X (2023年創業の企業)
アメリカ合衆国のテクノロジー企業
X Corp.︵エックス・コープ︶は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置くテクノロジー企業である。イーロン・マスクが保有するX Holdings Corp.の完全子会社であり、かつてマスクが買収したTwitter, Inc.と合併した上で設立され、マイクロブログとソーシャル・ネットワーキング・サービスの﹁X﹂︵旧・Twitter︶を運営している[2]。日本の報道等ではX社と呼ばれることもある[3][4]。
種類 | 子会社 |
---|---|
業種 | |
前身 | Twitter, Inc. |
設立 |
2023年3月9日[1] アメリカ合衆国・ネバダ州カーソンシティ |
創業者 | イーロン・マスク |
本社 | アメリカ合衆国・カリフォルニア州サンフランシスコ |
事業地域 | 全世界 |
主要人物 |
リンダ・ヤッカリーノ(CEO) イーロン・マスク(会長兼CTO) |
製品 | X(旧・Twitter) |
親会社 | X Holdings Corp. |
ウェブサイト |
about |
歴史
編集
イーロン・マスクは2022年10月27日にTwitter, Inc.の買収を完了させた[5]。
2022年4月、米国証券取引委員会に提出された資料にて、マスクがデラウェア州に3つの共同企業体を設立し、それらの企業名がX Holdingsであったことが判明した[6]。提出書類によると、そのうちの1つはTwitter, Inc.と合併し、もう1つは合併後の新会社の親会社となる予定となっていた[6]。その後、第3のエンティティが、さまざまな大手銀行から提供された130億米ドルの融資を引き受けてTwitterの買収を支援した[6]。
﹁X﹂という社名は、マスクが1999年に共同設立したオンライン銀行であるX.com︵現‥PayPal︶[7]に由来する[8][9]。マスクは2020年12月に﹁X﹂という名称で新しい持株会社を設立することを新たに呼びかけたTwitterユーザーに返信したが、Xが自身の事業を買収するという考えは否定した[10]。また、マスクはXについて、テンセントが所有するWeChatのようなものにしたいと明言した[11]。
2023年3月9日、マスクはX Holdings Corp.とX Corp.をネバダ州に登録し、同日に人工知能︵AI︶企業であるxAIの設立を計画していることがフィナンシャル・タイムズにより報じられた[1][12]。X Corp.とxAIは別会社だが[13]、2023年11月19日にマスクはX Corp.の投資家がxAIの25%を所有すると発表した[14]。
2023年4月4日、カリフォルニア北部地区連邦地方裁判所に提出された資料にて、﹁TwitterがXに吸収合併され、もはや会社としては存在しない﹂という記述があり、マスクが保有するX Holdings傘下のX Corp.に統合されたことが判明した[2]。
2023年5月12日、マスクがCEOを退き、CTO兼任取締役に就任することを発表した[15]。後任CEOにはかつてNBCユニバーサル広告部門責任者を務めたリンダ・ヤッカリーノが就任した[16]。
2023年5月16日、X Corp.が技術系人材採用プラットフォームのLaskieを買収したことが判明した[17]。X Corp.による企業の買収は設立以来初めてであった[17]。
2023年7月24日、TwitterのWebアプリのロゴが﹁𝕏﹂に変更され[18]、上述したX.comのドメイン︵2017年7月にマスクがPayPalから買い戻し[19]︶もtwitter.comへのリダイレクトに変更された[20]。また、サービス名としてのTwitterも完全に消滅し、Xに切り替えられることになり[21]、社名とサービス名も統一されることになった。これにより、サンフランシスコの本社に付けられていたTwitterの看板も撤去された[22]。
2023年7月28日、TwitterからXへの変更に合わせてサンフランシスコの本社に、夜間に点滅する巨大な看板を市の許可なく設置した[23][24]。しかし、サンフランシスコ市の建築検査局によると、この看板について、白色の光線が明るすぎると、近隣住民から24件の苦情が寄せられたという[24]。これを受けて、この看板は同月31日に撤去された[24]。
2023年8月、ヤッカリーノはマスクの下で事業を運営するための自主性を持ち、会社運営については全てに関与していると述べた[25]。また、Xへの変更の理由についても、﹁Twitterからの解放﹂と述べた上で、﹁もしユーザーがTwitterを使い続ける場合、漸進的な変更になる傾向がある。Xでは何が可能なのかを考える。できないことを少しずつ変えるのではない﹂と述べた[25]。
日本法人
編集Xに変更後も、Twitter, Inc.の日本法人であったTwitter Japan株式会社が引き続き担当している[26]。
詳細は「Twitter (企業)#日本法人」を参照
論争
編集デジタルヘイト対策センターによる調査
編集
2023年6月、非営利団体デジタルヘイト対策センター︵CCDH︶が、Twitter Blue︵現‥X Premium︶加入者によるヘイト投稿の99%に対して、X Corp.が対処しなかったと報告した[29]。また、CCDHは﹁人種差別主義、同性愛嫌悪、ネオナチ、反ユダヤ主義、または陰謀の内容﹂を含むいくつかのツイートについて説明した[30]。これに対し、X Corp.はプラットフォームが多様性と言論の自由を奨励しているとした上で、Twitter上に投稿されたコンテンツの99%以上が健全であると述べた[31]。さらに、CCDHが広告主にXへの投資停止を奨励し、経済的に悪影響を及ぼす可能性がある﹁虚偽、誤解を招く、またはその両方﹂を広めていると言及した[32]。X Corp.は﹁CCDHが恐怖キャンペーンを展開している﹂と主張し、CCDHを提訴した[33]。その後、X Corp.はCCDHと欧州気候基金に対し、CCDHの研究で使用された情報を提供しているとして訴訟を起こすと発表し、CCDHによる全ての主張を否定した[34]。
反ユダヤ主義支持と広告停止
編集脚注
編集出典
編集
(一)^ ab“Twitter Inc. 'No Longer Exists.' Why Elon Musk Chose Nevada For X Holdings.”. Barron's (2023年4月11日). 2023年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月16日閲覧。
(二)^ ab“Twitter社がマスク氏の﹁X社﹂に統合 既に会社として存在せず”. IT media (2023年4月11日). 2023年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月16日閲覧。
(三)^ “X社、本社ビルの﹁Twitter﹂ロゴを剥がそうとするも……警察に阻止され“er”になってしまう”. Real Sound|リアルサウンド テック (2023年7月25日). 2023年7月28日閲覧。
(四)^ “X社 アカウントを﹁強奪﹂か|BIGLOBEニュース”. BIGLOBEニュース. 2023年7月28日閲覧。
(五)^ “マスク氏、ツイッター買収完了 CEOなど解雇=関係者”. ロイター (2022年10月28日). 2023年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月16日閲覧。
(六)^ abc“Twitter Inc. has been merged with X Corp. and “no longer exists,” Elon Musk’s company says in a court filing.”. The Slate Group (2023年4月10日). 2023年4月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月16日閲覧。
(七)^ “テスラ、ユーチューブ、リンクトインなど…ペイパルがなければ誕生しなかったかもしれない有名テック企業”. Business Insider Japan. Mediagene Inc. (2017年1月7日). 2023年1月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月16日閲覧。
(八)^ “Elon Musk just bought x.com, the domain he once owned, from PayPal”. Quartz. G/O Media (2017年7月11日). 2023年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月16日閲覧。
(九)^ “Twitter is now X. Here's what that means.”. CBS News. CBS Interactive Inc. (2023年7月31日). 2023年9月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月22日閲覧。
(十)^ “Elon Musk Forms ‘X Holdings’ After Hints at a Parent for Tesla (TSLA), SpaceX”. Bloomberg (2022年4月22日). 2023年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月16日閲覧。
(11)^ “ツイッターがX社に統合-日本では﹁X JAPAN﹂がトレンド入り”. Bloomberg (2023年4月11日). 2023年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月16日閲覧。
(12)^ “Elon Musk founds new AI company called X.AI”. The Verge (2023年4月15日). 2023年4月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月16日閲覧。
(13)^ “イーロン・マスク氏、オープンAIに対抗-新会社xAIの設立発表”. Bloomberg (2023年7月13日). 2023年7月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月14日閲覧。
(14)^ Elon Musk [@elonmusk] (2023年11月19日). "𝕏 Corp investors will own 25% of xAI". X︵旧Twitter︶より2023年11月19日閲覧。
(15)^ “イーロン・マスク氏、﹁Twitterの新CEOを雇った﹂とツイート”. ITmedia NEWS. ITmedia (2023年5月12日). 2023年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年5月12日閲覧。
(16)^ “ヤッカリーノ新CEO就任 広告収入の回復目指す―ツイッター”. 時事通信. (2023年6月6日) 2023年6月8日閲覧。
(17)^ ab“マスク氏、ツイッター親会社で初の企業買収完了-関係者”. Bloomberg (2023年5月16日). 2023年5月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月8日閲覧。
(18)^ “ブラウザ版Twitter “Xロゴ”に変更完了 青い鳥はリストラに”. ITmedia NEWS. ITmedia (2023年7月24日). 2023年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月25日閲覧。
(19)^ “Elon Musk just bought x.com, the domain he once owned, from PayPal”. Quartz. G/O Media (2017年7月11日). 2023年4月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月8日閲覧。
(20)^ “Twitterの新ロゴ﹁X﹂運用開始--鳥マークが段階的に姿を消す”. CNET Japan. 朝日インタラクティブ (2023年7月23日). 2023年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月25日閲覧。
(21)^ “ツイッター、新ロゴ﹁X﹂決定 青い鳥に別れ、サービス名も”. 時事ドットコム. 時事通信社 (2023年7月24日). 2023年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月25日閲覧。
(22)^ “ツイッター本社看板、撤去開始も中断 米サンフランシスコ”. AFPBB News (2023年7月25日). 2023年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月26日閲覧。
(23)^ “﹁X﹂の看板もう撤去 点滅で住民から苦情 無許可設置で当局調査”. 毎日新聞社 (2023年8月1日). 2023年8月1日閲覧。
(24)^ abc“X本社ビルの輝く﹁X﹂看板、3日で撤去される”. ITmedia NEWS. ITmedia (2023年8月1日). 2023年8月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月1日閲覧。
(25)^ ab“X CEO Linda Yaccarino explains reason for getting rid of Twitter name”. NBC News. CNBC (2023年8月11日). 2023年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月19日閲覧。
(26)^ “2024年度X広告 認定パートナー/認定代理店を発表”. Xブログ. X Corp. (2024年2月19日). 2024年3月17日閲覧。
(27)^ “Xが日本に開発拠点 エンジニア募集スタート”. ITmedia NEWS. ITmedia (2023年12月8日). 2023年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月9日閲覧。
(28)^ “X、日本で技術者の採用開始へ=CEO”. ロイター (2023年12月7日). 2023年12月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月9日閲覧。
(29)^ “X︵旧Twitter︶、反ヘイト団体CCDHを本当に提訴 ﹁データを不正に収集した﹂”. ITmedia NEWS. ITmedia (2023年8月2日). 2023年11月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月10日閲覧。
(30)^ “X sues CCDH for showing hate speech rise on Twitter after Musk deal”. CNBC (2023年8月1日). 2023年8月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月10日閲覧。
(31)^ “Twitter Claims 99% of Its Content Is Healthy, Internet Rolls Eyes”. PCMag. Ziff Davis (2023年7月19日). 2023年8月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月10日閲覧。
(32)^ “Twitter Threatens to Sue Center for Countering Digital Hate Over Research”. The New York Times (2023年7月31日). 2023年8月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月10日閲覧。
(33)^ “Elon Musk's X Corp Is Suing an Anti-Hate-Speech Group”. TIME (2023年8月4日). 2023年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月10日閲覧。
(34)^ “How X Is Suing Its Way Out of Accountability”. WIRED. Condé Nast (2023年8月15日). 2023年8月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月10日閲覧。
(35)^ “米IBM、Xで広告停止 反ユダヤ主義コンテンツの隣に表示”. ロイター (2023年11月17日). 2023年11月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月10日閲覧。
(36)^ “IBM、X︵旧Twitter︶での広告停止 反ユダヤ主義的投稿に広告が表示されたとの報告を受け”. ITmedia NEWS. ITmedia (2023年11月17日). 2023年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月11日閲覧。
(37)^ “マスク氏、反ユダヤ同調が波紋 アップルがX広告停止”. 時事ドットコム. 時事通信社 (2023年11月18日). 2023年12月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月11日閲覧。
(38)^ “X、広告収入最大7500万ドル喪失も 反ユダヤ主義的言動で=NYT”. ロイター (2023年11月27日). 2023年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月10日閲覧。