「不当利得」の版間の差分
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* 給付利得
: 給付利得とは、外形的には有効な契約など︵表見的法律関係と呼ばれる︶による財貨の移転ののち、当該法律関係が無効・取消し・解除によって清算の対象となる類型を指す<ref>内田貴著 ﹃民法Ⅱ 第3版 債権各論﹄ 東京大学出版会、2011年2月、566-568頁</ref><ref name="kawai368"/>。その性質は財貨帰属秩序の回復であるとされ<ref name="oshima166">大島俊之・下村正明・久保宏之・青野博之著 ﹃プリメール民法4第2版﹄ 法律文化社︿αブックス﹀、2003年3月、166頁</ref>、契約の解除に準じて処理すべきとされ<ref name="wagatsuma403"/>、当事者間の公平の観点から[[同時履行の抗弁権]]や[[危険負担]]の規定が適用される<ref name="uchida568">内田貴著 ﹃民法Ⅱ 第3版 債権各論﹄ 東京大学出版会、2011年2月、568頁</ref>。 * 侵害利得(財貨利得)
: 侵害利得とは、何らの法律上の原因も存在しないまま、相手の権利を侵害して利益を受けている者がいる場合に、そこで得られた利益の返還を求める類型を指す<ref name="uchida568"/><ref>川井健著 ﹃民法概論4債権各論 補訂版﹄ 有斐閣、2010年12月、369頁</ref>。その性質は財貨運動秩序の巻き戻しであるとされる<ref その他、以下のような類型が用いられることもある。
* 費用利得
: ある者が他人の財産のために費用を負担した場合(費用償還しうる関係)を不当利得の一類型とするもの<ref name="oshima167">大島俊之・下村正明・久保宏之・青野博之著 『プリメール民法4 第2版』 法律文化社〈αブックス〉、2003年3月、167頁</ref>。
* 求償利得
: ある者が他人の債務を弁済した場合(求償しうる関係)を不当利得の一類型とするもの<ref
<br />
*なお、(ⅰ)財貨帰属法 (ⅱ)財貨移転法 (ⅲ)債務負担法 の3つの法理から説明する見解もある。<br />
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#: 損失とは他人による財貨の給付を意味する<ref name="uchida569">内田貴著 ﹃民法Ⅱ 第3版 債権各論﹄ 東京大学出版会、2011年2月、569頁</ref>。積極的損失︵財産が減少した場合︶のみならず消極的損失︵本来であれば増加したはずの財産が増加しなかった場合︶をも含む<ref>川井健著 ﹃民法概論4債権各論 補訂版﹄ 有斐閣、2010年12月、371頁</ref><ref>我妻栄・有泉亨・川井健著 ﹃民法2 債権法 第2版﹄ 勁草書房、2005年4月、405頁</ref>。 # 受益と損失の両者に'''因果関係'''があること
#: 因果関係をめぐっては、直接的なものに限るとする直接的因果関係説、社会観念上のもので足りるとする社会観念的因果関係説︵通説︶、因果関係は要件としては実質的な機能をもたないとみる因果関係緩和説が対立している<ref name="kawai372">川井健著 ﹃民法概論4債権各論 補訂版﹄ 有斐閣、2010年12月、372頁</ref><ref>内田貴著 ﹃民法Ⅱ 第3版 債権各論﹄ 東京大学出版会、2011年2月、569-574頁</ref>。判例は直接的因果関係説をとっているが︵大判大8・10・20民録25輯1890頁︶、社会観念的因果関係説をとったとみられる判例も登場している︵最判昭49・9・26民集28巻6号1243頁︶<ref name="kawai372"/><ref name="oshima169">大島俊之・下村正明・久保宏之・青野博之著 ﹃プリメール民法4第2版﹄ 法律文化社︿αブックス﹀、2003年3月、169頁</ref>。なお、因果関係に関わる問題として後述の転用物訴権や騙取金弁済の問題がある。 # 利得について'''法律上の原因がない'''こと
#:判例によれば正義公平の観念上において正当とされる原因を指す︵大判昭11・1・7民集15巻101頁︶<ref>川井健著 ﹃民法概論4債権各論 補訂版﹄ 有斐閣、2010年12月、376頁</ref>。不当利得の判断において最も重要とされ中心的位置を占める要件である<ref name="uchida574">内田貴著 ﹃民法Ⅱ 第3版 債権各論﹄ 東京大学出版会、2011年2月、574頁</ref><ref>我妻栄・有泉亨・川井健著 ﹃民法2 債権法 第2版﹄ 勁草書房、2005年4月、407頁</ref>。 66行目:
==== 侵害利得 ====
侵害利得の類型においては、権限なく他人の財産を利用して得た利益が受益である。一方、勝手に自己の財産を利用されたことによって被った損害が﹁損失﹂である。しかし、侵害利得の場合には具体的な受益と損失を数量化することが困難な場合もあるとされ<ref 侵害利得における﹁法律上の原因がないこと﹂というのは、給付利得の場合とは異なり、外形的にも何ら具体的法律関係が存在しないことを意味する<ref>内田貴著 ﹃民法Ⅱ 第3版 債権各論﹄ 東京大学出版会、2011年2月、575頁</ref>。 76行目:
返還すべき物は原則として利得の原物返還によるが、社会観念上不能であれば価格返還(返還時の価格)による<ref>我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法2 債権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、411-412頁</ref>。
返還義務の範囲は後述のように善意の受益者と悪意の受益者とでは異なるが︵善意の受益者に過失があった場合の扱いについては見解が分かれている︶、後述のように給付利得の場合にはこの区別は適合しにくい面があるとされる<ref name="uchida601">内田貴著 ﹃民法Ⅱ 第3版 債権各論﹄ 東京大学出版会、2011年2月、601頁</ref><ref name="oshima174-175">大島俊之・下村正明・久保宏之・青野博之著 ﹃プリメール民法4第2版﹄ 法律文化社︿αブックス﹀、2003年3月、174-175頁</ref>。<br /> 当事者双方に返還義務を生じる場合には両者は同時履行の関係に立つ(明文はない。533条類推適用)。<br />
なお、不当利得返還請求権は通常の債権と同様に10年の[[消滅時効]]にかかる([[b:民法第167条|167条]]1項)。
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=== 類型論との関係 ===
==== 給付利得 ====
不当利得の範囲は受益者の主観︵善意・悪意︶に応じて異なるが、この区別は内容の点からみると給付利得においては妥当でない場合があり、全体的な公平の点から調整を図る必要性があるとされる︵強迫による売買によって商品の引渡しを受けた者が当該売買を取り消した場合にも悪意者として扱うべきでないとされる︶<ref name="uchida601"/><ref ==== 侵害利得 ====
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