機関委任事務
概要
機関委任事務とされた事務は、法的にはあくまで委任した﹁国の事務﹂であって、﹁地方公共団体の事務﹂とは観念されない。このため当該事務に関しては地方公共団体の条例制定権が及ばず、地方議会の関与も制限されていた。機関委任事務について国は包括的な指揮監督権を有し︵通達も参照︶、これを制度的に担保するものとして職務執行命令訴訟が存在した。国は、都道府県知事が機関委任事務の管理執行について違法や怠慢があった場合に、職務執行訴訟を経て主務大臣による代執行を行うことができるうえ、最終的には内閣総理大臣による知事の罷免が可能であった︵知事罷免制度については1991年に廃止︶。
地方公共団体の公選の首長等を国の下部機関と位置づけるこの制度は、かねてより地方自治を阻害するものとして批判が強かったが、地方分権一括法により廃止に至った。地方公共団体が処理する事務はすべて﹁地方公共団体の事務﹂となり、かつて機関委任事務とされていた事務の大半は自治事務及び法定受託事務に再編され、一部の事務は国の直接執行とされるか、事務自体が廃止された。
また、国から都道府県の機関に委任されていた事務の中には、市町村の事務の執行を国に代わって指揮監督する事務も少なくなかったが、機関委任事務制度の廃止により、都道府県と市町村もまた対等の関係として位置づけられることとなった。