マナス
キルギスの叙事詩
内容
編集歴史
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口伝としての﹃マナス﹄の生まれた時代は、7世紀から10世紀に生まれた説や、15世紀から18世紀の出来事を表しているとする説など諸説がある。15世紀の初期に﹃マナス﹄について触れた文献があるが、1885年までは書物になることはなかった。
19世紀後半、帝政ロシアのカザフ系軍人で探検家チョカン・ワリハーノフ︵Чокан Чингисович Валиханов︶とテュルク系研究者ラシリー・ラドロフ︵Vasily Radlov︶が民間歌手の口頭から初めて文字として記録した[1]。
現在、中国新疆ウイグル、キルギス、カザフスタン、アフガニスタンなどのキルギス族居住地域から採集した﹁マナス﹂の各種テキストは150種余ある[1]とされている。
20世紀初期にはカクシャール︵天山山脈︶の谷あいに住むキルギス族のあいだでは、﹁マナス﹂を吟唱するブームが起き、マナスチになることが多くの若者の目標となっていた[2]。
2009年に中国のマナス、2013年にキルギスのマナスがそれぞれユネスコの無形文化遺産に登録された[3][4]。
マナスチ
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﹃マナス﹄はマナスチ︵またはマナスチュ、Манасчы, Manaschi︶と呼ばれる語り手、演唱者によって語られる[1]。
古くは、マナスと共に生活し遠征したエルチ・ウウル︵Irqi―Uul︶、19世紀から20世紀キルギスのテニベク・ジャピ︵Tinibek Japiy︶が代表格である。20世紀にキルギスから新疆ウイグルにまたがる地域には多くのマナスチがおり、有名なマナスチにはサグムバイ・オロズバコフ (Sagimbai Orozbakov、薩恩拝・奥諾孜巴克︶、サヤクバイ・カララエフ ︵Sayakbai Karalaev、薩雅克拝・卡拉拉耶夫︶、シャービ・アズィゾフ (Shaabai Azizov)、カバ・アタベコフ (Kaba Atabekov)、セデネ・モルドコーヴァ (Seidene Moldokova) などがいる。中華人民共和国新疆ウイグル自治区ではジュスパクン・アパイ︵居素朴阿昆・阿依、Jüsüpakhun Apay︶、イブライム・アクンベク︵額布拉音・阿昆別克、Ibirayim Akhunbek︶、アシマト・マムベトジュスプ︵艾什瑪特・瑪木別特居素普、Eshmat Mambetjüsüp︶などがいた。特に、新疆ウイグルではジュスプ・ママイ (居素普・瑪瑪依、Jusup Mamay/Yusup Mamai)が傑出していた。
サグムバイ・オロズバコフによるマナスの写本は2023年に世界の記憶に登録された[5]。
命名
編集日本語訳
編集- 訳:若松寛
- 若松寛 訳『マナス : キルギス英雄叙事詩』(全3冊)平凡社〈東洋文庫〉、2001年。
- 『マナス 少年篇―キルギス英雄叙事詩』(2001年、ISBN 978-4582806946)
- 『マナス 青年篇―キルギス英雄叙事詩』(2003年、ISBN 978-4582807172)
- 『マナス 壮年篇―キルギス英雄叙事詩』(2005年、ISBN 978-4582807400)
脚注
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(一)^ abcdアディル・ジュマトゥルディ, 西脇隆夫﹁︻翻訳︼ 英雄叙事詩﹁マナス﹂の特色﹂﹃名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇﹄第47巻第1号、名古屋学院大学総合研究所、2010年、71-82頁、doi:10.15012/00000707、ISSN 0385-0056、NAID 120005757138。
(二)^ アディル・ジュマトゥルディ、トガン・イサク、西脇隆夫﹁バルバイとイブライム―ジュスプ・ママイの教師たち﹂﹃名古屋学院大学論集 言語・文化篇﹄第22巻第1号、名古屋学院大学総合研究所、2010年10月、105-117頁、doi:10.15012/00000732、ISSN 1344-364X。
(三)^ “Manas” (英語). ich.unesco.org. 2023年5月27日閲覧。
(四)^ “Kyrgyz epic trilogy: Manas, Semetey, Seytek” (英語). ich.unesco.org. 2023年5月27日閲覧。
(五)^ “UNESCO Memory of the World Register”. UNESCO. 2023年5月27日閲覧。
関連研究
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●胡振華, 西脇隆夫﹁キルギス族英雄叙事詩﹁マナス﹂とその研究﹂﹃島根大学法文学部紀要文学科編﹄第7巻第1号、島根大学法文学部、1984年。
●胡振華, 西脇隆夫﹁英雄叙事詩﹁マナス﹂の研究(1)﹂﹃島根大学法文学部紀要文学科編﹄第15巻第1号、島根大学法文学部、1991年、75-108頁。
●ジュプスママイ, 胡振華, 西脇隆夫﹁英雄叙事詩﹁マナス﹂の研究(2)﹂﹃島根大学法文学部紀要文学科編﹄第17巻第1号、島根大学法文学部、1992年、111-143頁。
●西脇隆夫﹁英雄叙事詩﹁マナス﹂の研究(3)﹂﹃島根大学法文学部紀要文学科編﹄第21巻、島根大学法文学部、1994年、113-139頁。
●西脇隆夫﹁キルギス族英雄叙事詩﹁マナス﹂第一部︵一︶﹂﹃名古屋学院大学論集 言語・文化篇﹄第22巻第2号、名古屋学院大学総合研究所、2011年、98-112頁、doi:10.15012/00000729。