量子ポイントコンタクト
量子ポイントコンタクト(りょうしポイントコンタクト、QPC)とは大きな導体の間に挟まれた狭いくびれで、幅が電子波長(nm から μm )と同程度であるものを言う。 量子ポイントコンタクトはオランダのグループ(Van Wees他)ならびにイギリスのグループ(Wharam他)によって独立に実現された(1988年)。
作製法
編集特性
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量子ポイントコンタクトは伝導に垂直な方向に狭くなっているため、
運動する電子にとっては電気抵抗として働く。
ポイントコンタクトの両端に電圧
をかけたときに流れる電流の大きさは、コンタクトのコンダクタンスを
として
である。
この式は巨視的な抵抗におけるオームの法則に似ているが、サイズが微小で量子力学的な扱いを要するため、本質的に異なるものである。
低温・低電圧の極限では、伝導に寄与する電子のエネルギー・運動量・波数は一定値を取る。その値はそれぞれフェルミエネルギー・フェルミ運動量・フェルミ波数と呼ばれる。
量子ポイントコンタクトの中では横方向の閉じ込めが起きているため、導波管と同様に横方向の運動が量子化される。
そのため、電子波がコンタクトを通過できるのは自身と正の干渉を起こす場合に限られるのだが、
この条件を満たすモードの数
はくびれの横幅から決まる。
一つのモード︵横方向の運動の量子状態︶が運ぶ電流は、フェルミ準位における速度と状態密度の積に比例する。
この二つの量はモードごとに異なっているが、積はモードの種類に依存しない。
結果としてそれぞれのモードからのコンダクタンスへの寄与は等しくなり、スピン一方向あたり
である。モード全体では
.
となる。
上の結果は原理的なものである。コンダクタンスは任意の値を取ることができず、電気素量
とプランク定数
で表されるコンダクタンス量子
の整数倍の値しか許されないのである。
整数
はポイントコンタクトの横幅によって決まる値で、幅を電子波長の二倍で割ったものとおおよそ等しい。
GaAs/AlGaAsヘテロ構造では、ゲート電圧によって幅を制御することができる。幅を広げれば伝導に寄与するモード︵チャネルとも言う︶の数が増加するので、コンダクタンスは階段状に変化する。
そのステップ高さは
で与えられる。
量子ポイントコンタクトに外部磁場をかけると、スピン縮退が解けてコンダクタンスに半整数のステップが出現するようになる。
また関与するモードの数
が減少する。
磁場を大きくすると、
がくびれの幅に依存しなくなる。これは量子ホール効果の理論から導かれる。
量子ポイントコンタクトに関して、
の位置に余分なプラトーが出現するという未解決の問題があり、0.7構造と呼ばれて興味を集めている。
応用
編集関連項目
編集参考文献
編集- H. van Houten and C.W.J. Beenakker (1996). “Quantum point contacts”. Physics Today 49 (7): 22–27 .
- C.W.J.Beenakker and H. van Houten (1991). “Quantum Transport in Semiconductor Nanostructures”. Solid State Physics 44 .
- B.J. van Wees et al. (1988). “Quantized conductance of point contacts in a two-dimensional electron gas”. Physical Review Letters 60: 848–850.
- D.A. Wharam et al. (1988). “One-dimensional transport and the quantization of the ballistic resistance”. J. Phys. C 21: L209.
- J.M. Elzerman et al. (2003). “Few-electron quantum dot circuit with integrated charge read out”. Physical Review B 67: 161308.
- K. J. Thomas et al. (1996). “Possible spin polarization in a one-dimensional electron gas”. Physical Review Letters 77: 135.
- Nicolás Agraït, Alfredo Levy Yeyati, Jan M. van Ruitenbeek (2003). “Quantum properties of atomic-sized conductors”. Physics Reports 377: 81.