル・デュトワ
File:Yannick Nézet-Séguin.jpg|ヤニック・ネゼ＝セガン
109 ⟶ 116行目:
* [[サッデウス・リッチ]]（1906年 - 1926年）
* [[マイケル・グシコフ]]（1926年 - 1927年）
* [[:de:Mischa Mischakoff{{仮リンク|ミッシャ・ミシャコフ]]|de|Mischa Mischakoff}}（1927年 - 1929年）
* [[アレグザンダー・ヒルスバーグ]]（1935年 - 1951年）
* [[ジェイコブ・クラチマルニック]]（1951年 - 1958年）
116 ⟶ 123行目:
* [[エレズ・オファー]]（1995年 - 1998年）
* [[デービッド・キム]]（1999年 - ）
 
== 脚注 ==▼
{{脚注ヘルプ}}▼
<references />▼
 
== 参考文献 ==
124 ⟶ 135行目:
* ''The Philadelphia Orchestra Celebrates Sawallisch 1993-2003'', edited by Sedgwick Clark. 2003, Philadelphia Orchestra, 80 pages.
* ''Within These Walls: A History of the Academy of Music in Philadelphia,'' by John Francis Marion. 1984, Academy of Music/Philadelphia Orchestra, 328 pages.
 
▲==脚注==
▲{{脚注ヘルプ}}
 
=== 出典 ===
▲<references />
 
== 外部リンク ==
* [httphttps://www.philorch.org/ Official website / The Philadelphia Orchestra（英語版）]
* [https://web.archive.org/web/20060211201036/http://artofthestates.org/cgi-bin/performer.pl?ens=68 Art of the States: Philadelphia Orchestra]▼
*[http://www.thephiladelphiaorchestra.com/ The Philadelphia Orchestra Online Music Store]
* [httphttps://www.kajimotomusic.com/jp/artists-projects/k=232the-philadelphia-orchestra/ 招聘会社KAJIMOTOによるプロフィール]▼
▲*[https://web.archive.org/web/20060211201036/http://artofthestates.org/cgi-bin/performer.pl?ens=68 Art of the States: Philadelphia Orchestra]
▲*[http://www.kajimotomusic.com/jp/artists/k=232/ 招聘会社KAJIMOTOによるプロフィール]
 
{{Classic-stubNormdaten}}
{{Music-bio-stub}}
{{US-stub}}
 
{{DEFAULTSORT:ふいらてるふいあかんけんかくたん}}
146 ⟶ 148行目:
[[Category:フィラデルフィアの組織]]
[[Category:ペンシルベニア州の音楽]]
[[Category:1900年設立の組織]]
[[Category:経営再建した企業]]
 
__目次強制__
「https://ja.wikipedia.org/wiki/フィラデルフィア管弦楽団」から取得