茵︵しとね︶とは座ったり寝たりするときの敷物の古風な呼称。寝るときの敷物は﹁褥﹂という文字を使い、ベッドパッドなどのことを指す。本項では寝殿造りなどに見られる座具である﹁茵﹂について記す。
畳の中央に見えるのが茵
『旧儀装飾十六式図譜』(1903年)より
通常、畳の上に敷かれた真綿入りの座具であり、座布団の一種といえる。四方の縁︵立は平安時代のことであるという。縁は位階により五位以上は黄絹、六位以下は紺布などとなっていた。
﹃満佐須計装束抄﹄では﹁長さ広さ四方3尺ほどで、赤地の錦の縁の広さ4~5寸ほどのものを四方にさしまわし、中に唐綾または固織物などを縁のうちざまに付けて、そのなかにたてざまに縫い目があり、綿を中に入れた﹂としている。表に東京錦︵とうぎょうき、︵トンキンから渡来した錦の意︶を用いたものは特に東京茵などと呼ばれた。﹃源氏物語﹄柏木に﹁簀子すのこにゐたまへば茵さし出でたり﹂とあるなど、古典に現れる茵はこういった類のものである。