クラリネット五重奏曲 (ブラームス)

ヨハネス・ブラームスクラリネット五重奏曲(クラリネットごじゅうそうきょく)ロ短調 作品115は、彼の晩年に完成された、ブラームスを代表する室内楽曲の1つである。

作曲の経緯と受容

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1891 調114

21124121021892151839 - 190215


楽章構成

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43639

(一)調6/8

(二)調調調3/4

(三)調4/4

(四)調2/4


第1楽章 Allegro

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12136514138 Claude Rostand2103825931141

1
 


第2楽章 Adagio

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3部構成のリート形式による緩徐楽章。クラリネットが奏でる、虚飾を取り去った、夢見るようなときに苦みばしった旋律(譜例2)は、多くの識者により真の「愛の歌」と評されており、それを弦部がコン・ソルディーノで支え、包み込む。第一部は、クラリネットによってシンプルに奏される主要主題が、哀切と親愛のこもった調子によるドルチェで歌われ豊かに展開されていく。第一部の中間では主要主題を逆行的に処理した副次主題が挿入される。中間部のロ短調ピウ・レントの挿句(52小節目から87小節目)は主要主題を使用してはいるが色彩をやや異にし、クラリネットがアリア的にまたレチタティーヴォ的に、ときに優雅にときに澄みきった叙情をたたえさらには悲愴な抑揚も交えて装飾音型をつないでいき、弦部がトレモロを響かせる。この挿句のジプシー風の性格は、長いパッセージと、8分音符による急なアラベスクによりいくどとなく強調される。ここでは細かな装飾音の多用と、名実ともにこの楽章の独奏楽器たるクラリネットのヴィルトゥオーゾ的表現力やラプソディックな奏法によってもたらされる極度の緊張感とが特に目を引く。第一部の再現(88小節目から)は第一部に沿ったものだが、クラリネットが第1ヴァイオリンと親密な対話を行う点は大きく異なる。自由な雰囲気のコーダがこのきわめて個性的な、まさにブラームス的創作技法の極致とも言うべきアダージョ楽章を締めくくる。

譜例2

 

第3楽章 Andantino

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232/4Presto non assai, ma con sentimento3-13-2

3-1
 

譜例3-2

 

第4楽章 Con moto

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ロンド形式にコーダを加え、主題と5つの変奏で構成される。主題は美しい旋律が弦によって軽やかに歌われ、そこにクラリネットが短く入り、後半部が二度繰り返される(譜例4)。第1変奏(33小節目から64小節目)は軽快なチェロに委ねられる。クラリネットは他の弦部とのユニゾンや、巧みに書かれた対位法を奏でる。第2変奏(65小節目から96小節目)は中音域の弦によるシンコペーションの伴奏が、16分音符で湧きあがるクラリネットよりもなお熱をこめて貫いていく。第3変奏(97小節目から129小節目)ではクラリネットの存在感が増し、16分音符のスタッカートによるアルペッジョがヴィルトゥオーゾ的というよりもむしろ快活さをにじませたドルチェで奏される。ロ長調で進行する第4変奏(130小節目から162小節目)では、中音域の弦による16分音符の刺繍音の上で、クラリネットと第1ヴァイオリンによる恋のようなピアノ・ドルチェの対話が続く。最後の第5変奏(163小節目から196小節目)は短調に戻るが主題のリズムは3/8拍子に変わり、そこへ曲冒頭のライトモチーフのひずんだこだまのような16分音符の音型が対位法により結びつけられていく。コーダ(197小節目から226小節目)では、表現豊かな短いカデンツァが高音のEのフォルテによって頂点に達した後、今度はライトモチーフが冒頭とまったく同じ形で繰り返される。最後の残響が曲に充溢感と循環的統一をもたらし、過ぎし時を振り返るかのようにこの夜想曲的大作に別れを告げる。

譜例4

 

外部リンク

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