日輪の遺産
﹃日輪の遺産﹄︵にちりんのいさん︶は、浅田次郎による長編小説である。1993年8月に青樹社から刊行された。1997年講談社︵ISBN‥4062635518︶、2000年徳間書店︵ISBN‥4198912874︶により文庫化。
日輪の遺産(にちりんのいさん) | ||
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著者 | 浅田次郎 | |
発行日 | 1993年8月 | |
発行元 | 青樹社 | |
国 |
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言語 | 日本語 | |
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浅田次郎自身が「若書き」と評する初期作品だが、人気は高く、50万部を売り上げた[1]。
あらすじ
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
登場人物
真柴少佐
近衛師団所属のエリート軍人。阿南惟幾陸軍大臣、森赳近衛師団長、田中静壱東部軍管区司令官、杉山元第1総軍司令官、梅津美治郎参謀総長という軍の最高幹部たちから、とある密命を受ける。
小泉主計中尉
東京帝大を首席で卒業した大蔵官僚。真柴とともに極秘の任務に就く。
曹長
中国戦線で長く戦った人物で、モーゼル社の自動拳銃を愛用する。真柴の運転手として活躍。本名不詳︵映画では﹁望月﹂︶。
金原
武蔵小玉市の大地主で元市議。悪徳不動産業者として知られる。財宝についても何かを知っている気配を見せる。
丹羽明人
お人好しの地上げ屋。バブル景気崩壊で建て売り住宅の不良在庫を抱えて金策に奔走中、一攫千金を狙って競馬場に行き謎の老人に出会う。
海老沢
武蔵小玉市で福祉関係のNPOを切り盛りする中年男。妻の浮気に悩んでいる。謎の老人の世話をしていた縁で丹羽と知り合い、財宝の秘密に迫ることになる。
イガラシ中尉
日系2世のアメリカ軍人。ダグラス・マッカーサーの通訳を務めるうちに財宝を巡る陰謀に巻き込まれる。
野口孝吉
女学校の英語教員。財宝の秘匿作業に協力させられる。
久枝
女学校の生徒。工廠の近所の梨農家の娘。財宝の秘匿作業に協力させられる女学生の級長。
映画
日輪の遺産 | |
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監督 | 佐々部清 |
脚本 | 青島武 |
製作 |
池田裕之 阿佐美弘恭 長尾忠彦 臼井正明 |
出演者 |
堺雅人 中村獅童 福士誠治 ユースケ・サンタマリア 森迫永依 八千草薫 |
音楽 | 加羽沢美濃 |
主題歌 | 元ちとせ「永遠(トワ)の調べ」 |
撮影 | 坂江正明 |
編集 | 川瀬功 |
製作会社 |
角川映画 NTTドコモ IVSテレビ制作 シネムーブ |
配給 | 角川映画 |
公開 | 2011年8月27日 |
上映時間 | 134分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
2011年、同じタイトルの『日輪の遺産』(THE LEGACY OF THE SUN)として角川映画系で映画化され日本で公開された。浅田次郎の同名小説を原作に、太平洋戦争終戦末期、マッカーサーの財宝を巡る極秘作戦に関わった帝国陸軍将校たちと20名の少女たちの運命が描かれた[2]。監督は佐々部清、主演は堺雅人。
上映
キャッチコピーは﹁いつか、この国が生まれかわるために﹂﹁浅田文学の原点。復興に信念を貫いた4人の男と20人の少女たちの運命。﹂。
全国145スクリーンで公開され、2011年8月27、28日の初日2日間で興収4422万22000円、動員3万7062人になり映画観客動員ランキング︵興行通信社調べ︶で初登場第11位となった[3]。またぴあ初日満足度ランキングでは第1位と高評価されている。
ストーリー
太平洋戦争終戦時には通訳の情報士官で、後には在本米陸軍司令という将官にまで登り詰めた日系二世の老人イガラシが取材に来ていた記者に向って﹁幽窓無暦日﹂と書いて寄越したその際に、マッカーサーが厚木飛行場に到着して、日本初上陸後の東京へ向かう車中にて﹁私の宝、父の遺産はどこだ?﹂と呟いたという。一方日本では例年の如く、或る女子学園の卒業式に毎年多額の寄付をしてきた老人がやってきて、戦時動員中に空襲で死んだ女子生徒を悼む石碑を前に感慨深く眺め、教師をしている孫娘とその婚約者に迎えられる。式の最中で老人は誰にも聞こえぬ、誰にも見えぬ、旧陸軍近衛師団の真柴少佐の姿と声を見聞きしたと言うや否や手招きされるように急逝。老人は悪評を持つ武蔵小玉地域の大地主で、市議会議員も務めていた名士でもあった。妻の久枝が真柴の手帳を基に話し始める。物語は二人の語りで過去へと遡っていく。
終戦間近の昭和20年8月10日。近衛第一師団の真柴司郎少佐と東部軍経理部の小泉重雄主計中尉らが阿南惟幾陸軍大臣、梅津美治郎参謀総長、田中静壱東部軍司令官、森赳近衛師団長、杉山元第一総軍司令官という帝国陸軍トップらに呼集され、重大な密命を帯びる。山下将軍がフィリピンで奪取した900億円(現在の貨幣価値で約200兆円)ものマッカーサーの財宝を、秘密裡に武蔵小玉の南多摩陸軍火工廠へ移送し隠匿せよ―。その財宝は、敗戦を悟った阿南らが祖国復興を託した軍資金であった。真柴は小泉中尉と、彼らの手足となる望月曹長と共に極秘任務を遂行。特高の呼び出しから帰ったばかりの教師と20名の12~13才の少女達を勤労動員先の武蔵野の電機工場から徴用して、護国反撃のための新型砲弾といわれて財宝隠しに加担させられる。高等女学校では級長でもある久枝からの申し出でスーチャンという女の子だけが貧血で休んでいるよう、休んでいる間は本でも読むように、と﹃車輪の下﹄を手渡されたが、後に彼女が全員の運命を大きく変えることになることは誰も創造できなかった。任務の終わりが見えた頃、上層部によって彼女らに非情きわまる命令が下されたふしがあったが、阿南陸相の絶命前に無効命令であることが確認された。ところが、終戦の詔勅とその前に米軍機からばら撒かれた終戦ビラに動揺した少女達とその少女達を救おうと奔走していた真柴らとの間で思いもよらぬ手違いが生じ、悲しい運命が彼らを待ち受けていた。昭和23年の秋に真柴が望月の許を訪ね、久枝から大根漬けを受け取り、A級戦犯として捕らえられた梅津元参謀総長を米軍病院に見舞った。梅津が真柴に渡そうとしたメモを同席していたイガラシに取上げられた。そこに書かれていた言葉とは…。一方、大蔵省に戻った小泉は日本の産業復興資金の調達法や国内経済に有利な円ドル交換レートについてマッカーサーとの交渉中に秘匿された財宝の在処を取引材料に持ち出したが、最後にはイガラシに突きつけられた拳銃を奪って自決した。やがて偶然にも米軍工兵が遺産の在処を発見するが、マッカーサーとイガラシがそこに見たものは言葉を失わせる壮絶な状景で、マッカーサーはイガラシに生涯に渡るほどの極秘命令を下命した。
原作からの変更点
原作では名前の出なかった曹長の氏名が設定された。
現代のシーンは大幅に変更されている。原作は真柴(元近衛少佐)が死亡することで物語が動き出すが、映画では真柴の現状は不明である。それに伴い、原作で真柴の関係者だった丹波や海老沢も登場しない。代わりに、金原(元曹長、旧姓望月)が死亡することで物語が動き出す。
キャスト
戦中・戦後
- 森脇女学校
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- 野口孝吉(森脇女学校教師) - ユースケ・サンタマリア
- 久枝(森脇女学校女生徒) - 森迫永依
- スーちゃん(森脇女学校女生徒) - 土屋太鳳
- マツさん(森脇女学校女生徒) - 遠藤恵里奈
- サッちゃん(森脇女学校女生徒) - 松本花奈
- GHQ
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- ダグラス・マッカーサー(連合国軍最高司令官) - ジョン・サヴェージ
- イガラシ中尉(GHQ通訳) - 三船力也
- その他
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- 伝令の男 - 金児憲史
現代
- 金原家
スタッフ
- 監督 - 佐々部清
- 製作 - 池田宏之、阿佐美弘恭、長尾忠彦、臼井正明
- プロデューサー - 根津勝、臼井正明、青島武
- 製作代表 - 椎名保
- 協力プロデューサー - 井上文雄
- 企画 - 嵐智史、三宅澄、高松宏伸
- 原作 - 浅田次郎
- 脚本 - 青島武
- 撮影 - 坂江正明
- 美術 - 若松孝市
- 編集 - 川瀬功
- キャスティング - 空閑由美子
- 音楽 - 加羽沢美濃
- スクリプター - 山下千鶴
- 照明 - 渡辺三雄
- 整音 - 瀬川徹夫
- 製作担当 - 澤井克一
- 装飾 - 平井浩一
- 録音 - 藤丸和徳
- 助監督 - 山本亮
- チーフデザイナー - 小林久之
- 製作 - 「日輪の遺産」製作委員会(角川映画、NTTドコモ、IVSテレビ制作、シネムーブ)
- 製作・配給 - 角川映画
音楽
モデル
●稲城市 - 本作品の舞台となった武蔵小玉市のモデル[4]。
●多摩サービス補助施設 - 東京都稲城市および多摩市にまたがる米軍施設。かつての陸軍多摩火工廠で、本作品に登場する﹁米軍南多摩キャンプ﹂のモデル。
●稲城市立病院 - 丹羽が海老沢や金原と出会った武蔵小玉市立病院のモデル。多摩サービス補助施設に隣接している。
●堀越高等学校 - 前身である堀越高等女学校が、作中の女学校のモデルとなった。