立禅
仏教における立禅
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仏教由来の禅では、動いている﹁行﹂、止まっている﹁住﹂、坐る﹁坐﹂、横になる﹁臥﹂の4つの体勢を﹁四威儀﹂といい、﹁行住坐臥これ禅﹂の観念から坐禅、動禅、横臥禅などそれぞれに禅があり、このうち立っている状態での禅を立禅という[3]。仏教も本質的には立禅を主体とし托鉢に始まり歩行、沈思、四念処と立禅に依って成り立ち、釈迦尊が沙羅双樹の下での瞑想により大悟されたという記録以ってして座禅を特別視しがちであるが、座禅も、立つ、歩く、座る、臥する一形態に過ぎす立禅有りて座禅あり、歩禅ありて臥禅あるとも説かれる[4]。
坐禅との関係では、坐禅を行う際に調整的に行う経行︵きんひん︶の内容として立禅や歩行禅が行われる[5]。
太気拳における立禅
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太気拳では、基本となる修行方法とされる[6]。
王向斉から伝授された意拳の站樁(タントウ)を澤井健一がアレンジして日本に伝えたものである[6]。
人間の内的な力を強力にし、瞬間的な爆発力︵気の力︶を養成することを目的とする[7]。
すなわち、火事場の馬鹿力と呼ばれる潜在能力を、意識的に出せることを最終目標として修練する[8]。
また立禅の修行によって以下のような効果が得られるという。
- 心身をひとつにする[2]。
- 身体の中心感覚を養成する。
- 人間の持つ本能を呼び覚まし動物的な反応や動きが可能になる。
太気拳の立禅のやり方
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立禅は早朝、自然の中で行うのが良いとされる。自然の中で土や木々のエネルギーを取り込み、風を全身で感じ取ることで立禅の効果は高まるとされる[9]。
●心を穏やかに保ち呼吸は自然に。
●中腰になる。高い椅子に腰掛けるように[10]。
●かかとを少し浮かし足親指の付け根に重心をかける。
●両手で大きなボールをかかえるように円をつくる[10]。
●手の指全体がつながっているような感覚。
●頭は天から吊り下げられている感覚[10]。
●脚は地面の中に埋まって根を張っている感覚。
●自らが中心であることを意識する。
●顎は玉を挟むような感覚。
●目は軽く開きやや上の方を観る。
●意識を遠くに放つ。
●耳はわずかな物音にも反応する。
上記の姿勢を20~30分続ける。もっとも、下限も上限もないので続けるか否かは個人の判断による。
終了させる場合は急に止めるのではなく、揺りに移行して体をほぐしてから終了させるのが望ましい。
なお、立禅には馬歩勢、半歩勢などがある。
参考文献
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●中野東禅﹃心が大きくなる坐禅のすすめ―自分をもっと元気に、強くする法﹄ ISBN 4837976654
●筧克彦﹃法理学﹄有斐閣、1911年、480頁。doi:10.11501/817421。ISBN 9784480092977。 NCID BA70405667。OCLC 673064908。全国書誌番号:40044607。2023年1月15日閲覧。
●時津賢児﹃武的発想論 : 自ら成し、自らを成す : 眠れるサムライたちへ贈る真武道理念﹄福昌堂、1999年、71頁。ISBN 9784892247316。 NCID BA43541196。OCLC 674793828。全国書誌番号:20026959。2023年1月15日閲覧。
●﹁楽塾﹂編集委員会、西成プラザ﹁﹁楽塾﹂報告書'10﹂﹃URP GCOE Report Series﹄第15号、大阪市立大学都市研究プラザ、2011年、130頁、ISBN 9784904010105、OCLC 747529130、CRID 1020282257040419713、2023年1月15日閲覧。
●蒲生諒太﹁﹁和﹂の太極拳 : 楊名時の太極拳思想について﹂﹃トランスパーソナル心理学/精神医学﹄第16巻第1号、日本トランスパーソナル心理学/精神医学会編集委員会、2017年、145-160頁、doi:10.32218/transpersonal.16.1_145、ISSN 13454501、NAID 40021248277、OCLC 9661690559、国立国会図書館書誌ID:028344196、2023年1月15日閲覧。
●坂井祐円﹃仏教は心の悩みにどう答えるのか﹄晃洋書房、2022年、39頁。ISBN 9784771036383。 NCID BC1631935X。OCLC 1343180811。全国書誌番号:23720882。2023年1月15日閲覧。
脚注
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(一)^ “立禅と坐禅の違い”. 日本立禅会. 2024年3月24日閲覧。
(二)^ ab蒲生諒太 2017, p. 149.
(三)^ 山川宗玄. “立っていても、動いていても﹁いながら禅﹂——宗教のきほん﹁禅の知恵に学ぶ﹂”. NHK出版. 2024年3月24日閲覧。
(四)^ 筧克彦 1911, p. 480.
(五)^ 恩田彰﹁禅と念仏の心理学的比較考察﹂﹃印度学仏教学研究﹄第23巻第1号、日本印度学仏教学会、1974年、1-7頁。
(六)^ ab蒲生諒太 2017, p. 158.
(七)^ 時津賢児 1999, p. 71.
(八)^ 時津賢児 1999, p. 76.
(九)^ 坂井祐円 2022, p. 39.
(十)^ abc﹁楽塾﹂編集委員会 & 西成プラザ 2011, p. 130.