「不当利得」の版間の差分
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* 類型説(類型論)
: 公平説に対しては、その後、ドイツ民法学において === 具体的な類型化 ===
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==不当利得の要件==
=== 不当利得の一般的要件 ===
# 他人の財産または労務により利益を受けること('''受益''')
#: 受益とは財貨の給付を受けることを意味する<ref>内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、568頁</ref>。積極的利益(他者の行為により財産が増加した場合)のみならず消極的利益(他者の行為により本来であれば減少したはずの財産が減少しなかった場合)をも含む<ref>川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、370頁</ref>。
# 他人に損失を及ぼしたこと('''損失''')
#受益と損失の両者に'''因果関係'''があること▼
#: 損失とは他人による財貨の給付を意味する<ref>内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、569頁</ref>。積極的損失(財産が減少した場合)のみならず消極的損失(本来であれば増加したはずの財産が増加しなかった場合)をも含む<ref>川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、371頁</ref>。
#利得について'''法律上の原因がない'''こと▼
▲# 受益と損失の両者に'''因果関係'''があること
#: 因果関係をめぐっては、直接的なものに限るとする直接的因果関係説、社会観念上のもので足りるとする社会観念的因果関係説(通説)、因果関係は要件としては実質的な機能をもたないとみる因果関係緩和説が対立している<ref>川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、372頁</ref><ref>内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、569-574頁</ref>。このうち因果関係は独立の要件とする意味に乏しいとする学説は、因果関係は受益と損失という同一の事実の両面であって当事者の確定程度の意義しか持たないとみるものである<ref>内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、569頁</ref>。なお、因果関係に関わる問題として後述の転用物訴権や騙取金弁済の問題がある。
▲# 利得について'''法律上の原因がない'''こと
#:判例によれば正義公平の観念上において正当とされる原因を指す(大判昭11・1・7民集15巻101頁)<ref>川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、376頁</ref>。不当利得の判断において中心的位置を占める<ref>内田貴著 『民法Ⅱ 第3版 債権各論』 東京大学出版会、2011年2月、574頁</ref>。
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==== 給付利得 ====
給付利得の類型においては、財貨の給付を受けたことが受益で、財貨を給付したことが損失である。たとえば、売買契約で買主が売主に代金を支払った後に契約が無効であるとされた場合、売主が代金を受け取ったことが受益に当たり、買主が代金を支払ったことが損失に当たる。そして両者の因果関係は、受益と損失が表裏一体であるのであまり問題とならない︵当然に因果関係があると認められる︶。 次に「法律上の原因がないこと」というのは、給付利得の場合、一見有効だった契約などの法律関係が実は無効であったなどの理由により存在しなかったということを意味する。
==== 侵害利得 ====
侵害利得の類型においては、権限なく他人の財貨を利用して得た利益が受益である。一方、勝手に自己の財貨を利用されたことによって被った損害が﹁損失﹂であるが、その実態は不明確であり、侵害利得の場合において﹁損失﹂の要件はあまり重視されない。因果関係については、受益と損失の間に﹁直接の因果関係﹂がなくてはならないという裁判例がある。たとえば、A︵受益者︶がB︵損失を受けた者︶から金をだまし取った場合には﹁直接の因果関係﹂があるが、Aの友人ZがBから金をだまし取ってAにプレゼントした場合には﹁直接の因果関係﹂はないとされる。とは言うものの、後者のような事例でもBのAに対する不当利得返還請求を認めた判決もあるため、結局ここでいう因果関係は﹁不当利得返還請求を認めた方が良いような因果関係﹂という同義反復的なものでしかない。 |