「マッシュルーム」の版間の差分
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{{出典の明記|date=2022-04-16}}
{{Otheruses|キノコ|髪型|マッシュルームカット}}
{{生物分類表
| 色 = lightblue
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| 画像キャプション = 一般的なマッシュルーム
| 界 = [[菌界]] Fungi
| 門 = [[担子菌門]] {{sname||Basidiomycota}}
| 綱 = [[真正担子菌綱]] Homobasidiomycetidae
| 目 = [[ハラタケ目]] Agaricales
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| 属 = [[ハラタケ属]] ''[[:en:Agaricus|Agaricus]]''
| 種 = '''ツクリタケ ''bisporus'''''
| 学名 = ''Agaricus bisporus''<br />({{AUY|J.E. Lange|bio=bac}}) {{AUY|Imbach|bio=bac}} (1946)
| 和名 = ツクリタケ
| 英名 = White mushroom<br />common mushroomなど
}}
{{栄養価|name=マッシュルーム、生<ref name=mext>[
'''マッシュルーム'''とは
#食用栽培種である担子菌門ハラタケ科のきのこのみを指す。本項で詳述する。
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'''マッシュルーム'''は[[ヨーロッパ]]から導入された食用栽培種である[[担子菌門]][[ハラタケ科]]の{{Lang|la|{{Snamei|Agaricus bisporus}} (J. Lange) Imbach}}︵{{Lang-en-short|common mushroom, White mushroom}}、{{Lang-fr-short|champignon de Paris}}︶のみを指している。[[和名]]は'''ツクリタケ'''。[[日本]]国内での生産初期の商品名に由来する'''セイヨウマツタケ'''という名称もよく用いられる。 世界中で栽培されており、栽培量も最も多い<ref name="講談社2013"/>。世界で最も多く食されるキノコと推測されている<ref name="日経MJ20191208"/>。ホワイト種やブラウン種がある。 {{Snamei|A. bisporus}}は[[ハラタケ]]{{Lang|la|{{Snamei|A. campestris}} L. : Fr.}}を栽培下で選抜することによって成立したと考えられる。[[ヨーロッパ]]で[[古代ギリシア]]、[[古代ローマ]]の時代から[[ウマ|馬]][[堆肥|厩肥]]などに自然発生していたものを利用していたものが、17世紀頃に[[フランス]]などで人工栽培が行われるようになったといわれている。収穫期である直径2 ==生態==
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次に試みられたのが、優良な菌の選抜と移植であった。[[畑]]に新しい厩肥を盛り上げて[[畝]]を作り、菌糸の蔓延した前回の栽培時の厩肥をそこに移植して土をかぶせる畝床法({{Lang|en|ridge bed system}})が行われるようになったのである。 やがて18世紀になると、この畝床の上に小屋掛けしたり、温室内に畝床を作ったりするようになって、屋内栽培に移行していったが、屋外の畝床法もイギリスなどでは今日まで残存している。フランスではパリ郊外の[[鍾乳洞]]の中に畝床を作ることで大規模栽培が行われるようになった。堆厩肥の発酵技術の基本形も確立し、保存可能なように[[菌糸]]の蔓延した堆肥を乾燥させた種菌︵片状種菌︶も開発された。{{Lang|la|''A. bisporus''}} が選抜によって成立したのもこのころである。このためマッシュルームはフランス語でシャンピニオン・ド・パリ {{Lang|fr|Champignon de Paris}}︵パリきのこ︶と呼ばれ 19世紀初頭になると、フランスで開発された栽培技術が[[ドイツ]]、[[オランダ]]、イギリスといった西ヨーロッパ諸国に、さらには移民によって[[アメリカ合衆国]]にも伝播し、さらにイギリスでは取扱いに便利なレンガ状種菌が開発された。これは堆厩肥と土を混合し、ここにマッシュルームの菌糸を繁殖させたものである。19世紀中頃になると、土をかぶせた堆厩肥を空調を施した栽培舎内で立体的に設置した[[棚]]に載せる棚式({{Lang|en|shelf bed system}})が開発され、アメリカやフランスで採用された。この棚式はアメリカで著しく発展し、19世紀末にはフランスは世界最大の生産国から転落し、アメリカがとって替わることになった。それまで個別の栽培者が秘密主義の中で試行錯誤を繰り返していたのが、この頃から、公開された[[科学]]的[[研究]]の中で栽培技術の発展が図られるようになってきた。この潮流の中から菌糸の無菌純粋培養による種菌が誕生し、[[雑菌]]による病害虫の危険の低い安定した栽培が可能になった。 67 ⟶ 69行目:
欧米で発展を遂げたマッシュルーム栽培は、[[明治]]の中ごろに日本にも導入され、[[新宿御苑]]で試験栽培が行われたが、この時は普及を見なかった。日本における栽培の普及は、様々なキノコの栽培の先鞭をつけ、﹁キノコ栽培の父﹂とも呼ばれた[[森本彦三郎]]による。森本彦三郎は1904年17年間のアメリカやヨーロッパでの修行でマッシュルーム栽培の最新知識と技術を身につけ帰国。1922年に栽培に成功し、その後マッシュルーム栽培事業と[[缶詰]]の輸出を軌道に乗せ、さらに純粋培養による種菌製造を開始し、﹁西洋マツタケ﹂の商品名による種菌販売とともに、栽培の技術指導を行った。 [[第二次世界大戦]]前の日本では、[[大日本帝国陸軍]]の[[軍馬]]が馬厩肥の大供給源であったこともあり、陸軍の[[連隊]]所在地に隣接して、主要な栽培場が起業された。たとえば、[[近衛師団|近衛]][[騎兵連隊#大日本帝国陸軍|騎兵連隊]]、第一騎兵連隊、第十三〜第十六騎兵連隊などを擁する 戦後の日本では、陸軍の解体により栽培用厩肥の供給源は農家の[[耕作馬]]や[[競馬場]]の[[競走馬]]に移行した。また同時に、馬厩肥に依存しない人工の堆肥を用いた栽培も普及していった。この時期のマッシュルーム栽培場は、アメリカの[[缶詰]]市場を主な対象として、1974年には生産量15, かつて国内のマッシュルームの生産地として知られる場所は、栽培用厩肥の安定的な確保という観点から、[[競馬場]]や競走馬の[[トレーニングセンター]]が近隣に所在している所が多かった。[[公営競技]]全般の低迷による[[地方競馬]]の競馬場の廃止で栽培用厩肥を安定的に入手するルートが失われ、これに変わる乗馬施設などからの入手、人工堆肥の使用では調達・輸送などの各種コストなどの面で見合わなくなり、これによりマッシュルームの生産を取りやめた農家も出るようになった。 2010年前後からは、日本で欧州式[[培地]]栽培の普及
=== 手順 ===
マッシュルーム栽培は、﹁[[堆肥栽培]]﹂と呼ばれる方法で、発酵した厩肥を培地 ==== 堆厩肥材料の準備 ====
[[File:IMG 0408 - Hungary - Mushroom Farm.JPG|right|thumb|150px|堆肥栽培のマッシュルーム]]
キノコの生育には[[炭素化合物]]( * イネ科植物の茎葉などの植物質を原料に使って合成堆肥を作る場合は、添加物として[[尿素]]、[[硫酸アンモニウム]]、[[鶏糞]]などの有機、無機の[[窒素肥料]]を主体に、無機塩類源としての[[炭酸カルシウム]]や石膏、[[リン酸]]や[[微量元素]]を補強するための専用添加剤などを加える。 * 実際に使用される窒素源は、[[石灰窒素]]CaCN<sub>2</sub>、[[硫酸アンモニウム]](NH<sub>4</sub>)<sub>2</sub>SO<sub>4</sub>、[[尿素]](NH<sub>2</sub>)<sub>2</sub>CO、[[硝酸アンモニウム]]NH<sub>4</sub>NO<sub>3</sub>、[[塩化アンモニウム]]NH4Cl で、好熱性微生物群の良好な増殖のために、単一の原料を使用せず複数の原料を混合して使用する。培地の[[炭素]] 率 * 無機塩類は、[[カルシウム]]、[[マグネシウム]]、[[リン]]、[[カリウム]]、[[イオウ]]、[[銅]]、[[鉄]]、[[マンガン]]、[[モリブデン]]、[[亜鉛]]等が必要とされるが、各々元素の必要量には諸説あり、十分に解明されていない。市販のコンポスト活性資材では、Na<sub>2</sub>O、K<sub>2</sub>O、CaO、MgO、Fe<sub>2</sub>O<sub>3</sub>、MnO、Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>、SiO<sub>2</sub>、B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>、P<sub>2</sub>O<sub>5</sub> を成分として含有する。 * その他として、微生物の活動活性化とキノコの成長促進のため、[[フェニルアラニン]]、[[メチオニン]]、[[プロリン|プロニン]]等の[[アミノ酸]]類の他、[[インドール-3-酢酸]]や[[脂質]]、[[ビタミンB7]]、[[ビタミンB1]]が生育因子であるとされ、微量が添加される場合がある。 94 ⟶ 96行目:
==== 一次発酵 ====
一次発酵により生成された物は、一般に﹁グリーンコンポスト﹂あるいは﹁床﹂﹁培地﹂とも呼ばれる。原料の﹁厩肥﹂﹁藁﹂﹁水﹂﹁石膏﹂などを混合して、高さ1. 一次発酵完了時は、以下の状態になる。
* 暗褐色で、藁の表面は湿って光沢がある。
* やや粘りけがあり、握ると手が汚れる。
* 片手で強く握りしめると、指間から水が少しにじむ程度の水分を含む(68- 73%)。
* 藁は弾力性があり、引っ張ると抵抗があり、引きちぎれる。
* [[アンモニア]]臭や厩肥臭が若干残り、[[水素イオン指数|pH]] は7.8 - 8.2 程度。
* 窒素量は1.8 - 2.0%で、アンモニア量は0.15 - 0.4%。
* 乾燥した部分には[[放線菌]]の白色の斑紋がみられる。
==== 造床 ====
﹁床詰め﹂とも呼び、通常は3回の切り返しが済んだグリーンコンポスト ==== 二次発酵 ====
「床詰め」を行ったグリーンコンポストは二次発酵を行う。二次発酵の目的は、培地に生存する病原菌や害虫を除くことと培地の熟成である。未熟な培地には生育に悪影響を及ぼす菌と、一次発酵中に生成した遊離アンモニアが残っており、アンモニアが0.07%以上だとマッシュルーム菌糸は生存できない。そこで蒸気で加熱し、発酵を促進することでアンモニアの除去と発酵熱により有害菌の殺菌をする。発酵開始から、おおむね 7日で二次発酵は終了し、発酵が終わる頃には炭素率
; 代表的な二次発酵手順
:# 温度平衡 :# 殺菌 :# 熟成 : ここに示した時間
==== 接種 ====
一般に、「小麦粒」「[[ライ麦]]粒」「コンポスト」に菌糸体を純粋培養したものを種菌として使用する。接種は、培地温度が25
代表的な接種方法は、
* 点接種法、種菌を床表面から
* 表面接種法、菌床の表面下
* 混合接種法、培地全体と立体的に混合する。
収量と品質面で優れている方法は「混合接種法」で、世界的に現在の主流になっている。
==== 培養 ====
接種後2日目までは種菌は活動せず、3日目から種菌の周囲に綿毛状の菌糸体が増殖を開始し、数日後に培地に徐々に蔓延 万一、[[アオカビ]]類の侵入を認めた場合、その部位の培地を除去する。
==== 覆土 ====
接種から約2週間で菌糸体が十分に蔓延する。蔓延の状態を見極め、培地全体を滅菌処理して水分を60 ==== 育成と原基形成 ====
覆土作業から数日で菌糸体は覆土層に侵入を始め、約10日で覆土層の約70%程度に蔓延する。約14日頃に表面にコロニーが形成されたら、表土を撹拌する﹁菌掻き﹂作業を行い、子実体が株で発生することを防ぐ。菌掻きの2日後、散水と共に室温を16 ==== 収穫 ====
発生温度は8 ==== 廃床 ====
収穫の終わった培地 ==
欧米では一般的な食用キノコだが、日本では他のキノコに比べて消費量が少なく、流通価格も高めである{{sfn|主婦の友社編|2011|p=223}}。主な[[旬]]は4 - 6月と9 - 11月とされ、出荷量が増えるこの時期は手頃な価格で出回るようになる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=223}}。水煮や缶詰に加工したものが出回っているが、生のものは食感や香りなど風味が優れている{{sfn|主婦の友社編|2011|p=223}}。生鮮品は、傘が丸く厚みがあるもので、軸が短く太いものが良品とされる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=223}}。新鮮なうちならば、加熱せずに[[サラダ]]や[[マリネ]]などにしても食べられる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=223}}。ホワイト種は、傘の表裏、軸のすべてが真っ白いものが、鮮度・味とも良品である<ref name="講談社2013"/>。
そのまま、あるいは[[水煮]]にして[[缶詰]]として流通している。香りは薄いが味がよく、[[西洋料理]]によく用いられる。[[バター]]炒めにしたり、[[スパゲッティ]][[ミートソース]]、[[グラタン]]、[[オムレツ]]などにされたりする。キノコとしては珍しく、加熱せずに薄切りにして[[サラダ]]として生食することもある。ただし、生のマッシュルームは[[発がん性物質]]である{{仮リンク|アガリチン|en|Agaritine}}及び[[フェニルヒドラジン]]が加熱したものと比べて多く含んでいることに留意する必要がある。▼ マッシュルームは旨味成分が他の食用キノコよりも豊富に含まれているのが特徴で、そのもととなっている旨味成分は[[グアニル酸]]と[[グルタミン酸]]である{{sfn|主婦の友社編|2011|p=223}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=160}}。グアニル酸については、シイタケの3倍もの量が含まれる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=223}}。栄養的には熱量が100[[グラム]] (g) あたり11[[キロカロリー]] (kcal) と低カロリーであるが{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=160}}、[[ビタミンB群]]や[[食物繊維]]が豊富に含まれる{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=160}}。
=== 利用加工食品 ===▼
=== 調理 ===
そのまま、あるいは[[水煮]]にして[[缶詰]]として流通している。香りは薄いが味がよく、[[西洋料理]]によく用いられる。[[バター]]炒めにしたり、[[スパゲッティ]][[ミートソース]]、[[グラタン]]、[[オムレツ]]などにされたりする。ホワイトマッシュルームは、白さを生かして[[クリームシチュー]]やサラダに使われる{{sfn|主婦の友社編|2011|p=223}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=160}}。ブラウンマッシュルームは、ホワイト種よりも濃厚な風味を生かして、[[炒め物]]やシチュー、グラタンなどに利用される{{sfn|主婦の友社編|2011|p=223}}{{sfn|猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|2012|p=160}}。 ▲ ;クオーン
:マッシュルームから抽出した蛋白質で作った代用食品(代用肉)のこと。'''ベジハム'''と呼ばれることもある。
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== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist
<ref name="講談社2013">{{Cite book|和書|editor=講談社|title = からだにやさしい旬の食材 野菜の本|date=2013-05-13|publisher = [[講談社]]|isbn=978-4-06-218342-0|page=211}}</ref>
}}
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書|author =猪股慶子監修 成美堂出版編集部編|title = かしこく選ぶ・おいしく食べる 野菜まるごと事典|date=2012-07-10|publisher = [[成美堂出版]]|isbn=978-4-415-30997-2|page =160|ref=harv}}
* {{Cite book|和書|author =主婦の友社編|title = 野菜まるごと大図鑑|date=2011-02-20|publisher = [[主婦の友社]]|isbn=978-4-07-273608-1|page =223|ref=harv}}
== 関連項目 ==
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== 外部リンク ==
* [http://www.kinoko-nichino.com/mashroom.htm マッシュルーム施設栽培方法]
*
* [http://www.shokusan.or.jp/pdf/nousanjas/4-3.pdf 生産情報公表農産物のJAS 規格ガイドブック きのこ] 食品産業センター
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[[Category:食用キノコ]]
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