ピッツィカート
ピッツィカート(伊: pizzicato)は、ヴァイオリン属などの本来は弓でひく弦楽器(擦弦楽器)の弦を指ではじくことによって音を出す演奏技法である。日本語の片仮名表記は古くからピチカートが用いられたが、より元の言語の発音に近い表記にした場合は「ピッツィカート」となり、現在は後者も使われている。
概要
編集特殊な奏法
編集左手のピッツィカート
編集ヴァイオリンの場合、ピッツィカートは弓を持つ右手で弦をはじくことが普通である。
しかし、イタリアのヴァイオリニストであり作曲家のパガニーニは、本来は弦を押さえる左手で弦をはじくという「左手のピッツィカート」を導入した。これにより左手のピッツィカートを伴奏に右手で弓で弾くという高度なヴァイオリンの奏法が誕生した。右手のピッツィカートよりも固めの音色である。素早い速さで連続して左手ピッツィカートをしながら滝のように下降するアルペッジョ・ディ・ピッツィカーティと呼ばれる奏法もある。隣接した指ではじくことにより音高は開放弦に限らず自由に得られるが、連続した素早い上行はほぼ不可能である。楽譜上の左手のピッツィカートの記譜はまず「pizz.」を書いた上で音符の上に+印をつける。
バルトーク・ピッツィカート
編集開放弦のピッツィカート
編集左手で弦を押さえた状態でのピッツィカートは音の持続が非常に短く音量も限られるが、開放弦の状態では比較的長く持続する豊かな響きが得られる。特殊な調弦をする場合は別として一定の音程しか得られないが、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」(第2部冒頭、または第1組曲の最終曲)では効果的に使われている。
撥弦楽器のピッツィカート
編集撥弦楽器は、普段よりヴァイオリン属のピッツィカートに相当する奏法をする楽器である。しかし楽器によっては、ピッツィカート的な音が出る特殊奏法をピッツィカートと呼ぶ。
箏
編集日本の箏において、大正時代以後の新日本音楽ではピッツィカートと呼ばれる奏法を用いることがある(稀に訛って「ピヂカット」と呼ぶ記述もある)。通常では箏は右手の親指・人差し指・中指に義爪をつけて演奏するが、義爪を嵌めていない薬指(稀に小指)や左手で弦を弾くことを指す。これによりやわらかい音色が得られる。
ギター、ハープ、マンドリン
編集関連項目
編集- フィンガー・ピッキング
- ピツィカート・ポルカ(全曲がピッツィカートで演奏される曲、ヨハン・シュトラウス2世とヨーゼフ・シュトラウス合作)
- 新ピツィカート・ポルカ(ヨハン・シュトラウス2世単独作品)
- クロンチョン