骨伝導
骨伝導(こつでんどう)とは、生体内部を伝播する音を聞くこと、またはその方法。声などの生体内部から発生する音を生体表面で計測する方法を指すこともある。
概要
編集発見と研究史
編集骨伝導によって音が伝わることを人々がいつ認識したのかを示すものはない。ただし、硬いものを咀嚼した音が自分にだけ伝わることを人々は体験的に理解していたはずである。
16世紀
編集17世紀
編集18世紀
編集ドイツの作曲家ベートーヴェンは20代後半に難聴を患い、ほとんど何も聞こえないほどの状態になったが、この時彼は指揮棒を歯で噛みピアノに押し付けて骨伝導で音を聞き取ることで、作曲を続けることができたと言われている[2]。
19世紀
編集アメリカの発明家リチャード・ローズは、「オーディフォン(Audiphone)」と呼ばれる補聴器の特許を取得[3]。これは硬いゴム素材で作られたファンで構成されており、オペレータの歯と顎の骨を使用して音の振動を伝導し、聴覚を改善するとされるもの。これは骨伝導における最初の特許といわれている。
20世紀
編集スウェーデンのコクレア社が骨導聴力活用型インプラント(Bone Anchored Hearing Aid : Baha)を開発、実用化に成功した。
骨伝導の利用
編集骨導音は、振動する物体を頭部や頸部︵乳様突起が用いられることが多い︶に接触させることで音の一部が外耳・中耳を介さずに直接内耳に到達する。これを利用し、外耳・中耳に障害のあるタイプの伝音性難聴用の補聴器へ活用されている。 外部の騒音に妨害されずに音を聞き取ることが出来たり、逆に骨伝導で音を聞きながら耳から入ってくる音も聞くことも出来るため、空気伝導を利用した音響機器と異なり耳を開放しておくことが出来る。そのため、耳を開放しておかなければ危険な状況で働く人︵消防士や兵士など︶の通信機器に利用されている。さらに長時間空気伝導を利用した音響機器を使用すると、疲労や聴覚の機能を低下させる可能性があるが、骨伝導ならばその可能性が少ないとされる。
骨伝導電話機
編集日本国内での嚆矢と言える製品は、三洋電機が2002年2月1日にリリースした「骨伝導電話機 聞きにくかった声が聞こえちゃう」(TEL-KU1)[4]。その後、ツーカーが世界初の骨伝導対応携帯電話「TS41」をリリース[5]。
骨伝導ヘッドホン
編集その他の骨伝導機器
編集骨導超音波
編集骨導超音波(こつどうちょうおんぱ)とは、骨伝導で呈示された超音波のこと。通常、ヒトは超音波を知覚できないが、骨伝導で呈示された場合は聴覚が健常な者だけでなく、一部の重度感音性難聴者にも聴覚として知覚される。(ヒトには知覚できないと考えられていた)超音波であるのに明瞭に知覚されるということ、重度感音性難聴者にも比較的容易に知覚されるということから、通常の聴覚とは異なる知覚メカニズムに依っている可能性があると考えられている。産業技術総合研究所らによって知覚メカニズムの解明と新型補聴器への応用が進められている。