サービス開始から1年を経ずして400万会員を集め、1人あたりの月間平均利用時間や平均訪問回数がYouTubeよりも多いなど、﹁はまる﹂サービスとして注目されているニワンゴの﹁ニコニコ動画﹂。エイベックスや吉本興業といった大手コンテンツプロバイダーとの提携で注目度がさらに高まっているが、テレビに取って代わることは不可能だと運営元のニワンゴで取締役管理人を務める西村博之氏は言う。これは11月16日に開催されたワイアードビジョンの﹁21世紀の広告ビジネス--Googleの次に登場するもの﹂で語ったものだ。
西村氏によれば、技術面や広告面など、いくつかの点で課題があるという。
まず技術面では、テレビのように同じ映像を同時に多くの人に見せることが難しいと西村氏は話す。﹁総務省の試算によれば、日本のトラフィック総量は720Gbps。ニコニコ動画のトラフィックは1視聴あたり約500kbpsなので、144万人が同時に見ようとしたらダウンしてしまうし、そもそもそれに耐えうるサーバは作れない﹂
すでにニコニコ動画ではピーク時のトラフィック量が60Gbpsに達し、﹁日本のトラフィックの12分の1を使っちゃってる﹂という状況。アクティブユーザー数は1日100万人程度であることを考えると、数百万〜数千万人に同時に同じものを見せるというテレビと同じ機能を果たすことは物理的に不可能と言っていい。
また、信頼性の面での問題もある。﹁インターネットは接続保証がされていないのでそもそも信用できないという大きな問題がある。ものすごく大事な情報を流します、というときに、止めようと思ったらYahoo! JAPANの人や僕︵2ちゃんねる管理人︶は止められますよ。ユーザーが集まっているサイトを運営している人が、ユーザーを転送してそこに大量のトラフィックを流したら途中の回線が止まって誰も見られないという状況は作れると思う。それは僕だけでなく、ほかの敵対している国がやるということもあり得る﹂。これに対し、テレビであれば発信された電波は必ず視聴者に届く。
![ニワンゴで取締役管理人を務める、ひろゆきこと西村博之氏](/story_media/20361579/CNETJ/071121_wiredvison.jpg)
西村氏はコスト面でも、家庭にケーブルを1つ1つ引くインターネットより、電波を送ればいいテレビのほうが有利と指摘した
広告面では、媒体のイメージや制作コストの問題から、動画広告が市場として成り立つ規模に育つのに時間がかかるというのが西村氏の見解だ。
﹁ユーザーが動画をアップロードすると、著作権法に違反しているコンテンツも出てくる。それ自体があまりよろしくないイメージなので、そんなところに広告主は広告を出したくない。ニコニコ動画は暇なユーザーが多いので、ゲームなどの広告であれば費用対効果が高いが、ブランディング広告は出さないだろう﹂
また、動画制作コストが広告効果に見合わないとも指摘。﹁ネットのためだけに動画を制作するような会社はほとんどない。制作費を考えたら検索連動型広告のほうが確実﹂
﹁これらの要素が全部成り立たないと難しい。だから個人的には、1〜2年は動画ビジネスは成り立たないと思う。親会社︵ドワンゴ︶は株価対策のために2008年9月期中の単月黒字化を宣言しているけど、僕はうまくいかないと思ってる。僕はドワンゴの株は持っていないので﹂