溶射
概要
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溶射とは、溶射材と呼ばれる材料を加熱して被施工物︵基材︶に吹き付け、皮膜を形成する表面処理法の一種である。熱源には燃焼炎やプラズマなどが用いられ、材料︵溶射材︶は液滴化されて、高速ガス流などによって処理対象である基材表面に吹き付けられる。液滴や微粒子状になった溶射材は﹁溶射粒子﹂と呼ばれ、この粒子が基材表面で凝固し密着することで皮膜が形成される。溶射粒子が運ぶ熱量は小さいため、基材への入熱は小さく熱的影響は比較的少ないが、基材と溶射粒子の密着強度が溶接などと比べて弱く、通常はアンダーカットやサンドブラストなどの前処理によって基材表面を荒面化しておき、基材と凝固した溶射材との機械的な噛み合わせを十分に確保することで密着強度の向上を図っている。溶射粒子が凝固するまでに基材上に広がり凹部に入り込む時間的余裕を与えるために、基材の事前加熱も行われることがある。塗装などと同様にマスキングにより対象物の特定の部分のみに施工できる。後処理として、自溶合金溶射時のフェージングや封孔処理がある[2]。
近年では、非溶融状態の粒子を高速で吹き付けることで皮膜を形成する技術 (kinetic spray, cold spray) も溶射の一種として研究されている。
特徴
編集分類
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溶射に用いる熱源と溶射材の違いによって、以下のように分類される。
●フレーム溶射
●溶線式フレーム溶射
●粉末式フレーム溶射
●溶棒式フレーム溶射
●高速フレーム溶射︵英‥HVOF︶
燃焼ガスによる超音速の噴流を作り、溶射材料を溶融・加速することで皮膜を形成する[4]。
●爆発溶射︵Dガン︶
●電気式溶射
●アーク溶射
●プラズマ溶射︵減圧プラズマ式溶射・大気プラズマ式溶射・水プラズマ式溶射︶
●線爆溶射
●コールドスプレー
材料を溶融またはガス化させること無く不活性ガスと共に超音速流で固相状態のまま基材に衝突させて皮膜を形成する技術である。超音速で衝突した材料は、臨界速度に達すると粒子自体が塑性変型し皮膜を形成する。その為、他の溶射方法と違い、熱による材料の特性変化、皮膜中の酸化を最小限にすることが可能とされている。 国内では東北大学、信州大学などで研究されていたが、近年、地方公設試、民間企業でも導入されるようになった。
また、用途、皮膜特性、構成材料等による名称もあり、
●防食溶射
●亜鉛溶射
●アルミニウム溶射ː耐熱性・耐酸化性・耐蝕性いずれも亜鉛より大幅に優れる。[5]
●アルミマグネシウム合金溶射ː非常に高い耐食性を持ち塩害環境下でも100年持つ。[6]
●耐熱溶射皮膜
●耐摩耗性皮膜
●自溶合金溶射
●サーメット溶射
●リップル溶射︵溶射による粗面化処理︶[7]
等の名称が用いられている。
歴史
編集脚注・出典
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(一)^ 日本溶射協会編、﹃溶射技術入門﹄、2006年8月1日初版1刷発行、ISBN 4-9903127-0-8
(二)^ 仁平宣弘著、﹃表面処理の本﹄、日刊工業新聞社、2009年8月30日初版1刷発行、ISBN 9784526063138
(三)^ “技術・ソリューション | 株式会社 富士技建”. www.fuji-giken.co.jp. 2021年12月25日閲覧。
(四)^ 高速フレーム溶射は本来フレーム溶射の一種であるが、特徴がかなり異なることから、別扱いになっている。
(五)^ “溶融アルミニウムめっきの東海アルマ工業 技術紹介”. www.t-aluma.com. 2021年12月25日閲覧。
(六)^ “技術・ソリューション | 株式会社 富士技建”. www.fuji-giken.co.jp. 2021年12月25日閲覧。
(七)^ 溶射. 48.2.(2011). 72
(八)^ 加瀬勉 ﹃腐蝕と防蝕法﹄p.269-p.277 大倉書店、1929年。
参考文献
編集- 日本溶射協会編 『溶射技術入門』、2006年。
- 日本溶射協会編 『溶射用語事典』、1994年。
- 日本溶射協会編 『溶射工学便覧』、2010年。