ロンドンバスは、TfL(Transport for London、ロンドン交通局)の付属機関であるロンドンバス会社がグレーターロンドン(大ロンドン市)市内で運営している路線バスサービス。ロンドン市内を拠点として走る全ての路線バスは基本的に赤色を基調とした塗装で定められ、複数の民間運行会社によって運行されている。

ロンドンバス会社
親会社 ロンドン交通局
設立 1999
本社 Palestra, Blackfriars Road, London
運行場所 London, UK
運行区域 大ロンドン市; バッキンガムシャー; エセックス; ハートフォードシャー; ケント; サリー, イングランド
運行種別 Bus transport network
路線数 673路線(ナイトバス 52路線)
停留所 19,000
車両 8000
日乗客数 6000000人/週
ウェブサイト www.tfl.gov.uk/buses
ロンドンのバス停留所 バス停は全てこのデザインである。

概要

編集

ロンドンの市内を起点として走る全ての路線はTfL;Transport for London(ロンドン交通局)の付属機関であるロンドンバス会社で運営され、オペレーターである民間の運行会社が各路線ごと、数年に一回の入札制度で運行する権利が与えられるシステムとなっている。そのため、運行会社が5年から10年で変わる事があるが、赤色のバスから変わることはない。 また、TFL組織の厳しい運行監視システム(iBus)と調査員による運行実態調査が行われ、バスサービスとして正常ダイヤ(運転本数・頻度として)で運転されているか、乗客のキセル乗車を黙認していないかの調査が行われ、著しくサービスに欠く場合は、運行権利を更新せず強制的に取り上げる事がある。

市内に走る600を超える路線(番号では900番台まで存在)の数と扱うバス停は、バスの輸送管理機関では世界最大の規模を有している。ロンドンバス会社ではルートマスターを始めとする全てのバス車体に赤色の塗装を定め、8000台を超える赤色のバスがロンドン市内を走行していることから、2階建てバスと合わせてロンドンの代名詞ともいえる。 路線ごとに使用するバス車種が異なるものの、市内中心部を通過する路線の殆どは2階建車両で運行され、走行する道路状態や乗客数に応じてシングルデッキと呼ばれる平屋のバスが運行される。ベンディバスと呼ばれる連接バスも一部高需要路線で導入されたが、2011年12月で連接バスの運行が終了した。

また、ロンドンバス会社はバス路線全体の運営管理し、路線バスを直接運行することはない。業務内容としては運行管理の他、緊急時の救援活動、プロモーション活動、ダイヤ編纂、路線マップの作成とバスステーションの運営管理である。バスレーンの設置はロンドンバス会社が申請しTfLと警察が精査して行政が設置する仕組みになっている。

なお、長距離バスの代名詞ともいえるナショナル・エクスプレス社のナショナルエクスプレス・コーチ、ステージコーチ社の格安長距離バスのメガバス、ナショナル・エクスプレス社の国際越境バスのユーロラインズなどが位置づけるイングランドにおける主要拠点、ロンドン・ヴィクトリア・コーチテーションはロンドンバスではなくTfLの直轄組織で運営されている。

歴史

編集

組織

編集
 
馬バス

ロンドンにおいてバスの歴史は地下鉄を凌いで長いとされるが、バスの起源は馬車による輸送であったとされる。1829年にジョージ・シリビアが路上にて自身の馬と馬車による旅客輸送を現在のパディントン - シティ間で開始し、それに乗じて1850年にトーマス・ティリングがバス会社(London General Omnibus Company、以下LGOC)として法人化し、1855年に馬車バスとして運行開始している。

 
初めてのモーター動力バス

LGOC社が1902年からモーター動力車を導入し、それに続きトーマス・ティリングが1904年が初めて自動車によるバス運行が始まった。1909年からLGOC社が自ら車両の製造を行い自動車バスと馬車バスが併用されてきたが、1912年にロンドン地下鉄会社がLGOCを買収し、1914年までに馬車による運行が終了した。 その後LGOC社は1922年に地下鉄会社と共に現在のTFLの前身である国営のロンドン旅客輸送機関の一部として統合された。その後は数度に渡り改組・名称変更が行われたが、第二次世界大戦の戦後不況と、長く官営だった影響で国の財政事情の悪化とストライキによる都市交通の麻痺が多発したことで、1980年代に当時の首相マーガレット・サッチャーによりロンドン市内の公共交通機関の運営は大ロンドン市へ委譲され、地方幹線鉄道とバス運行のみ民営化されることが決定された。地下鉄を除く鉄道事業とバスの運行事業は90年代に入るまでに実行に移され、2000年に中央政府が所有していたロンドン市内の交通に関する一切の権利はロンドン市に移譲された。

2階建車両の誕生は、1800年代中盤、馬車運行が庶民の足となる一方で、人気を博した当時の馬車では慢性的な輸送力不足が問題となっていた。輸送力の改善は馬数の問題もあり実現はできず、当時の市民は馬車の天井に乗るにまでに至たり、やむなく天井部分に座席を設置し、2階建車両が誕生したとされる。 自動車バスによる運転は初期の頃からLGOC社が1960年代まで車両を生産したが、生産するだけでなく設計やバス部品を供給するなど総合バスメーカーとしての一面もあり、後にこの事業は法人化され(AEC社)グループ事業の中核となる。ロンドンバスの基本設計や仕様を構築し、数社あったバスメーカーのシェアの殆どを握り、ロンドンの路線バスの殆どが、AECによって造られた赤色バスであった。 1920年代初頭に熾烈な運賃の価格競争が始まり、1924年に中央政府によるロンドン市内バス事業の統合でバス事業者兼メーカーにより異なっていた配色が、市内バスシェアのトップであったLGOC社の赤色に統一されることになった。

ルートマスターの登場
 
ルート38の最終運転日、ロンドン東部ハックニーにて

AEC195619681970198021990使20002005129159退22019

退
 
38 
 
25
 
3退

2200250752112

""

2008退 150

20099507521223822010201112退

5075212便10
新型ルートマスターの登場
 
プレス発表会場へと向かうニュールートマスター

2008年、ロンドン市長選挙でポリス・ジョンソンが当選し、早い段階で連接バスの早期退役が上げられ、新型ルートマスターの企画設計が公募された。2009年にライトバス社の設計、デザインが選定され「ニュー・バス・フォー・ロンドン」をテーマに2010年5月に公表し試作車の製作を開始した。試作車は2011年11月にサザークシティ・ホール - トラファルガー・スクエアで市内を走行し、トラファルガー・スクエアをはじめとした各地で一般公開を行った。オペレーターのArriva London社に受け渡し、2012年2月27日、かつて連接バスを最初に撤退させたから38番系統で定期運行を開始した。異常ともいえる市長の過剰な新型バスへの思い入れから、市民からは市長の名をもじり、ボリスマスター、ボリスバスとも呼ばれる。

当形式は都心部を中心に多くの系統で運用されている。なお、車体仕様がほぼロンドンに特化しており、他の都市での定期運用は無い。

運用

編集
 
渋滞中のロンドン中心部 オックスフォード・ストリート

普通路線バス

編集
 
シティを通過するルート11

1600700 - 80090050060090024

11 - 1111 -  -  -  -  - / - 

1016

10TFLTFL

51 -  - 退便

エクスプレス・ルート

編集
 
エクスプレスルート607

幾つかの普通路線バスのルートだけを統合して、急行として運行する路線が3路線ある。運行区間が20㎞を超え料金も全区間通して同額なため、利用者は多い。

ルート607:ホワイトシティ - アクスブリッジ

ルートX26:ウエスト・クロイドン - ヒースロー・セントラル(ヒースロー空港内)

ルートX68:ウエスト・クロイドン - ラッセルスクエア(平日の一部時間帯のみ運行)

一部バス停しか停車しないので、全区間での到達時間は普通路線バスと比べ早くなる一方、特別な道路を走るわけではないので、市街地の渋滞時や追い抜きができない区間での到達時間は普通路線とさほど変わるものではない。これらのルートではナイトバスの設定は無く、普通の一般路線の運転便数と比べ、少ない設定である。ルートX68はロンドン中心部へ向かう便は朝の数便のみ、クロイドン方面行きの便は夕方早い時間の数便のみの限定ダイヤで運行されている。

ナイトバス

編集
 
最終運転間近の早朝ナイトバス

普通バスの最終時刻が日本と比べ遅いため、運転開始時刻は午前1時前後であることが多く、地下鉄終電後の市民の交通手段に大きく寄与している。高需要かつ主要路線の番号の頭にNの文字が記され、全ての路線にナイトサービスがあるわけではない。乗客の多くは地下鉄や鉄道最終運転後の帰宅困難者や夜間・早朝出勤者或いは退勤者であることが多く、鉄道路線とほぼ並行した輸送体系を取っている。そのため、運行距離が昼行バスと比べ異様に長く、片道で15マイル(約24 ㎞)以上であることが多い。また、深夜料金が存在せず、運賃は昼間と変わらない。このため、深夜でも区間によって乗車率は高く、昼間より多い場合がある。

同じく夜間帯運行の24時間バスとの相違点は、24時間バスは交通に支障がない限り同じルートで終日運行されるが、ナイトバスの場合は昼間の普通バスと起点やルートが異なったりすることが多く、例外はあれど、起点または終点がトラファルガー・スクエアチャリング・クロスであったり、そこをわざと通過するように組まれている。ナイトバスの運行は前述の通り、午前1時前後から午前5時前後までの運行となる。

ナイトバスルート N9はロンドン市内からロンドン・ヒースロー空港を結ぶ路線で、地下鉄ピカデリーラインの終電後から始発前にかけて発着する航空便の利用者にとって、空港またはロンドン市内までの唯一の公共交通手段となっている(ただし、週末はピカデリーラインの終夜運転を利用可。)。この路線は多頻度運行であるが、ピカデリーラインの初電運転前に最終運転する。

ヘリテージルート

編集

AEC社最後にして最大のヒット車であったルートマスターが本系統から退役が発表されるも、市民から存続が熱望され市内の観光客輸送を兼ねる2路線に投入されていた。なお、この系統で運転されるバスは従来通り車掌が乗務していた。回送以外の範囲外の運転はチャーターバス会社による運行しかない。しかし、乗客減に伴い2019年までに運行を終了した。

運賃

編集

ロンドン市内の赤色バスの運賃は基本的には終日同額だが、現金での支払いは不可能で、オイスターカードかクレジットカードのコンタクトレス決済による支払いに限られる。運賃は一律1.75ポンドで、さらにCappingというシステムが自動的に適用され、1日、1週間の利用運賃の合計が一定金額を越えた場合(バス乗車の場合は2023年10月現在Daily cap5.25ポンド、Weekly cap24.70ポンド)は、それ以降、乗車の際にタッチしても支払は生じないことになっている。バス停に掲示される系統番号が黄色の場合は事前に券売機でチケットを購入するか、オイスタカードを所持する必要があり、基本的に現金での乗車はできない。バスのみの一日フリーパスで4.20ポンド、7日間で18.80ポンド、一ヶ月で72.20ポンドとなり定期券の方が割引になる。また、地下鉄定期券を購入すれば、ゾーン関係なしに自動的にバス定期券が付帯される。(運賃制度の変更などもあるので渡航前、購入前にTfLサイトを要参照)

オイスターカードは日本におけるICカードSuicaがモデルであるとされるが、料金の収受システムが大きく異なり、交通機関の利用のみに特化されている点はあれど、使用することで運賃が安くなる点など、その実用性は非常に高い。

このようにオイスター・カードの使用に限れば、世界都市のバス交通システムとサービスの中でも、移動手段として運賃はかなり格安な方である。これはTfLが徴収権を持つ、自動車がロンドンに入るだけで課税されるコンジェスチョン・チャージ渋滞税と駐車違反金(警察発行の切符に限る)が経営資源となっているためで、これらの税制や罰則体系に対して市民の不満もあるが、こうした形で市民に還元されている。

使用車両

編集
 
ロンドン東部 ボウ・バスガレージ

使使

2

使調
ダブルデッキバス(二階建)
シングルデッキ(平屋タイプ)

運行会社

編集



20123

Abellio London65411

Arriva LondonAG1091636

CT Plus10  

First LondonLSE90835

Go Ahead GroupLSE1351485

London United1008721

MetrolineSGX82985

Quality Line1490

Stagecoach LondonLSE971022

Sullivan Buses
 
一部バスでは乗客にも映像が提供される

市内の総合バスロケーションシステムで2006年から試験的に導入され、2008年にはロンドン交通局が管理する全ての車両に導入された。バス運営の近代化と運行管理のIT化に一役買っている。

アナウンス

ルートマスターを除くロンドン交通局が管理する全てのバスの行き先と次駅案内自動アナウンスが、このiBusシステムによる。およそ19000あるバス停と600近いバス路線、30000通りアナウンスが存在し、運転上の支障や誘導案内は乗務員によって操作される場合もあるも、市内のバス自動アナウンスの声はすべて同じ声である。 まれに迂回運行する場合があるが、その迂回区間に入る手前でこれもまた自動でアナウンスが入るが、システムが正常に作動していないバスは、次駅表示とアナウンスがなく、運転士がアナウンスすることはほとんどないので注意が必要である。 この自動アナウンスシステムとロケーションシステムは完全に情報共有されており、バスのトラッキングシステムがGPS機能で管理され、精度向上の試験が幾度も重ねられた。現在は車両位置やスピード、道路状況などが30秒毎に情報が送信され、中央管制で計算されてロケーション案内される。そのためロケーションシステムのカウントダウンの精度は高い。

CCTV

ルートマスターを除く全てのバスに監視カメラ(CCTV)が設置されている。バスによっては10台前後の設置があるが、これは2005年のロンドン同時爆破事件以降、バス車内もテロの脅威にさらされている事を再認識したTfLや中央政府の防犯意識が高まったためと言える。犯罪者の追跡はもちろん、バス車内の防犯に貢献している。また、この監視カメラの目は運転士にも向けられ、乗務員の不正防止や危険運転を監視する意味でと安全運行に役立っている。

アプリケーション

2011年からweb上でのロケーションとカウントダウンが閲覧可能となるなど、大幅に利便性が向上した。スマートフォンでもアプリケーションの一つとして複数存在する。 以前はバス停の固有番号をテキスト(ショートメール)で送信し、中央管制から返信されるというシステムであったが、精度が悪いうえに料金が掛ることから普及するには至らなかったが、現在でもバス停の固有番号から発着案内を検索することが可能である。

ロンドン同時爆破事件

編集
 
ユーストンを出る30番系統
 
Spirit Of London号

200577850394730222132

30309935200947250



721使 26退

2721"Spirit of London"1

3010TfL302620116"Sprit of London"15

主要バス停とバスステーション

編集
 

400500


関連項目

編集

外部リンク

編集