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﹃'''影が行く'''﹄︵かげがいく、''Who Goes There?''︶は、[[アメリカ合衆国]]の[[小説家]][[ジョン・W・キャンベル]]により、[[1938年]]に発表された[[サイエンス・フィクション|SF]][[短編小説]]。また、それを表題作とする[[短編集]]。短編の日本語初訳は﹃[[S-Fマガジン]]﹄1961年9月号に[[矢野徹]]訳で掲載された。 == 概要 ==▼
キャンベルが、雑誌『[[アスタウンディング|アスタウンディング・サイエンスフィクション]]』の編集長となったのち、ドン・A・スチュアート名義で同誌に発表した。
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== あらすじ ==
[[南極]]の探検や磁極調査をおこなう大磁極基地︵ビッグ・マグネット︶には、37人の隊員が暮らしていた。ある時、計器が不可解なほど強い磁力を探知したため、第 ▲[[南極]]の探検や磁極調査をおこなう大磁極基地︵ビッグ・マグネット︶には、37人の隊員が暮らしていた。ある時、計器が不可解なほど強い磁力を探知したため、第二磁極遠征隊が編成されて調査へ向かう。やがて遠征隊は、潜水艦に似た物体が氷に埋もれているのを発見する。それは墜落した宇宙船であり、地球に来てから二千万年が経っていると推測された。 遠征隊は氷を掘るうちに、宇宙船の乗組員らしき生物を見つける。船から出てすぐに吹雪で迷ったものらしく、遠征隊は氷のブロックごと生物を切り出した。宇宙船は、発掘に用いた[[テルミット]]爆薬が原因で失われてしまうが、氷漬けの生物は基地へと運ばれた。 15 ⟶ 14行目:
生物学者のブレアーは、異星生物を解凍して研究しようとする。ノリスを含め数人は反対するが、危険はないというブレアーの主張が通った。解凍は宇宙線観測小屋でおこなわれ、物理学者のコナントが仕事をしながら番を引き受ける。 翌日、ブレアーはコナントに叩き起こされた。コナントが居眠りをしている間に、解凍していた異星生物が消えたという。基地を捜索した隊員たちが犬舎でそれを見つけた時、その姿は[[ハスキー犬]]と同化しつつあった。ブロートーチや電撃機、そして犬たちの攻撃により怪物は倒され、ブレアーが組織を調べる。 ブレアーは、怪物を逃がさないように飛行機を破壊したと告げる。さらにブレアーは、コナントがすでに人間ではないと言いはり、隊員たちの間に不安が広がる。危険な状態と見なされたブレアーは倉庫に閉じ込められ、隊員は4人 医師のカッパーは、人間と怪物を区別するため、犬の免疫を用いた[[血清]]のテストを始めた。一時はこのテストで問題が解決するかに思われたが、失敗に終わる。人間の組織と同様の反応が カッパーは平静さを失って[[モルヒネ]]を注射され、ギャリーはマクレディに指揮権をゆずった。隊員たちが猜疑心に包まれる中、マクレディは怪物を区別しようとするが、決め手がないままに犠牲者が増えてゆく。怪物は、あらゆる部分がそれ自体で全体であり、小さな断片でさえ自足できることも明らかになる。やがてマクレディは、ある事件をきっかけに解決策を思いつき、隊員たちを集める。それは隊員の血液を使ったテストだった。 == 主な登場
=== 隊員 ===
; マクレディ
: 遠征隊の副隊長。気象学者。医学部を卒業 ; ギャリー
: 遠征隊の隊長。血清テストが原因で疑いをかけられる。
; ブレアー
: 生物学者。研究のために異星生物を解凍するよう主張する。のちに自分以外を怪物と見なし、隔離される。 ; カッパー
: 医師。血清テストを考案するが失敗し、疑いをかけられる。
; ヴァン・ウォール
: 首席パイロット。隊員たちや氷漬けの異星生物を基地へ運ぶ。
; バークレイ
: 機械技師。氷斧で異星生物を掘りあてる。怪物退治用の電撃機を自作する。 ; コナント
: 物理学者。宇宙線の専門家。異星生物の解凍 ; ノリス
: 物理学者。異星生物の解凍に強く反対する。
; キンナー
: コック。パニックに陥り隔離され、室内で賛美歌を歌い続ける。
; ベニング
: 航空整備士。
; クラーク
: 犬の飼育係。パニックに陥ったキンナーを疎んじる。
; ポムロイ
: 牛の飼育責任者。
=== その他 ===
; 異星生物
: 宇宙船に乗りこんでいた生物。隊員たちに﹁それ﹂﹁けだもの﹂﹁怪物﹂などと呼ばれる。発見された当初は、赤い ; チャーノーク
: ハスキー犬。犬ぞりのリーダーを務めた。犬舎に入ってきた怪物に同化される。 == 映画化作品 ==
現在までに3作が制作されている。舞台、登場人物、異星生物の能力、その退治方法などの点で作品ごとに違いが見られる。ただし﹁1982年作の[[前日譚]]﹂という位置付けで作られた2011年版は、描写も登場人物も原作に通じる要素はごく僅かである。 ; [[遊星からの物体X ファーストコンタクト]] (''The Thing'')、[[2011年]](米)
これより前、2004年ドラマ専門チャンネルの[[Syfy]]が二度目のリメイクを試みて特殊メイクアーティストのVincent Guastiniにデザインを依頼。映画化は中止になったが、原作の描写に沿った赤い3つの眼を持つ異星生物が試作されていた。
2018年には原作から出版の際に作者が削除した部分を復元した"Frozen Hell(仮訳:「凍り付いた地獄」。邦訳無し)"が出版され、権利を取得した[[ブラムハウス・プロダクションズ]]と[[ユニバーサル・スタジオ]]による映画化が2020年1月に発表された<ref>{{Cite web|和書|author=Adele Ankers|date=2020-01-29|url=https://jp.ign.com/the-thing-1982/41297/news/x2018|title=『遊星からの物体X』の新たなリメイクが決定!2018年に発掘された原作小説の完全版を基にユニバーサルとブラムハウスが共同製作|website=[[IGN Japan]]|publisher=株式会社[[産経デジタル]]|accessdate=2022-02-08}}</ref>。同年8月にはジョン・カーペンターも進行中の企画に触れて、自身も参加する可能性を示唆した<ref>{{Cite web|和書|author=Matt Fowler|date=2020-08-24|url=https://jp.ign.com/the-thing-1982/46162/news/x|title=ジョン・カーペンターは自分が関わる『遊星からの物体X』のリブートを示唆|website=[[IGN Japan]]|publisher=株式会社[[産経デジタル]]|accessdate=2022-02-08}}</ref>。
▲* [[遊星よりの物体X]] (The Thing from Another World)、[[1951年]](米)
▲*:監督:クリスチャン・ナイビー、出演:マーガレット・シュリダン、ケネス・トビー、ジェームズ・アーネス他
▲* [[遊星からの物体X]] (The Thing)、[[1982年]](米)
▲*:監督:[[ジョン・カーペンター]]、出演:[[カート・ラッセル]]、A・W・ブリムリー、リチャード・ダイサート他
▲*:監督:マシーズ・ファン・ヘイニンヘンJr、出演:[[メアリー・エリザベス・ウィンステッド]]、ジョエル・エドガート、ウルリク・トムセン他
==
; [[遊星からの物体X episodeII]]、[[2003年]]
*「影が行く」[[矢野徹]]訳 [[S-Fマガジン]]1961年9月号▼
: 1982年の映画版の続編的な内容。
*『影が行く』[[中村融 (SF)|中村融]]編訳、東京創元社 [[創元SF文庫]] (SF-ン-6-1 ) ISBN 978-4-488-71501-4 - アンソロジー。「影が行く」を収録。▼
==
* ﹃影が行く﹄[[矢野徹]]・[[川村哲郎]]訳、早川書房 [[ハヤカワ・SF・シリーズ]](3161)、1967年11月、ISBN 978-4152079435 ︵2版 1995年9月︶- 短編集。収録作は全て[[ジョン・W・キャンベル]]著。''Who Goes There? and Other Stories'' (1955)の翻訳。 ** 「薄明」、川村哲郎訳
** 「夜」、川村哲郎訳
** 「盲目」、川村哲郎訳
** 「エイシアの物語」、川村哲郎訳
▲* ﹃影が行く - ホラーSF傑作選﹄[[中村融 (SF)|中村融]]編訳、東京創元社 [[創元SF文庫]] (SF-ン-6-1 ) ** 「消えた少女」、[[リチャード・マシスン]]著
** 「悪夢団」、[[ディーン・R・クーンツ]]著
** 「群体」、[[シオドア・L・トーマス]]著
** 「歴戦の勇士」、[[フリッツ・ライバー]]著
** 「ボールターのカナリア」、[[キース・ロバーツ]]著
** 「影が行く」、[[ジョン・W・キャンベル・ジュニア]]著
** 「探検隊帰る」、[[フィリップ・K・ディック]]著
** 「仮面」、[[デーモン・ナイト]]著
** 「吸血機伝説」、[[ロジャー・ゼラズニイ]]著
** 「ヨー・ヴォムビスの地下墓地」、[[クラーク・アシュトン・スミス]]著
** 「五つの月が昇るとき」、[[ジャック・ヴァンス]]著
** 「ごきげん目盛り」、[[アルフレッド・ベスター]]著
** 「唾の樹」、[[ブライアン・W・オールディス]]著
== 参考文献 ==
* 中村融『影が行く』解説、138頁。
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}
{{DEFAULTSORT:かけかいく}}
[[Category:1938年の小説]]
[[Category:アメリカ合衆国のSF小説]]
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[[Category:地球外生命体を題材とした小説]]
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