金銭記
『金銭記』(きんせんき)は、元の喬吉(喬孟符)による雑劇で、唐の詩人韓飛卿(韓翃)の恋愛を主題とする。
正名は「李太白匹配金銭記」。
概要
編集登場人物
編集
●王府尹 - 長安府尹。
●柳眉児 - 王府尹の娘。18歳。
●梅香 - 柳眉児の侍女。
●張千 - 王府尹の下男。
●韓飛卿 - 詩人。科挙試験を受けたばかりで、まだ結果が出ていない。酒と女に弱い。
●賀知章 - 翰林院の学士で詩人。韓飛卿の友人。
●李太白 - 翰林院の学士で詩人。韓飛卿の友人。
●王正 - 王府尹の子、15歳。
●馬求 - 馬推官の子、14歳。
構成
編集4つの折(幕)から構成され、全編を通じて韓飛卿が歌う。
あらすじ
編集
第1折‥王府尹は天子から拝領した50文の開元通宝金貨を家宝とし、邪気を払うためにと、ひとり娘の柳眉児の身につけさせている。3月3日に九龍池で花を鑑賞する会が行われ、出席した柳眉児を酒宴から抜けだした詩人の韓飛卿が見かける。ふたりは互いに引かれあうが、梅香が帰りを促すので柳眉児は韓飛卿に金貨を渡して去る。韓飛卿を追ってきた賀知章は金貨を見て、おそらく高官の家の女性だろうと推測する。
第2折‥韓飛卿は柳眉児の姿を見かけて王府尹の邸宅に入りこみ、張千に見とがめられる。王府尹は韓飛卿を吊るすが、追いかけてきた賀知章のとりなしで助けられる。王府尹は韓飛卿を家庭教師として雇う。
第3折‥韓飛卿は柳眉児の夢を見るが本物に会うことはできず、彼女を思って家庭教師の仕事にも身がはいらない。王府尹は韓飛卿と酒をくみかわすが、韓飛卿が本の中に隠した金貨を発見して事情を知る。王府尹は柳眉児を叱り、韓飛卿を再び吊るす。そこへ賀知章が現れて、天子が韓飛卿の文章を褒めて入朝を促していると告げに来たので、王府尹は韓飛卿を解放する。
第4折‥賀知章から事情を聞いた李太白が天子と話をしたところ、天子は李太白に韓飛卿と柳眉児との結婚を取りもつように命じた。韓飛卿は状元となり、王府尹は喜んで柳眉児との結婚を許す。賀知章が仲人となるが、韓飛卿は今までの王府尹の仕打ちを恨んでいる。そこへ李太白がやってきて、天子が柳眉児との結婚を命じたこと、韓飛卿を翰林学士の官につけ、金50斤を賜ったことを告げたため、韓飛卿も納得し、大団円のうちに終わる。
日本語訳
編集翻訳ではないが、幸田露伴は雑誌『太陽』第1巻第3号(1895年)で『金銭記』を詳しく紹介している(『露伴叢書』所収[3])。
1943年に吉川幸次郎による翻訳が出版された(全集第14巻所収)。中国古典文学大系第52巻(平凡社、1970年)にも吉川による翻訳を収録している。