パリス
神話
編集誕生
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アレクサンドロス︵後のパリス︶を産むとき、ヘカベーは、自分が燃える木を生み出し、それが燃え広がってイーリオスが焼け落ちるという夢を見た[1]。ヘカベーが夢占い師にこの夢のことを告げると、彼は﹁この子は災厄の種になる﹂として、殺すことを勧めた[1]。そこで、プリアモスは家来に、アレクサンドロスを連行して殺すように命じた。家来は殺すにしのびず、イーデー山に捨てた。捨てられたアレクサンドロスは、熊の母乳により生き延び、羊飼いに拾われ、彼にパリスと命名されて育てられた[1]。
パリスの生存を王宮は知らず、パリス追悼のための競技会をプリアモスが後に開催する。
パリスの審判
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成長したパリスはニュンペーのオイノーネーを妻とし[1]、イーデー山で羊飼いをしていた。後にプリアモスの子であることが明らかとなって、王宮に迎えられた。
ある日イーデー山にいたパリスのもとにヘーラー、アテーナー、アプロディーテーがやってきて、誰が一番美しいか判定させようとした︵パリスの審判︶。
オソ・クッシング﹁パリスの審判﹂(1900s)手にしてい るのは黄金の林檎、又は不和の林檎
パリスはこの世で一番美しい女を妻として与えると約束したアプロディーテーを、最も美しいとした[1]。
ヘレネー誘拐
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アプロディーテーはパリスに、船を作ってスパルタに赴き、ヘレネーをさらって妻にするようにと命じた。パリスは言われたとおりに実行し、オイノーネーを捨ててヘレネーを妻にした。そこでヘレネーの夫メネラーオス、メネラーオスの兄アガメムノーンらは、ヘレネーを取り返すべく、ギリシア中の英雄を募ってイーリオスに攻め寄せた。これらの英雄のほとんどはヘレネーに結婚を申し込んだ男たちだった。ヘレネーの父テュンダレオースは、彼らの中の誰を結婚相手に選んでも、それ以外の男たちの恨みを買う恐れがあるため、あらかじめ﹁誰が選ばれるにしても、その男が困難な状況に陥った場合には、全員がその男を助ける﹂という約束をさせていたのである[2]。
トロイア戦争
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こうしてトロイア戦争の引き金となった
パリスであったが、当人は飄々としている始末で、﹃イーリアス﹄では軍勢の先頭に立ち﹁誰でもいいから俺と勝負しろ﹂と宣言したにも拘らず、喜び勇んで飛び出してきたメネラーオスを見るや怖気づき逃げ出す醜態を晒している。これをヘクトールに責められ、ヘレネーと奪った財宝を懸けてメネラーオスとの一騎打ちに挑んだものの敗北し、寸前のところでアプロディーテーに救われている。
ヘクトールの死後はアポローンの助力のもと、弓でアキレウスを討ち取った[1]が、トロイア陥落の間際、ヘーラクレースの矢を持つピロクテーテースに射られ瀕死の重傷を負う[1]。この傷を治せるのは、昔捨てたオイノーネーだけだったため、パリスはイーデー山に行き、オイノーネーにすがるが拒絶され、イーリオスに戻って死亡した[3]。オイノーネーは後悔し、薬を持ってパリスを追うが、すでに死んでしまった後だったので、自殺して果てたという[3]。
系図
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