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﹃'''十字架の道'''﹄(じゅうじかのみち、{{lang-la|Via Crucis}}) は[[フランツ・リスト]]が作曲した[[混声合唱]]と、[[オルガン]]または[[ハーモニウム]]または[[ピアノ]]のための宗教音楽。サール番号はS.53、ラーベ番号はR.534{{refn|group="注"|より正確に言うと、オルガン伴奏版がS.53、ピアノ伴奏版がS.53a<ref>{{cite book|和書|author=エヴェレット・ヘルム|translator=野本由紀夫|title=︿大作曲家﹀リスト| {{Portal クラシック音楽}}
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[[グレゴリオ聖歌]]からの影響が強く、晩年のリストに典型的な単純化され簡潔な旋律や和声と、半音階的で不安定な音楽が特徴的で、中世ヨーロッパの教会音楽、ドイツの古風な音楽、19世紀ドイツ・ロマン派の和声、半音階的で調性感の希薄な音楽が並存するユニークな曲である。 [[1878年]]から[[1879年]]にかけて作曲されたこの曲には調性感の欠如した曲がいくつも現れるが、第2次ウィーン楽派の[[無調]]に比べると『十字架の道』はもっと古典的な手法 (例えば、[[ヨハン・セバスティアン・バッハ|バッハ]]が一部の曲で使った、あるいはより古くは[[カルロ・ジェズアルド|ジェズアルド]]が使用した[[半音階]]による調性感の不安定化) を使っている。しかし、当時存命の作曲家で1879年と言えば、[[ブラームス]]は[[交響曲第2番_(ブラームス)|交響曲第2番]] (1877年) や[[ヴァイオリン協奏曲_(ブラームス)|ヴァイオリン協奏曲]] (1878年)、[[ドヴォルザーク]]は[[スラブ舞曲]]第1集 (1878年)、[[チャイコフスキー]]が[[交響曲第4番_(チャイコフスキー)|交響曲第4番]] (1877-78年) やオペラ『[[エフゲニー・オネーギン (オペラ)|エウゲニー・オネーギン]]』(1878年)、[[ブルックナー]]が[[交響曲第5番_(ブルックナー)|交響曲第5番]] (1875年-1878年) を書いていた頃、[[ジュゼッペ・ヴェルディ|ヴェルディ]]はオペラ『[[オテロ_(ヴェルディ)|オテロ]]』を完成させて間もない時期である。[[グスタフ・マーラー|マーラー]]や[[ドビュッシー]]はまだ学生時代、[[ツェムリンスキー]]は音楽学生にすらなっておらず、[[シェーンベルク]]に至っては5歳の幼児である。それを考えると、この時期にこれほど調性から外れた作品を書いたリストはきわめて先進的だったと言って過言ではない。
== 作曲の経過 ==
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{{Indent|アンダンテ、調性記号なし、4分の4拍子
﹁聖ヴェロニカ﹂では、[[讃美歌]]136番﹁[[血しおしたたる]]﹂({{lang-de|O Haupt voll Blut und Wunden}}、バッハの﹃[[マタイ受難曲]]﹄の中の複数のコラールで利用されたことはよく知られている) が用いられていることと、コラール﹁血しおしたたる﹂の少し前にB-A-C-H (変ロ-イ-ハ-ロ) のモティーフが出現することからわかるように、[[ヨハン・セバスチャン・バッハ|バッハ]]を意識していることが明瞭である<ref 8曲目 7留:イエス、再び倒れる
{{Indent|速度指定・調性記号なし、4分の3拍子
移調されているが、3留と同じ音楽。}}
9曲目 8留:[[エルサレム]]の女たち、イエスのために涙を流す
{{Indent|アンダンテ・マ・ポコ・モッソ、 調性記号なし、4分の4拍子
半音階的に動くオルガン独奏のあと、バリトン独唱を挟んで、再び冒頭の音楽がオルガンに現れる。最後に、アレグロ・マルツィアーレ 4分の4拍子に変わり、[[トランペット]]を模したオルガンによるフォルティッシモの[[ファンファーレ]]が演奏されて終わる。この部分には、オルガンのレジストレーション<ref group="注">[[ストップ_(オルガン)|オルガンのストップ]]に関する指定のこと。</ref>に関して曲中で唯一指示があり、Tromp <ref group="注">トランペット。[[ストップ_(オルガン)#パイプ|リード管]]の種類の1つ</ref> と指定されている。
前半のオルガン独奏の箇所では、ごく1部が用いられているだけだが、[[楽劇]]『[[トリスタンとイゾルデ (楽劇)|トリスタンとイゾルデ]]』の第1幕への前奏曲と同じ旋律が部分的に表れる<ref name="Alpha"/>。
}}
10曲目 9留:イエス、三たび倒れる
{{Indent|レント、ニ短調、4分の3拍子
移調されているが、3留と同じ音楽である。}}
11曲目 10留:イエス、衣を剥がれる
{{Indent|レント、[[ヘ短調]]、4分の4拍子
オルガン独奏による。ほとんど常に半音階的に動いており、調性感はほぼない。}}
12曲目 11留:イエス、十字架にはりつけられる
{{Indent|アンダンテ、調性記号なし、4分の4拍子
テノール合唱とバス合唱がフォルテで「十字架にはりつけよ」とひたすら繰り返す。}}
13曲目 12留:イエス、十字架上で死す
{{Indent|速度指示・調性記号なし、4分の4拍子
バリトン独唱による、[[マタイによる福音書]]27章46節にある「エリ、エリ、ラマ、サバクタニ」で曲は始まる。これはイエスの最期の言葉だが、その直後にはオルガンに十字架の動機が現れる<ref name="ondine"/>。
この後、オルガン独奏による大規模な幻想曲が展開される。この部分は十字架の音型を基本動機としている<ref name="ondine"/>。
曲の最後には、ルター派のコラール「いつの日かわれ去り逝くとき」({{lang-de|Wenn ich einmal soll scheiden}}、バッハの『マタイ受難曲』で、イエスの最期の言葉が[[レチタティーヴォ]]で歌われた後に現れるコラール) が混声合唱で歌われる<ref name="hyperion"/>。}}
14曲目 13留:イエス、十字架から降ろされる
{{Indent|アンダンテ・モデラート、ニ短調、4分の3拍子
オルガン独奏。変形されているが、ヒムヌス「スターバト・マーテル」や4留の聖母マリアの音楽が引用されている。聖母マリアに関係する音楽が現れるのは、[[ピエタ]]の慣習によって、この場面ではイエスが聖母マリアの腕の中に抱きかかえられているシーンとして描かれているからである<ref name="hyperion"/>。}}
15曲目 14留:イエス、墓に安置される
{{Indent|アンダンテ、ニ短調、2分の3拍子
冒頭の「王の御旗」の音楽で始まる。歌詞は別物に、音楽もやや明るく穏やかな調子に変えられており、形式も一種のアンティフォナに変わっている。メゾ・ソプラノの独唱が「王の御旗」の旋律の一部を歌ったあと、同じ旋律を合唱が繰り返し、最後まで「王の御旗」を歌い終わると、続いて、オルガンで聖母マリアの音楽が[[ニ長調]]で再現される。その間、合唱はゆっくりとAve, ave, crux! を繰り返す。
最期に、ピアニッシモでオルガンの低音に十字架の音型が現れて曲を終える。}}
== 編成 ==
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[[聖金曜日]]に戸外で演奏することを想定して作曲されているためオルガンかハーモニウムを伴奏にしている<ref name="ondine"/>。ただし、祈りのために室内で演奏することも許しており、その場合はピアノでもよい。
== テクスト ==
テクストは、結局は結婚できなかったがリストの長年の事実上の伴侶だった[[カロリーネ・ツー・ザイン=ヴィトゲンシュタイン|ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人]]が選んだもの<ref>ハイペリオン CDA、ライナーノーツ</ref>。[[イムヌス|ヒムヌス]]『王の御旗』と『[[スターバト・マーテル]]』の他、主として歌詞には[[ラテン語]]が用いられているが<ref name="hyperion"/>、「聖ヴェロニカ」と「イエス、十字架上で死す」の1部では[[ドイツ語]]を用いている。歌詞の一部は、[[新約聖書]]の[[マタイによる福音書]]と[[ルカによる福音書]]から採られている<ref name="ondine"/>。
== 初演 ==
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[[1936年]]現在で、自筆譜はブダペストの[[ハンガリー国立博物館]]内のセーチェーニ図書館 (後の[[国立セーチェーニ図書館]]) に収蔵されていたことがわかっている<ref name="old-complete-series"/>。
== 演奏時間 ==
演奏によって幅があるが、約39-43分程度
== 録音 ==
=== オルガン伴奏による演奏 ===
* Liszt Choral Works Ⅲ. Via Crucis Inno a Maria Vergine, {{仮リンク|フンガロトン|en|Hungaroton}} LPX 11575, Budapest Choir・Miklós Szabó (指揮), 1971年 (LP録音・未CD化、フランス・ディスク大賞グランプリ受賞)
* [[ハイペリオン・レコード|ハイペリオン]] CDA67199、コリドン・シンガース、マシュー・ベスト (指揮)、トーマス・トロッター (オルガン)、2000年録音
=== ピアノ伴奏による演奏 ===
* Liszt Via Crucis, Philips 416 649-2、{{仮リンク|ラインベルト・デ・レーウ|en|Reinbert de Leeuw}} (指揮・ピアノ)、{{仮リンク|オランダ室内合唱団|en|Nederlands Kamerkoor}}、1984年録音
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=== 出典 ===
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* {{cite book|和書|author=エヴェレット・ヘルム|translator=野本由紀夫|title=〈大作曲家〉リスト|yera=1996|isbn=4-276-22162-5|publisher=音楽之友社}}
* フランツ・リスト旧作品全集、第5シリーズ第7巻
* 『Liszt Missa Cholaris, Via Crucis』[[ハイペリオン・レコード|ハイペリオン]] CDA67199、ライナーノーツ
* 『フランツ・リスト Via Crucis、アルヴォ・ペルト 宗教合唱作品』Ondine ODE 1337-2、ライナーノーツ
* Franz Liszt Via Crucis, Salve Regina, Vater Unser, Ave Verum Corpus, Alpha Classics ALPHA 390、ライナーノーツ
== 外部リンク ==
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