「八ヶ岳」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
きき |
rvv タグ: サイズの大幅な増減 |
||
1行目:
{{出典の明記|date=2018年6月23日 (土) 06:19 (UTC)}}
{{山系
|名称=八ヶ岳
|画像=[[ファイル:Minami-Yatsugatake from Mt.Kitayokodake 05.jpg|280px]]
|画像キャプション=[[北横岳]]から望む南八ヶ岳
|所在地={{JPN}}<br />[[山梨県]]・[[長野県]]
| 緯度度 = 35 | 緯度分 = 58 | 緯度秒 = 15
| 経度度 = 138 |経度分 = 22 | 経度秒 = 12
|最高峰=[[赤岳 (八ヶ岳山系)|赤岳]]
|標高=2,899
|延長=30
|種類 = 火山群
}}
'''八ヶ岳'''︵やつがたけ、'''八ケ岳'''とも表記される︶は、[[山梨県]]と[[長野県]]に跨る[[山塊]]。南北30 km余りの山体で、大[[火山]]群である。[[深田久弥]]が選定した[[日本百名山]]の一つ。 ﹁八ヶ岳﹂は特定の一峰を指して呼ぶ名前ではなく、山梨・長野両県に跨る山々の総称であるが、その範囲は﹁[[夏沢峠]]以南のいわゆる南八ヶ岳のみ﹂﹁南八ヶ岳及び[[北八ヶ岳]]の領域︵蓼科山を除いた領域︶﹂﹁[[蓼科山]]まで含んだ[[八ヶ岳連峰]]全体﹂など様々な定義がある。日本百名山でいう八ヶ岳は南八ヶ岳のみを指す{{efn|八ヶ岳連峰では他に[[蓼科山]]も日本百名山に選ばれている。}}。 ﹁八ヶ岳﹂の由来は、﹁八百万﹂などと同じように、山々が多く連なる様子から﹁たくさん﹂という意味で﹁八﹂としたとも、幾重もの谷筋が見える姿から﹁[[谷戸]]︵やと︶﹂にちなんで名づけられたとも、文字通り八つの峰に見えるからとも、複数のいわれが存在する。 == 概要 ==
[[File:Yatsugatake Volcanic Chain 3D 2012 a.jpg|thumb|八ヶ岳火山列の火山体地形図]]
[[赤岳 (八ヶ岳山系)|赤岳]]を[[最高峰]]に[[横岳 (八ヶ岳)|横岳]]などで構成。その山容は、[[夏沢鉱泉]]と[[本沢温泉]]を結ぶ夏沢峠を境界として、北八ヶ岳と南八ヶ岳に大きく分けられる。北八ヶ岳は、樹林帯が山稜近くまで続き、また比較的なだらかな峰が多く、湖沼も点在する。一方、南八ヶ岳は、主峰の赤岳をはじめ、横岳・[[硫黄岳 (八ヶ岳)|硫黄岳]]・[[阿弥陀岳]]の鋭い峰々や、横岳西面の大同心・小同心に代表される岩峰群などがあり、急峻な地形となっている。このため、日本有数の[[ロッククライミング]]の岩場があり、また冬場は氷瀑の[[アイスクライミング]]でも知られる岩稜が中心となっている。このように、南北の山容は対照的である。 これらのほとんどのエリアが、[[八ヶ岳中信高原国定公園]]に指定されている。
この一帯は、火山地帯のため、多くの[[温泉]]を有している。火山としての八ヶ岳は歴史時代、確実な[[噴火]]記録は残っていないが、[[888年]]に北八ヶ岳の[[天狗岳]]が崩壊し、その結果、[[松原湖]]などの湖が誕生したと考えられている。崩壊の原因は噴火とも地震とも言われているが、地震、噴火とも今もって全く証拠が見つからず、大きな謎になっている<ref>{{Cite web |url=http://www.hayakawayukio.jp/opinion/888.html |title=宙に浮いてしまった888年八ヶ岳崩壊の原因 |publisher=[[群馬大学]]教育学部 [[早川由紀夫]]研究室 |accessdate=2016-11-04 }}</ref>。また歴史上の記録には残っていないが、[[北横岳]]には地質的に新しい[[溶岩]]噴出があり、最近の研究では600 - 800年前の噴出と見られている<ref>[http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/334_Yokodake/334_index.html 気象庁 | 横岳]</ref>。 広大な裾野には、東側の[[清里高原]]や[[野辺山高原]]、西側の[[富士見高原]]や[[蓼科高原]]などが広がっており、夏の冷涼な気候を利用して[[レタス]]や[[キャベツ]]などの高原野菜の栽培が行われている。
山麓には[[伏流水]]が湧くため、特に西南側の裾野一帯にかけて[[縄文時代]]の遺跡が濃密に分布する。長野県側では[[井戸尻遺跡]]や[[尖石遺跡]]がある。山梨県側では縄文草創期の[[神取遺跡]]︵[[北杜市]]、旧・[[北巨摩郡]][[明野村]]︶や[[青木遺跡 (北杜市)|青木遺跡]]をはじめ、[[諸磯貝塚|諸磯式期]]の[[天神遺跡]]︵旧・[[大泉村 (山梨県)|大泉村]]︶がある。縄文中期には拠点集落が山麓地域から[[甲府盆地]]へ移るが、八ヶ岳山麓でも[[敷石住居]]群が見られる上ノ原遺跡がある。後晩期には全域的に遺跡数が減少するものの、[[金生遺跡]]︵旧大泉村︶は集落跡と祭祀施設が複合した遺跡で、縄文時代の精神文化が現れた[[配石遺構]]が見られる。 == 主な山・峠 ==
{| width="300" align="right" class="wikitable" cellspacing="0" cellpadding="0"
|-
| align=center|<div style="width:300px;float:center;margin:0;position:relative;">[[ファイル:Yatsugatake Volcanic Chain 3D 2012 b.jpg|300px]]
<div style="position:absolute;left:11px;top:47px;font-size:12px">[[蓼科山|{{Color|white|蓼科山 <small>▲</small>}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:126px;top:80px;font-size:12px">[[大岳|{{Color|white|<small>▲</small> 大岳}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:60px;top:94px;font-size:12px">[[北横岳|{{Color|white|北横岳 <small>▲</small>}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:85px;top:119px;font-size:12px">[[縞枯山|{{Color|white|縞枯山 <small>▲</small>}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:150px;top:148px;font-size:12px">[[麦草峠|{{Color|white|<small>●</small> 麦草峠}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:140px;top:206px;font-size:12px">[[中山 (八ヶ岳)|{{Color|white|中山 <small>▲</small>}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:126px;top:242px;font-size:12px">[[天狗岳|{{Color|white|天狗岳 <small>▲</small>}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:186px;top:270px;font-size:12px">[[夏沢峠|{{Color|white|<small>●</small> 夏沢峠}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:193px;top:285px;font-size:12px">[[硫黄岳 (八ヶ岳)|{{Color|white|<small>▲</small> 硫黄岳}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:203px;top:320px;font-size:12px">[[横岳 (八ヶ岳)|{{Color|white|<small>▲</small> 横岳}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:123px;top:347px;font-size:12px">[[阿弥陀岳|{{Color|white|阿弥陀岳 <small>▲</small>}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:196px;top:347px;font-size:12px">[[赤岳 (八ヶ岳山系)|{{Color|white|<small>▲</small> 赤岳}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:175px;top:393px;font-size:12px">[[権現岳 (八ヶ岳)|{{Color|white|<small>▲</small> 権現岳}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:186px;top:415px;font-size:12px">[[三ッ頭 (八ヶ岳)|{{Color|white|<small>▲</small>三ッ頭}}]]</div>
<div style="position:absolute;left:108px;top:415px;font-size:12px">[[編笠山|{{Color|white|編笠山 <small>▲</small>}}]]</div>
</div>
|-
|八ヶ岳火山列の地形図。<br /><small>{{スペースシャトル}}</small><br />{{Smaller|※表示環境によっては文字のズレが生じることがある。}}
|}
=== 南八ヶ岳 ===
* [[編笠山]] (2,524 m)
* [[西岳 (八ヶ岳)|西岳]] (2,398 m)
* [[三ッ頭 (八ヶ岳)|三ッ頭]] (2,580 m)
* [[権現岳 (八ヶ岳)|権現岳]] (2,715 m)
* [[赤岳 (八ヶ岳山系)|赤岳]] (2,899 m) - 最高峰
* [[中岳 (八ヶ岳)|中岳]] (2,700 m)
* [[阿弥陀岳]] (2,805 m)
* [[横岳 (八ヶ岳)|横岳]] (2,829 m)
* [[硫黄岳 (八ヶ岳)|硫黄岳]] (2,760 m)
* [[赤岩の頭]] (2,656 m)
* [[峰の松目]] (2,567 m)
* [[夏沢峠]] - 南八ヶ岳・北八ヶ岳の境界
=== 北八ヶ岳 ===
* [[箕冠山]] (2,590 m)
* [[根石岳]] (2,603 m)
* [[天狗岳]] (2,646 m)
* [[中山 (八ヶ岳)|中山]] (2,496 m)
* [[丸山 (八ヶ岳)|丸山]] (2,330 m)
* [[麦草峠]] - [[国道299号]]が通過
* [[茶臼山 (八ヶ岳)|茶臼山]] (2,384 m)
* [[縞枯山]] (2,403 m)
* [[北横岳]]（横岳） (2,480 m)
* [[大岳]] (2,381 m)
* [[双子山 (八ヶ岳)|双子山]] (2,224 m)
* [[大河原峠]]
* [[蓼科山]] (2,530 m)
* [[八子ヶ峰]] (1,833 m)
== 動植物 ==
植生は、標高1,700 m以下が[[落葉広葉樹林]]、標高約2,500 m以下が[[亜高山帯針葉樹林]]、それ以上が[[ハイマツ]]帯となっている。西岳の標高1,700 m付近の一角には、希少種の[[トウヒ|ヤツガタケトウヒ]]が自生している。かつては生息していた[[ライチョウ]]は、[[ハイマツ]]の減少や登山客のゴミの放置による[[キツネ]]など[[肉食動物|肉食獣]]の増加により、八ヶ岳一帯では絶滅したものと見られている。 北八ヶ岳の縞枯山や蓼科山・北横岳では、縞枯れ現象が見られる。 縞枯れは、亜高山帯針葉樹林の[[シラビソ]]・[[オオシラビソ]]が帯状に枯れ、その縞枯れの帯が、山頂に向かって長い年月をかけ移動していく現象である。遠方からは、山の斜面に何列もの白い縞に見える。 北八ヶ岳は[[コケ|苔]]の宝庫で、500種類近く︵日本国内で見られる苔の約4分の1︶が自生する<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXKZO44715240T10C19A5BC8000/ 島立正広﹁けなげなコケ、芽生えた愛◇八ケ岳で観察10年 珍種求め道なき道行く◇﹂]﹃[[日本経済新聞]]﹄朝刊2019年5月14日︵文化面︶2019年6月9日閲覧。</ref>。 {{multiple image
|align=none
|image1=Forest in Yatsugatake 22.jpg
|width1=158
|caption1=南八ヶ岳の広葉樹林<br />（柳川北沢・標高約2,100 m）
|image2=Forest in Yatsugatake 27.jpg
|width2=158
|caption2=南八ヶ岳の針葉樹林<br />（柳川北沢・標高約2,000 m）
|image3=Kitayokodake-Shimagare.JPG
|width3=140
|caption3=北八ヶ岳の縞枯れ現象<br />（北横岳・標高約2,200 m）
|image4=Campanula chamissonis 17.jpg
|width4=158
|caption4=南八ヶ岳稜線部の高山植生<br />（横岳付近・標高約2,800 m）
}}
== 神話 ==
八ヶ岳には﹁[[富士山]]と背比べをして勝利したものの、富士山に蹴り飛ばされて八つの峰になった﹂という[[神話]]がある︵﹁蹴り飛ばされた﹂の部分はその他にも説がある。例えば、背比べの際に用いた筒、すなわち富士山と八ヶ岳との間にかけて水を流し、どちらに流れるかを調べるのに用いた筒を持って富士山が八ヶ岳を叩いたなど︶。また、同神話では[[蓼科山]]は八ヶ岳の妹で、八つの峰になった八ヶ岳を見て泣いて、それが川になり溜まったのが[[諏訪湖]]とされている。 ところで、八ヶ岳の最高峰の[[赤岳 (八ヶ岳山系)|赤岳]]は[[国常立命]]の山だとされる。山麓の長野県[[茅野市]]には赤岳神社里宮が鎮座し、赤岳[[講]]の信仰も根強い。なお、神代の頃、八ヶ岳の名をつける時、峰が七つしかなかった。そこで東方の山を一つもらい、八つの峰にした。この山を[[茂来山]]︵もらいさん︶という<ref>{{Citation |和書 |title=佐久口碑伝説集 南佐久編 |date=1978-11-15 |editor=佐久教育会歴史委員会 |publisher=佐久教育会 |page=323 }}</ref>。 一方、八ヶ岳には神話や、[[修験道]]等に由来する[[祠|石祠]]や[[石碑]]などが多い。このような神話から、かつて八ヶ岳は富士山より高い1つの山であって、噴火で頂上部が[[山体崩壊]]したという風説︵実際、[[第四紀]]火山としての古阿弥陀岳が崩壊し、韮崎岩屑流が発生している︶が太古から現在に至るまで存在しているが、現在は複数の火山の集合体である。 *赤岳頂上の石碑。[[第二次世界大戦]]前は国常立命像があった。
*奥三ツ頭の石宮、[[講中]]碑、[[地蔵]]、[[不動]]碑、舟形碑
*権現岳の大鉄剣、石碑
*阿弥陀岳の[[鳥居]](撤去)、石像、石碑
*観音平の[[石仏]]と石碑
*古杣川の鎖場
*三頭山頂の[[経塚]]と石碑
*西岳の[[菩薩]]像、石碑
*真教寺尾根、霊鷲山など修験道的な地名、その他<ref>『佐久の神社と信仰』発行信濃教育出版部全260頁中74頁 77頁1989年11月15日</ref>。
== 主な山小屋 ==
* [[赤岳頂上小屋]]
* [[赤岳天望荘]]
* [[硫黄岳山荘]]
* [[オーレン小屋]]
* [[赤岳鉱泉]]
* [[本沢温泉]]
== 関連画像 ==
<gallery mode="packed-hover">
Tateshina07.JPG|比較的なだらかな地形の北八ヶ岳<br />（[[車山]]山頂より・正面は蓼科山）
Mt.Akadake and Mt.Amidadake from Mt.Gongendake 01.jpg|急峻な地形の南八ヶ岳<br />（権現岳山頂より・右は最高峰の赤岳）
Kitayatsugatake Tsuboniwa02s4s4592.jpg|八ヶ岳連峰の中で最も新しい溶岩地形である北横岳・坪庭
Lettuce harvest in Nobeyama.JPG|八ヶ岳東麓の野辺山高原における高原野菜の栽培風景
ファイル:Mt.Mizugaki and Mt.Yatsugatake 01.jpg|[[奥秩父山塊|奥秩父]]の[[金峰山 (山梨県・長野県)|金峰山]]より
ファイル:Mt.Yokodake and Mt.Iodake from Mt.Amidadake 02.jpg|阿弥陀岳より望む硫黄岳(左)と横岳(右)
ファイル:Kita-Yatsugatake.jpg|天狗岳中腹より北八ヶ岳を望む<br />右手前から縞枯山・横岳・蓼科山
ファイル:Yatsugatake.JPG|韮崎市より望む南八ヶ岳
ファイル:Yukinoyatugatake.JPG|[[原村]]から望む雪の八ヶ岳連山
ファイル:Yatsugatake Hatsuyuki.JPG|茅野市より望む八ヶ岳
ファイル:赤岳鉱泉2010.08.29.JPG|赤岳鉱泉
ファイル:Tateshina plateau from Menokami Obs 01.jpg|北八ヶ岳連山の西側に広がる[[蓼科高原]]
ファイル:YatsugatakeWinter.JPG|西麓より仰ぐ冬の八ヶ岳（2014年3月）
</gallery>
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{notelist}}
=== 出典 ===
{{reflist}}
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Yatsugatake Mountains}}
* [[八ヶ岳中信高原国定公園]]
* [[フォッサマグナ]]
* [[日本の地質百選]]
* [[日本百名山]]
* [[日本の名峰]]
* [[火山の一覧 (日本)]]
== 外部リンク ==
*産業技術総合研究所 地質調査総合センター
** [https://gbank.gsj.jp/volcano/Quat_Vol/volcano_data/E84.html 日本の火山 北八ヶ岳]
** [https://gbank.gsj.jp/volcano/Quat_Vol/volcano_data/E85.html 日本の火山 南八ヶ岳]
* {{PDF|[https://www.kubota.co.jp/siryou/pr/urban/pdf/33/pdf/33_1_1.pdf 八ヶ岳火山 火山活動史と湖盆の変遷]}} - 株式会社クボタ
* [http://www.tateshinakougen.gr.jp/yatu/ 八ヶ岳アルペンナビ] - 八ヶ岳観光協会
{{Normdaten}}
{{北八ヶ岳}}
{{南八ヶ岳}}
{{日本百名山}}
{{一等三角点百名山}}
{{信州百名山}}
{{デフォルトソート:やつかたけ}}
9 ⟶ 184行目:
[[Category:日本の火山]]
[[Category:名数8]]
{{mountain-stub|pref=山梨県|pref2=長野県}}
| |||