黄帝内経
﹃黄帝内経﹄︵こうていだいけい、こうていだいきょう、こうていないけい、黄帝内剄︶は、現存する中国最古の医学書と呼ばれている。古くは﹃鍼経﹄︵しんきょう︶9巻と﹃素問﹄︵そもん︶9巻があったとされているが、これら9巻本は散逸して現存せず、現在は王冰︵おうひょう︶の編纂した﹃素問﹄と﹃霊枢﹄︵れいすう︶が元になったものが伝えられている。黄帝が岐伯︵きはく︶を始め幾人かの学者に日常の疑問を問うたところから﹃素問﹄と呼ばれ、問答形式で記述されている。﹃霊枢﹄は﹃鍼経﹄の別名とされ、﹃素問﹄が基礎理論とすると、﹃霊枢﹄は実践的、技術的に記述されている。
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黄帝内経に記載のある9種類の鍼
2011年、ユネスコが主催する﹁世界の記憶﹂にも登録された。
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概要
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﹃黄帝内経﹄は、前漢代に編纂され、﹃鍼経﹄と﹃素問﹄の合計18巻と伝えられている。その内容は散逸して一旦は失われたが、762年唐の時代に王冰の表した﹃素問﹄と﹃霊枢﹄が伝えられている。現代の研究では﹃鍼経﹄もしくは﹃九霊﹄は﹃霊枢﹄︵9巻︶のことであるとされている。ただしこの9巻本も散逸してしまって残っていない。現在は1155年に南宋の史崧が霊枢を新たに校訂し、24巻81篇として編纂したものが元になっている。
﹃素問﹄が理論的であるのに対し、﹃霊枢﹄はより実践的に記述されている。﹃素問﹄の内容は医学にかぎらず、易学、天候学、星座学、気学、薬学、運命学と広くさまざまな分野に及び、医学書というより科学書と呼ぶべきであるという意見もあり、道教にとっても原典の一つとされる。現在、医学書とされている理由は、紀元前1世紀の図書目録である﹃漢書﹄﹁芸文志﹂に医書として分類されていることによる。
﹃内経﹄の原本は残っておらず、さまざまな写本が存在する。日本では京都の仁和寺に、日本最古の﹃黄帝内経太素﹄の写本が所蔵されている。﹃太素﹄︵たいそ︶は7世紀ころの写本で、唐代の楊上善が、﹃素問﹄と﹃霊枢﹄を合わせて編纂したものである。
﹃黄帝内経﹄18巻のうち、1部にあたる9巻を﹃鍼経﹄と呼び、2部の9巻を﹃素問﹄と呼ぶ。﹃鍼経﹄は経脈、経穴、刺鍼、また営衛、気血など系統的で詳細に説明されている。ここで9という数字には意味があり、古代中国において、数は1から始まり9で終わるとされていた。すなわち1巻には1章から9章が記述され、9章の次は2巻となる。1部は9巻×9章で81章で一まとまりとなり、﹃黄帝内経﹄は2部構成であった。﹃素問﹄は、古くは紀元前202年の前漢代の頃から編纂され始めたと考えられている。
現存する﹃素問﹄は、762年に王冰によって編纂された。王冰はそれ以前の﹃素問﹄を大幅に変更したことがわかっており、王冰の﹃素問﹄からは古い﹃素問﹄を窺い知ることはできないと批判されている。
﹃霊枢﹄は﹃素問﹄より新しい時代のもので、20年から200年ころ編纂された。﹃素問﹄より前に﹃鍼経﹄が編纂され、それが後に﹃霊枢﹄に引き継がれたと考えられている。理論よりも診断・治療・針灸術など臨床医学に重点を置いている。古来は針灸術の経典とされ、﹃針経﹄とも呼ばれた[1]。﹁芸文志﹂には、﹃内経﹄︵18巻︶の他に﹃外経﹄︵37巻︶があったとの記録があるが、﹃外経﹄は現存せず、詳しいことはわかっていない。
霊枢
編集未病
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未病︵みびょう︶という用語は、﹃黄帝内経﹄で初めて使用された。
﹁聖人は既病を治すのではなく、未病を治す﹂
既病︵きびょう︶とは、既に症状が出ている状態。﹃黄帝内経﹄では未病とは病気︵病原体︶は体内にあるのに、症状が体表面に出ていない、しかし治療しなければ早晩発症が必至な状態をさす。
陰陽五行説
編集その他
編集脚注
編集- ^ 小曽戸洋『新版 漢方の歴史――中国・日本の伝統医学――』大修館書店〈あじあブックス076〉(原著2018年10月1日)、56頁。ISBN 9784469233162。