「瓜生繁子」の版間の差分
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'''瓜生 繁子'''︵うりう{{Efn|﹁瓜生﹂の読み方については[[瓜生外吉]]を参照。}} しげこ、[[1861年]]︵[[文久]]元年︶[[4月29日]]<ref name=":10" /><ref>﹁[https://keisan.casio.jp/exec/system/1239884730 Keisan︵カシオ計算機︶]﹂で西暦に換算した。</ref>︵旧暦[[3月20日 (旧暦)|3月20日]]<ref name=":10">{{Harvnb|生田|2017|pp=|loc=第1章 生い立ちと渡米‥生い立ち}}</ref>{{Efn|繁子の実兄である[[益田孝]]が、[[1928年]]︵昭和3年︶に繁子が死去した直後に書いた﹁故瓜生繁子追悼紀念記﹂には生年月日が﹁文久元年︵1861年︶'''5月7日'''﹂と記載されている<ref name=":10" /><ref name="兄・鈍翁の悲しみ">{{Harvnb|生田|2017|pp=|loc=第7章 日米関係の改善に尽して‥兄・鈍翁の悲しみ}}</ref>。しかし[[生田澄江]]は、生年月日は﹁文久元年︵1861年︶'''3月20日'''﹂が正しい、としている<ref name=":10" />。}}︶ - [[1928年]]︵[[昭和]]3年︶[[11月3日]]<ref name=":11" />︶は、[[日本]]の[[華族]]。教育者。[[ピアニスト]]。 出生名は'''益田 しげ'''︵ますだ しげ︶で、[[旧姓]]は'''永井'''。[[ヴァッサー大学]]音楽科を卒業<ref name=":3" />した日本最初の女子留学生の一人で、[[西洋音楽]]の分野で大学教育を受けた最初の日本人である<ref name=":3">{{Harvnb|生田|2003|pp=10-12|loc=プロローグ 永井繁子を知っていますか}}</ref>ほか、日本最初のピアニストとされている<ref>{{Cite web また、[[恋愛結婚]]で結ばれた[[瓜生外吉]]︵海軍大将、[[男爵]]︶との家庭生活を全うしながら、[[東京音楽学校 (旧制)|東京音楽学校]]︵現‥[[東京芸術大学]]音楽学部︶教授と[[東京女子高等師範学校|女子高等師範学校]]︵現‥[[お茶の水女子大学]]︶教授を兼任して[[高等官]]に列し、20年以上に渡って音楽と[[英語]]を講じた[[キャリアウーマン]]である<ref>{{Harvnb|飯野|2000|pp=72|loc=第4章 瓜生繁子－青春を共有した友として︵亀田帛子︶‥はじめに}}</ref><ref>{{Harvnb|生田|2003|pp=8-9|loc=刊行に寄せて︵法政大学名誉教授 安岡昭男︶}}</ref><ref>{{Harvnb|寺沢|2009|pp=208-210|loc=第10章 わが道を歩む女子留学生たち‥音楽教師の職と夫への内助と子育ての三役をこなす繁子}}</ref><ref name=":20" />。 41行目:
[[File:First female study-abroad students.jpg|thumb|250px|[[1872年]]︵明治5年︶当時、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[シカゴ]]滞在中の女子留学生5名<ref>{{Harvnb|亀田|2005|p=14}}</ref>。左から永井しげ︵瓜生繁子、10歳︶、上田てい︵16歳︶、[[吉益亮子|吉益りょう]]︵16歳︶、[[津田梅子|津田うめ]]︵9歳︶、[[大山捨松|山川捨松]]︵12歳︶<br/>︵名前は当時のもの、数字は数え歳︶]] [[ファイル:Shigeko Nagai at Vassar.jpg|thumb|220px|[[ヴァッサー大学]]在学時の繁子]]
[[1861年]]︵[[文久]]元年︶4月29日︵旧暦[[3月20日 (旧暦)|3月20日]]︶に、[[江戸幕府]]の外国方に務める益田鷹乃助の四女として[[江戸]]・湯島猿飴横町︵現‥[[東京都]][[文京区]][[湯島]]︶に生まれ、7歳で幕府の軍医であった永井玄栄の養女となった<ref name=":10" />{{Efn|繁子の義父となった永井玄栄と、玄栄の長男で繁子の義兄となった永井久太郎については、[[樋口雄彦]]︵[[沼津市明治史料館]]︶による研究成果がある<ref name="永井家について">{{Cite web [[1871年]]︵[[明治]]4年︶に[[アメリカ合衆国]]視察旅行から帰国した[[開拓使|北海道開拓使]]の次官である[[黒田清隆]]は、数人の若者を留学生としてアメリカへ送り、未開の地を開拓する方法や技術など、北海道開拓に有用な知識を学ばせることにした。黒田は、アメリカ西部の荒野で現地の男性と肩を並べて汗を流すアメリカ人女性の姿を見て感銘を受けており、留学生の募集を始める際には当初から﹁男女﹂若干名という、当時としては前例の無いものとなった。開拓使のこの計画はやがて政府が主導する10年間もの長期間における官費留学という大掛かりなものとなり、同年に出発することになっていた﹁[[岩倉使節団]]﹂に随行して渡米することが決定した。[[戊辰戦争]]で賊軍の名に甘んじた士族の中には、この官費留学を名誉挽回の好機ととらえ、教養のある子弟を積極的に応募させたのである。その一方で女子の応募者は皆無で、当時は女子に高等教育を受けさせることはもとより、そもそも10年間という長期間にわたって若き乙女を単身、異国の地に送り出すことなど考えられない時代だった。 52行目:
15歳になった[[1876年]]︵明治9年︶、のちに結婚する当時19歳の[[瓜生外吉]]がコネチカット州にやって来る。外吉も熱心なクリスチャンで、繁子が寄宿するアボット家と親しい[[ニューヘイブン (コネチカット州)|ニューヘイブン]]のビットマン家に寄宿しており、[[海軍兵学校 (アメリカ合衆国)|アナポリス海軍兵学校]]への進学を目指していた。繁子は外吉と知り合って恋仲となり<ref>{{Harvnb|生田|2017|loc=第2章 アボット・スクール時代‥海軍士官・瓜生外吉との恋}}</ref><ref>{{Harvnb|半藤|2013|p=|pp=|loc=位置No. 873 - 888, 瓜生外吉 米海軍に育つ}}</ref>、2人は[[1881年]]︵明治14年︶に帰国する時点ですでに婚約していた<ref>{{Harvnb|古木|1992|pp=89-91|loc=第5章 模索と失意‥愛なき結婚を拒否}}</ref>。 [[1878年]]︵明治11年︶に17歳となった繁子は、アボット・スクールを卒業して[[ニューヨーク州]]の[[ヴァッサー大学]]音楽科︵School of Music, Vassar College<ref>{{Harvnb|生田|2003|p=99|loc=︵画像︶1881年6月20日のコンサートのプログラム表紙}}</ref>︶のピアノ演奏コース<ref>{{Harvnb|寺沢|2009|pp=91-94|loc=第4章 五人の別離とアメリカでの新しい生活‥山川捨松と永井繁子はともにバッサー大学に入学}}</ref>に入学した<ref name=":2">{{Harvnb|生田|2017|pp=|loc=第3章 ヴァッサー・カレッジ時代‥アメリカの音楽教育事情}}</ref>。入学試験では英文法、算術、地理、合衆国史の4科目が実施されたが、繁子の成績はアメリカ人の音楽科同級生3名より優秀だったという<ref name=":2" />。当時のヴァッサー大学では、学士号︵Bachelor of Arts︶を授与される本科が4年 === 明治のキャリアウーマン ===
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繁子は賑やかなこと、人と触れ合ったり外出することが大好きな社交的な性格で、外吉もそれを喜んでいた<ref name=":17">{{Harvnb|飯野|2000|pp=81-82|loc=第4章 瓜生繁子－青春を共有した友として︵亀田帛子︶‥2帰国後‥瓜生家－若者たちのサロン}}</ref>。結婚後の瓜生家は[[東京府]][[北豊島郡]][[日暮里町|日暮里村]]︵現‥[[東京都]][[荒川区]][[東日暮里]]<ref name=":18">{{Harvnb|生田|2017|loc=第7章 日米関係の改善に尽して‥瓜生家跡を尋ねて}}</ref>︶に住まいがあり、そこへは捨松、梅子のほかに外吉の海軍兵学校時代の同期生である[[世良田亮]]{{Efn|世良田は[[1856年]]︵安政3年︶に生まれ、父は[[信濃国]]・[[上田藩]]の藩士だった。外吉とはアナポリス海軍兵学校で知り合い、繁子・大山・津田ともアメリカ滞在中に知り合っている。繁子が外吉と結婚した後は梅子の配偶者に擬された<ref name=":17" /><ref name="海軍中尉瓜生外吉との結婚" />。海軍少尉だった[[1900年]]︵明治33年︶8月に病死、満{{没年齢|1856|10|31|1900|8|1}}。}}が集まり、世良田も繁子らと同じクリスチャンであった<ref name="海軍中尉瓜生外吉との結婚">{{Harvnb|生田|2017|loc=第4章 文部省音楽取調掛‥海軍中尉瓜生外吉との結婚}}</ref>。[[1886年]]︵明治19年︶6月12日には[[上野恩賜公園]]にある西洋料理店﹁[[上野精養軒]]﹂で繁子が[[舞踏会]]を主催したという記録がある<ref>{{Harvnb|生田|2017|loc=第4章 文部省音楽取調掛‥鹿鳴館のたそがれ}}</ref>。 外吉は、アメリカで多く接した知的な女性への理解が深く、日本への帰国後に苦闘を強いられることが多かった繁子・捨松・梅子の3人を、つねづね下記のように励ました<ref name=":17" /><ref name="亀田2005_71_73">{{Harvnb|亀田|2005|pp=71-73|loc=第3章 帰国から再留学まで‥2永井繁子の結婚と繁子周辺の人々}}</ref>。 {{Quotation|あなた方三人は誇りを持つべきである。頭を高く挙げて勇気を持ち、自分たちが、日本の教育を受けた女性よりはるか高いところに立っていることを認識すべきだ。あなた方三人は選ばれた人なのだから。|[[瓜生外吉]]、[[1883年]]︵明治16年︶4月1日付の[[津田梅子]]の英文書簡より、亀田帛子による和訳|<ref name="亀田2005_71_73" />}} 79行目:
繁子・外吉夫妻の長男である武雄は、[[1885年]]︵明治18年︶に生まれて学習院中等科から難関の[[海軍兵学校 (日本)|海軍兵学校]]に進み、[[海軍兵学校卒業生一覧 (日本)#33期|海兵33期]]を169名中6位の好成績で卒業した<ref name=":16">{{Harvnb|生田|2017|loc=第6章 瓜生家の日露戦争‥武雄の海軍兵学校入学}}</ref><ref>{{Harvnb|生田|2017|loc=第6章 瓜生家の日露戦争‥期待の星・瓜生武雄}}</ref>{{Efn|[[大日本帝国海軍]]では、海軍兵学校の卒業席次を基礎とした[[ハンモックナンバー]]︵兵学校同期生間の先任順位︶が進級と補職に大きく影響した。}}。海軍士官としての将来を嘱望されていた武雄だが、[[1908年]]︵明治41年︶4月30日に乗艦していた[[防護巡洋艦|巡洋艦]]﹁[[松島 (防護巡洋艦)|松島]]﹂が[[澎湖諸島]]・[[馬公市|馬公]]で火薬庫爆発を起こして沈没し、殉職した。{{没年齢|1885|3|7|1908|4|30}}。なお、﹁松島﹂には繁子の盟友・[[大山捨松]]の長男である大山高︵[[海軍兵学校卒業生一覧 (日本)#35期|海兵35期]]︶も海軍少尉候補生として乗艦しており、武雄と共に殉職した。 アメリカで青春時代を共に過ごし、事実上のアメリカ人としての価値観と教養、クリスチャンとしての信仰を共有していた繁子と外吉の夫婦仲は極めて円満だった<ref>{{Harvnb|生田|2003|pp=133-135|loc=第4章 文部省音楽取調掛‥結婚披露宴}}</ref><ref name=":4">{{Harvnb|生田|2003|pp=223-225|loc=第7章 日米親善‥私たちは幸福です}}</ref>。夫婦間では英語で話すことが多く<ref name=":4" /><ref>{{Harvnb|生田|2003|pp=236-238|loc=第7章 日米親善‥繁子祖母様のことなど}}</ref>、晩年の2人は日米親善に尽力する日々を送った。[[1909年]]︵明治42年︶には夫婦で渡米し、互いの母校であるアナポリス海軍兵学校とヴァッサー大学を訪問した<ref>{{Harvnb|生田|2003|loc=第7章 日米親善}}</ref>。この時に繁子が母校に寄贈した、教育者としての繁子の功績を嘉して[[昭憲皇太后|皇后]]から下賜された銀盃は、繁子が亡くなってから約70年後の[[1996年]]︵[[平成]]8年︶現在も学長室に所蔵されている<ref>{{Harvnb|生田|2017|loc=第5章 二つの官立学校の教授として‥日清戦争と繁子}}</ref><ref>{{Harvnb|生田|2003|pp=221-223|loc=第7章 日米親善‥アナポリス再訪}}</ref>。また繁子は、共にアメリカに留学した[[大山捨松]]・[[津田梅子]]との盟友関係を生涯に渡って維持しており<ref name=":13" /><ref name=":20">{{Cite web === 晩年 ===
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